映像『あたらしい憲法のはなし』から、本編32分をまずはながめる。
以下は、その後の講義に活用したパワーポイントの内容。
①イラク戦争の開戦まで
1991年湾岸戦争停戦時に、イラクは「大量破壊兵器」不保持に合意、その後、国連による査察に非協力的に
2001年ブッシュ大統領就任、対イラク強硬姿勢浮上、9.11、イラク国営放送「当然の仕打ち」、1ケ月間アメリカはイラク政府の関与に否定的、10月にはフセイン大統領もアメリカ市民への弔意を
2002年一般教書演説でブッシュ大統領はイラン、イラク、北朝鮮を大量破壊兵器をもつ「テロ国家」と非難、年末にはイラクが4年ぶりに国連の査察を受け入れる
②国連の合意なしの開戦、NATOの亀裂
2003年3月7日、2度目の査察報告が不十分だとして、アメリカは攻撃にかかわる国連決議を求める、フランス等は査察期限の延長を主張、アメリカは決議が無理と判断
3月17日、先制攻撃・空爆、19日より英軍とともに「イラクの自由作戦」全面戦争
フランス、ドイツ、ロシア、中国などが戦争に強く反対、国連アナン事務総長も強い遺憾の意を表明、その後、戦争は今日まで
③大量破壊兵器は存在しなかった
2004年10月、アメリカ調査団が「イラクに大量破壊兵器はない」と最終報告
イギリスではブレア首相が「国民を騙した」として退陣に、デンマークのイエンスビュ国防相も辞任、ポーランドのクワシニエフスキ大統領は「アメリカに騙された」と批判、日本の久間章生防衛相も「大量破壊兵器があると決め付けて、戦争を起こしたのは間違いだった」と発言、オーストラリアのネルソン国防相は、「原油の確保がイラク侵攻の目的だった」と開き直る
④目的は別のところにあったのか?
ブッシュ大統領の退任前インタビュー「私の政権の期間中、最も遺憾だったのが、イラクの大量破壊兵器に関する情報活動の失敗」、大量破壊兵器がないことを知っていれば、イラク侵攻はしなかったかという問いには「興味深い質問だ」とのみ
2002年国防報告「アメリカの戦力は・・・アメリカとその連合国の意思を強制する能力を維持しなければならない。そうした決定的な打倒のなかには、敵国家の体制を変えること、あるいはアメリカの戦略目標が達成されるまで外国領土を占領することがふくまれる」
⑤国連の平和維持秩序に照らして
第1条〔国際連合の目的〕 1、国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとる・・・平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整または解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
第33条 いかなる紛争でも・・・、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
⑥国連軍の行動は最後の手段
第41条 安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ・・・。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中 断並びに外交関係の断絶を含む・・・。
第42条 安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復 に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。
⑦単独行動主義への厳しい批判
開戦前から世界的規模での反戦運動、歴史上初めてのこと、安保理の公開協議も
2003年9月国連総会、「国家は先制して武力行使する権利をもつ」「安保理の合意をまつ義務はなく一国あるいは有志で行動することができる」とするアメリカの姿勢は「58年間、世界に平和と安定をもたらしてきた諸原則(国連憲章)にたいする根本的な挑戦である。このような論理が受け入れられるなら、単独行動主義による無法な武力行使が蔓延しかねない」(アナン事務総長)、たくさんの賛成発言
⑧イラク戦争に対する日本の態度
小泉首相は開戦時に、「アメリカの武力行使を理解し、支持いたします」とただちに表明。
日本は開戦前から、米国に賛同するよう安保理理事国に働きかけていた。
開戦直前の3月19日、川口外相は「甘えている」とアメリカに従わなかったフランスを批判。
自衛隊派遣。2003年12月~09年2月。
