第1回の授業である。経済関係の3つの科目の関係を解説。現代社会と経済学――女性の仕事と人生について、経済学――市民(大人)としての教養、比較較経済論――インド経済、BRICsの一員として。
なぜインドかの概要を解説。まずBRICsとは、ブラジル、ロシア、インド、中国の総称。2003年に証券会社ゴールドマンサックスが命名した。中長期的に高度成長が期待できる有力新興国で、これは日本など海外の国にとっても投資先・市場として重要。
どれくらいの高成長なのか。名目GDPでのある研究者による予測だが、2005年でBRICs 4.6兆ドル(17%)に対して、G7 27.1兆ドルとなっている。これが2035年 BRICs 62.6兆ドルに対して、G7 62.0兆ドルと逆転する。
国別で見ても、2005年には、1アメリカ、2日本、3ドイツ、4中国、5イギリスの順となるが、2035年には、1アメリカ(38.2兆ドル)、2中国(36.5)、3インド(15.9)、4日本(7.7)、5ブラジル(5.9)6ロシア(4.3)となる。2005年から2035年のGDPの変化は、アメリカ3.1倍,日本1.7倍、ロシア5.7、ブラジル7.4、中国16.4、インド20.5となる。
ただし1人あたりGDP(生活水準)は2035年で日本100として、ロシア55.4、中国39.3、ブラジル37.6、インド16.5にとどまる。とはいえ、これらは日本国内にも良く見ることのできる格差の程度である。
なぜ高成長をつづけているのか。①天然資源が豊富である。ロシア(原油埋蔵量の5.7%、天然ガスの30.5%)、石炭(ロシア15.9、中国11.6、インド8.6、ブラジル1.2)全体で4割程、鉄鉱石(ブラジル20.0、中国17.2、インド8.5、ロシア7.7)など。
②労働力が豊富(2005年)で、なおかつ生産年齢人口が増えていく。人口(1中国13.16億人、2インド11.03億、3アメリカ2.98億、4インドネシア2.22億、5ブラジル1.86億、6パキスタン1.60億、7ロシア1.43億、8バングラデシュ1.42億、ナイジェリア1.32億、日本1.28億)――人口構成が多産多死から少産少死への過渡期に。
③外資の積極的な導入、たとえばインドは91年から自動車・家電を中心に外資開放へ。
④これによって購買力をもった「中産階級」が増加している。ただし国内の所得格差は日本に比べてかなり大きい。
インド豆知識。面積328.7万㎢(日本は37.7万、9倍弱)、11.03億(日本1.28億、9倍弱)、人口密度変わらない。公用語はヒンディー語(他憲法が承認した州の言語17)。宗教(ヒンズー教徒82.7%、イスラム11.2、キリスト2.6、シーク1.9、仏教0.7、ジャイナ0.5)。通貨はルピー(1ルピー=2.5円前後)、貿易相手(輸出・アメリカ、UAE、中国、シンガポール、香港、輸入・中国、アメリカ、スイス、UAE、ベルギー)
インド経済の現状。主役は消費や投資などの国内需要、輸出向けより国内。農業労働者は6割、農業部門の出来(天候)に左右される度合いが高い。とはいえ、2006年度は年率8%程度の見込み。その要因には、①FTA促進で輸出増加、②インフラ整備で投資拡大、③インドのソフトウェア産業へのアウトソーシング(外部委託)増、④規制緩和による外資流入、⑤生産年齢人口(15~64才)増、⑥「中産階級」の増加があげられる。
世界経済の構造変化とインド。G7はカナダを除いて、20世紀前半の植民地大国といえるが、BRICsは植民地・従属国にあったものが主流。ロシアは大国間の戦争からの脱却の過程で社会主義革命を迎えることになった。その意味で、今日のBRICsの台頭は、全体として植民地大国による支配の継続という時代を越えて、植民地・従属国が新たに地球社会の先頭にたつ変化を担うものでもある。
加えてインドは東アジアサミットの一員であり、東アジア共同体形成の一員でもある。中国とインドがこの地域にあり、東アジアは21世紀半ばにかけて最も経済的な活気にあふれた地域となる。あわせて中国は共産党政権であり、インドでも共産党は有力で国民会議派政府と協力関係にある。より広くみればアメリカからの自立をすすめる南米でも「新自由主義」型の資本主義に対する批判は強く、ベネズエラは社会主義の模索を政府はかかげている。BRICsの台頭には、資本主義システムに対する批判精神の成長という側面も含まれている。
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