テキストに入る前の導入的な授業とする。
1つの柱は、現代世界の大きな変化の枠組み。
あるアンケート調査によると、EU諸国の知識人は、域外の交流あいてとして、アメリカより中国、日本よりインドを重視している。
またASEAN諸国が提唱した東南アジア友好条約(TAC)にも、27ケ国全体での加入を決めている。
その背後には、現代世界におけるBRICSの台頭があり、大国が覇権をもって世界を支配する時代の終わりのはじまりといった問題がある。
さらに、それをより深くとらえるためには、20世紀における、①社会主義の試み、②植民地体制の崩壊と「冷戦」体制、③ソ連崩壊と世界の多極化といった変化をとらえる必要がある。
そうした大きな歴史の変化にそって、EUもEUという形をとってきた。
2つ目の柱は、EUの誕生の歴史。
①46年にはチャーチル(英国首相)による、フランスとドイツのパートナーシップにもとづく「ヨーロッパ合衆国」の提唱がある。
②47年にはアメリカがヨーロッパ復興のためのマーシャルプランを提起するが、ソ連・東欧がこれを拒否。ヨーロッパ地域における「冷戦」体制の形成が進み、結果的に、プランは「西側」の強化をすすめるものとなる。
③ドイツはソ連・イギリス・フランス・アメリカに4分割され、東西の「独立」国家が形成される。
④ナチスの復興をゆるさないとの視角から、ドイツ西部のルール地方の鉄鋼・石炭産業が、西欧の共同管理におかれていく。これがシューマンプランにもとづく、1951年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)。
⑤加盟6ケ国(ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ)は、58年に関税撤廃などを石炭・鉄鋼以外に広げ、欧州経済共同体(EEC)をつくる。同年、欧州原子力共同体(EURATOM)も形成。
⑥68年には、以上3つの組織が統合され、欧州共同体(EC)が結成される。
⑦70年代以後の世界的な高度成長の終焉のもとで、EC諸国は低下する競争力の回復を課題とし、80年代には市場統合をいっそう深めていく。
⑧91年のマーストリヒト条約、93年の同条約発効により、通貨統合を視野にいれ、経済以外にも統合を広げようとする欧州連合(EU)が結成される。
⑨ソ連・東欧崩壊と東西ドイツの統合などの変化の中で、90年代にはEU加盟国が急増する一方、97年のアムステルダム条約で統一的な外交政策をもつことの合意をつくり、99年には共通通貨ユーロがまずは各国間の決済通貨として導入される。
⑩2001年のニース条約で、それまでの全員一致制から「変則多数決制」へと意思決定方式が変更され、2007年のリスボン条約ではEU憲法の制定に話題が進む。
⑪リスボンではEU憲法の前段階として新基本条約がとりむすばれ、2009年には、これにもとづきファンロンパイ大統領(ベルギー)、アシュトン外交代表(イギリス)が決定される。
⑫現在加盟27ケ国、人口約5億人、GDP1600兆円、世界最大の単一市場、共通通貨ユーロ採用は19ケ国。
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