⑨戦争への日本国憲法の姿勢
前文「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
第9条「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
⑩憲法「改正」への準備と国民の批判
2005年10月、自民党「新憲法草案」
第9条の2(自衛軍) 3 自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動・・・を行うことができる
2005年10月、民主党「憲法提言」、国連憲章の枠内での武力行使
2007年、安倍内閣が改憲手続き法可決、「新憲法制定の推進」をマニュフェストの第1項にかかげて参議院選挙で大敗
⑪イラク戦争への違憲判決
名古屋高等裁判所は2008年4月17日、航空自衛隊のイラクにおける空輸活動について「自らも武力を行使した」と断じ、憲法違反であるとする司法判断を含む判決を下した(翌月5月3日、同判決は確定)。
防衛省が情報公開法に基づいて開示した「週間空輸実績」と称する内部資料によれば、派遣期間中の輸送人員は延べ28000人であり、うち7割はアメリカ軍兵士であることが2009年10月6日に判明している。
⑫イラク戦争と9条をめぐる現在
大義なき戦争の泥沼化
イラクからの戦闘部隊の撤退をかかげたオバマ大統領が当選
ライス国連大使、オバマ政権になってアメリカの国連政策は「劇的に変わった」(9月18日)
オバマ大統領の国連演説、単独行動主義からの脱却を明言(9月23日)
⑬鳩山連立政権合意文書の外交部分
9、自立した外交で、世界に貢献
世界の国々と協調しながら国際貢献を。・・国連平和維持活動、災害時における国際協力活動・・など▽・・緊密で対等な日米同盟関係を・・より強固な相互の信頼を醸成しつつ、沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む▽中国、韓国をはじめ、アジア・ 太平洋地域の信頼関係と協力体制を確立し、東アジア共同体(仮称)の構築を・・▽国際的な協調体制のもと、北朝鮮による核兵器やミサイルの開発をやめさせ、拉致問題の解決に全力を・・
⑭鳩山連立政権合意の外交と憲法
▽包括的核実験禁止条約の早期発効、兵器用核分裂性物質生産禁止条約の早期実現・・核拡散防止条約再検討会議に おいて主導的な役割を・・核軍縮・核兵器廃絶の先頭に立つ▽テロの温床を除去するために、アフガニスタンの実態を踏まえた支援策を検討し、「貧困 の根絶」と「国家の再建」に主体的役割を果たす。
10、憲法
唯一の被爆国として、日本国憲法の「平和主義」をはじめ「国民主権」「基本的人権の尊重」の三原則の遵守(じゅんしゅ)を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる。
⑮検討を加えるいくつかの視点
自衛隊の海外派兵は否定していない
非同盟でなく日米同盟の「緊密」化を語る
沖縄の負担軽減が、本土の負担増大につながることを否定するものになっていない
東アジア共同体、北朝鮮問題をいうが、必須条件となる侵略と植民地支配への反省が語られない
「平和主義」はいうが、護憲は明示されていない
「密約」問題もふくめて、全体として、アメリカの世界戦略に従属するという大枠は出ていない
⑯ソマリア沖へ海上自衛隊10月5日
「アフリカ・ソマリア沖アデン湾の海賊対策で、上空から警戒監視に当たる海上自衛隊P3C哨戒機2機の部隊が同日、海自那覇航空基地(那覇市)から 出発しました。P3Cの派遣部隊としては2次隊となり、指揮官の浅岡哲史1等海佐以下、海自と陸自隊員約150人で編成。ソマリア隣国のジブチを拠点に到 着後、訓練を行い、10月中旬から任務を開始します」
「沖縄県平和委員会の与儀喜一郎理事は「沖縄の自衛隊は、米軍再編とも連動してF4戦闘機からF15戦闘機に変わり、石垣島や与那国島への自衛隊配備の動きなどアジアでの軍事緊張を高めている。そうした中での海外派兵だけに容認できない」と話しました。
⑰もしも憲法「改正」が発議されたら?
2010年5月には、国民(20才以上の全国民)投票が可能になる
7000組織をこえる全国の「9条の会」はじめ、「平和憲法守れ」の様々な団体の取り組みも
さて、あなたは?
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