高校の教科書から沖縄の「集団自決」を削除する問題で、「教科図書検定調査審議会」に、文科省自身が削除を求める意見書を出していたという。
これでは「審議会」による教科書審査の公平性は保たれない。
「慰安婦」問題にせよ、この問題にせよ、ようするにかつての帝国軍隊の「名誉」回復運動である。
その先には、「戦争のできる国」の軍隊を美化する意図があるのかもしれない。
県政与野党 文科省批判/「集団自決」削除指示 「検定制度ゆがめる」(沖縄タイムス、6月16日)
来年度から使用される高校の教科書検定で文部科学省が、教科書を審査する「教科図書検定調査審議会」に、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述について、日本軍関与の削除を求める意見書を提出していたことが明らかになった十五日、県内では反発や危惧の声が広がった。県内各政党は「文科省が『集団自決』の歴史を変え、審議会の中立性を損ない、検定制度の在り方をゆがめる」と批判、検定意見の撤回を求めた。
十三日に文科省の審議官と面談した自民党県連の伊波常洋政調会長は「事実であれば遺憾。審議官は文科省の関与を否定していた。結論ありきでは、検定そのものの在り方が問われる」と厳しく指摘した。
社民党県連の照屋寛徳委員長は「沖縄戦の実相を歪曲し、犠牲者を冒涜している」と批判。「文科相の責任で検定を撤回すべきだ。撤回がなければ首相は、慰霊の日に来県する資格はない」と訴えた。
公明党県本の糸洲朝則代表は「政府の介入があってはいけない。審議会の中立性を損なう」とし、「省や審議会は沖縄戦の実態を調査し、生の声を真摯に聞くべきだ」と述べた。
社大党の喜納昌春委員長は「自公政権ぐるみで、沖縄戦の歴史を改ざんする行為は明らか」と反発。「今回の問題を機に、先の大戦の歴史や日本軍の行為を問い直す国民論議が必要」とした。
共産党県委の赤嶺政賢委員長は「文科省主導で日本軍の関与削除を行った事実が明白となった。検定を撤回すべきだ」と憤った。その上で「戦前回帰を狙う安倍政権の本質を露呈した」と述べた。
政党「そうぞう」の下地幹郎代表は「沖縄戦に対する認識を変更させようとする重大な問題だ」と強調。「意見書通りでは審議会は同省の下請け機関になる。撤回すべきだ」とした。
民主党県連の喜納昌吉代表は「歴史の歪曲は断じて許せない」と反発、検定の撤回を訴えた。「文科省と安倍政権が一体となった改ざんで、沖縄に対する巧妙な政治的暴力だ」と述べた。
歴史歪曲やめよ 9万人署名 沖縄戦「集団自決」の軍関与削除 教科書検定問題 文科省に要請・集会(しんぶん赤旗、6月16日)
「沖縄戦の歴史歪曲(わいきょく)を許さない! 沖縄県民大会実行委員会」は十五日、二〇〇六年度の高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する日本軍関与の記述が修正・削除された問題で、文部科学省に検定経過の公開などを求めました。検定の修正指示を撤回し、「軍命」が記述された申請時の文章に戻すよう求めた署名、九万二千三百三十八人分を一次分として、文科省と参加した各国会議員に提出しました。
不誠実な対応
その後、国会で開かれた集会には約百八十人が参加。「文科省の不誠実さにますます怒りを持った。きょうの集会は抗議集会に近くなる」との怒りの声で始まり、検定意見撤回への決意を固め合いました。
松田寛沖縄高教組委員長は「私たちは沖縄戦の歴史歪曲を許すわけにはいかない。最後までがんばっていきましょう」と主催者あいさつ。会場いっぱいの参加者から「そうだ!」の掛け声と大きな拍手が起きました。
福元勇司実行委員会事務局長は審議官とのやりとりを報告。審議官は「沖縄戦に関して日本軍の関与、日本軍の責任があったことは明白」だとのべる一方、「これまで軍の隊長関与があったとされていたが、今回関係者の証言があり、隊長命令は断定できない」とし、今回の検定意見の根拠になったとのべたことを紹介しました。
福元さんは「これは(問題の)すり替えだ」と批判。「いま、教科書検定で起こっていることを子どもたちに語りかけていただきたい」と訴えました。
怒りを全国に
実行委員会呼びかけ人の高嶋伸欣琉球大学教授は情勢報告のなかで、過去二回、検定意見が撤回された例を挙げながら、「自信を持って撤回を求めていきたい」と運動を広げていることを紹介。
沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「安倍首相が沖縄に来るという二十三日、大集会を構えて沖縄の怒りを全国に発信すべきだ」と力を込めました。
知り合いのおじから手榴(しゅりゅう)弾を渡され、「自決寸前までいったが、命拾いして、いまここにいる」と切り出した沖縄戦体験者の瑞慶覧(ずけらん)長方さん(75)は「最後は大衆が勝つ信念でたたかう」と決意を語りました。
要請に参加した「沖縄の真実を広める首都圏の会」の呼びかけ人、石山久男さんは「沖縄県民の怒りの根深さを改めて感じた。この怒りを首都圏の多くの方々と共有しながら、撤回を要求していく」とのべました。
集会に日本共産党の赤嶺政賢衆院議員と仁比聡平参院議員が参加。仁比議員は「沖縄戦の真実は日本と沖縄の歴史、太平洋戦争の本質にかかわる重大な事実。厳然たる事実をゆがめることは許されない」と連帯の意を表明。民主、社民両党の国会議員も参加しました。
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