まずは本を紹介。森清『働くって何だ』(岩波ジュニア新書、2006年)。就職活動についての小手先のノウハウでなく、「働くこと」の根元の意味を、高校生にもわかるように書いてくれたもの。
就職を考える上での数少ないおすすめ本の1つである。
卒業生Fさんの体験を紹介していく。ある宝石会社につとめたFさんだが、国際部に配属という口約束がはたされず、販売員にまわれる。それ自体がイヤではなかったが、労働条件が悪く、不明朗なところもある。
休日出勤をすると給料ではなく、代休で「支払われる」。だが、実際にはシフト制で人数の少ない職場のためにその代休を消化することができない。結局、休日出勤は「ただ働き」となっていく。
これを店長に問い詰めると、店長の待遇もきわめて悪く、しかもこのような手法で休日出勤を「ただ働き」とするのは、会社全体の一律のことではなく、店舗によって異なるルールだという。しかし、店長にはその改善を求める権限がない。実際は会社の方針ということだろう。
Fさんという「『最低3年』という言葉を良く耳にしますが、自分が信頼できない会社に3年もいる必要はないと思います」。世の中には「3年続かない新入社員」の人間を問題にする議論が多いが、労働法制「改革」により職場の無法化が進んでいる現実を視野からはずすわけにはいかない。
就職とした同じ年の12月に、Fさんはある自動車部品メーカーに転職し、ゆとりある勤務時間を英語の学習など、有効に活用する生活を送っている。在学中にイギリス留学をして鍛えた語学力にさらに磨きをかけ、現在の職場でも国際的な活動ができる部署への転属を希望している。
さらに結婚・出産などで退職を余儀なくされる場合も視野に入れ、その英語力を翻訳業に活かしていきたいとの希望も持っている。
学生へのアドバイスとしては、働く者の権利をしっかり学び、高い権利意識をしっかりもつこと、学生同士だけでなく大人社会とのかかわりを必ずもっていくこと。バイトでも、部活でも、大人との接触が、小さな社会勉強になる。
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