テキスト80~82ページを読んでいく。財界構成の長期的変化が、日本の経済社会に及ぼす大きな変化について。
1つは、財界の利害と国民生活との乖離の問題。多国籍企業にとって日本市場は重要ではあっても「部分」にすぎない。また、輸出競争力強化の要請が、労働者・国民への人件費・社会保険負担軽減への強い衝動となる。
思想的には「新自由主義」が広げられるが、これは巨大多国籍企業の「経営の自由」を主張するもので、それ以外のすべての者に対しては「自己責任」が強要される。ただし「新自由主義」の思想に対して、人間らしい生活を対置する思想も存在し、両者の力関係に応じて各国ごとの格差が出ている。
2つは、アジア並低賃金の強要。ただし、アジアにおける資本主義の発展は同時に労働者階級の成長を意味し、いつまでも低賃金がつづくわけではない。
3つは、アメリカ主導下で多国籍企業の共同利害が追求されるという問題。これは主に第2章のテーマとなる。
最近の財界がらみのニュースから福田・小沢密室会談とその後の問題を解説。
①夏の参議院選挙での自民党大敗と、自民党批判によって支持を得た民主党の勝利、それによる「ねじれ国会」などの政治の新局面が背景となる。
②読売グループ会長の渡辺恒夫氏ら、密室会談および「大連立」の「仕掛け人」たちは、主たる動機を憲法「改正」に置いていた。
③それにしても、自民党批判による参院選勝利の立役者となった小沢氏が、なぜ「大連立」推進の立場をとるに至ったか。それを説明する3つの理由の1つに、同氏は、選挙勝利直後にもかかわらず、民主党には「政権担当能力がない」という批判があるとした。
④小沢氏を動かしたのは一体誰の批判であったか。1つはテロ特措法をめぐるアメリカからの批判。そこで小沢氏はあわてて国際治安維持部隊への自衛隊派遣など、自民党とは別ルートでアメリカの戦争政策に協力するとの意思を示した。
⑤2つは日本経団連による批判。密室会談は10月30日と11月3日の2回だが、11月2日に経団連は、自民・民主への最新通信簿原案を作成する。自民党A9つに対して民主党は0であり、逆に民主党には4つのDがつけられた。民主党による行き過ぎた自民党批判への財界からの批判である。
⑥この2つを重くみて小沢氏は「大連立」推進の立場をとったが、それでは衆院選に勝てないとする民主党内部の声につぶされる。この民主党多数派の姿勢には、参院選での国民の声が反映している。
⑦福田自民党に「大連立」への動きを余儀なくさせたのも国民の声、さらに民主党にこれを拒否させたのも国民の声。従来型自民党政治への批判の力はそれほど強く、「大連立」を求める財界の意図さえ、簡単には通らない局面となりつつある。
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