安倍首相が訪米を前に「慰安婦」問題での持論を封印しているとの記事である。
ことは,アメリカ議会の一時的な動きでなく,戦後の歴史と世界構造の変化に深くかかわる。
オール靖国的右派内閣が,いくら力んだところで,内外の世論は,もはやその放言をゆるさない。
それにしても,本当に目先のきかない首相である。
北川・麻生氏など,大臣たちも同じごまかしに入っているようである。
慰安婦問題、沈静化急ぐ首相 持論を封印おわび強調(北海道新聞,3月19日)
従軍慰安婦問題の旧日本軍関与を認めた一九九三年の河野洋平官房長官談話に関し、安倍晋三首相が被害者への「おわび」を強調するなど、発言を変えている。海外の反発を考慮し、「強制性」の解釈についての持論も封印。四月下旬の訪米を控え、日本政府に公式謝罪を求める米下院の決議案の審議を刺激しないよう、沈静化に躍起になっている。(小倉敦)
首相は従来、河野談話が意味する強制性に関し、不本意な応募など「広義」の強制性はあったが、官憲による強制連行という「狭義」の強制性はないと繰り返してきた。しかし、九日の国会答弁で「主張が正しく冷静に伝わってない」と述べて以来、こうした説明を避け続けている。
十一日のNHK番組では「慰安婦の方々は心の傷を負い、大変苦労された。(歴代首相が示した)心からおわびする気持ちはまったく変わらない」と強調した。
首相は昨年十月の国会答弁で、河野談話を踏襲する考えを示した。だが、今月一日に「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった」と発言すると、韓国政府が「強い遺憾」を表明。さらに米下院の決議案について「決議があったからといって(新たに)謝罪することはない」とも述べたため、米国でも「日本は事実をゆがめることによって恥をかいている」(ニューヨーク・タイムズ紙)などの批判が相次いだ。
首相はこうした批判の高まりが、米下院の決議案採択を勢い付けると懸念して発言を転換。自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(中山成彬会長)の慰安婦問題の再調査要請に対しても、政府による再調査は行わない考えを示した。
海外の批判は沈静化しつつあるが、政府が十六日に閣議決定した「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とする答弁書に対しては韓国政府が再び反発しており、これが国際世論をまた刺激する可能性もある。
首相周辺は「少なくとも訪米前の決議案採決だけは阻止しなくてはならない」と危機感を募らせている。
シンガポール首相、慰安婦問題に「当惑を感じる」(朝日新聞,3月20日)
シンガポールのリー・シェンロン首相は19日、東京都内で太田公明党代表と会談し、旧日本軍の慰安婦問題について「最近の日本国内での議論には当惑を感じる」と述べ、「狭義の強制性」を否定した安倍首相の発言などに懸念を表明した。太田氏は「安倍首相も河野談話の継承を明言している」と説明した。
また同日夜には、カナダのマッケイ外相が麻生外相と6者協議などについて電話で話し合った際、慰安婦問題にも言及した。日本外務省によると、マッケイ氏は日本政府が強制性を否定しているとのカナダや米国での報道を念頭に、「種々の報道があるが改めて日本の立場を聞きたい」と質問。麻生氏は「首相が元慰安婦の方々への心からの同情とおわびの気持ちを表し、国会でもそう述べている。河野談話を継承する立場にも何ら変わりはない」と伝えた。
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