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日本の対外経済戦略の基本は,アメリカの戦略への追随。これは戦後のアメリカによる軍事占領以来の顕著な特徴。ソ連・東欧崩壊以後のアメリカの世界戦略は,経済・軍事グローバリゼーション戦略。経済同友会が95年に作成した文書「21世紀初頭の世界の枠組みと日本の役割」は,それへの従属策を見事に具体化したもの。
1つはアジアにおける貿易・投資・為替の自由化を,アメリカの戦略を下請けする形で引き受けていくこと。この下請けは,アジア市場における日本企業の自由を拡大するものとして,自らの積極的な欲望ともなる。具体的なその場はAPEC。
2つは日米安保を対アジア安保として具体化すること。方法の1つはアメリカの軍事活動への後方支援を実現すること(すでにイラク戦争で達成し,さらに前線での軍事活動を行うための憲法「改正」が政治日程にあげられている)。2つはアメリカいいなりの国連をつくるために日本が国連常任理事国となること(こちらは国連がアメリカの思惑どおりとならないことが明らかになった時点で,アメリカも意欲を失って頓挫)。ただし今日アメリカの対アジア戦略は対中国戦略もふくめて外交重視にかわってきており,日本にはいまだこの側面に対応した戦略が存在しないままとなっている。
3つはアメリカの要求に屈すると同時に,東アジア自由化のモデルづくりという位置づけをもたせた日本市場のグローバル化(対外開放)。89~90年の日米構造協議以降,日本経済の「構造改革」がアメリカの求めを強力な推進力として展開される。国際競争力の強い企業だけがこの圧力に生き残り,さらにこれを東アジアの自由化を促進する手段と位置づけ,東アジアでの生産ネットワークづくりをすすめていく。
なお,自由化推進について,当初アメリカはWTOによる一括交渉を重視したが,これが多くの途上国等の反対にあってうまく進まず,以後,二国間のFTA(自由貿易協定)締結を同時に重視するようになる。2000年を前にようやく日本経済界はその重要性と自らの立ち遅れに気付き,シンガポールを皮切りにFTA締結にすすむようになる。自動車部品などの部品貿易を無関税とするなど,日本からは製造業多国籍企業の要求が中心となっている。
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