すでに県議会では規制強化を求める声が出ていたようだが、県側は指導は徹底されているとこれを拒否してきたらしい。
だが、結果的に、ゼネコンに天下った当人は「指導」を知らないとさえ述べており、県人事課も指導の不徹底を認めるほかなくなったというおそまつである。
実際、それらの企業は県の事業を受注している。となれば、当然、両者の「癒着」が疑わしい。
指導基準の不備認める 幹部天下り問題で兵庫県(神戸新聞、8月24日)
兵庫県幹部の天下り問題で、県人事課は二十三日会見し、退職から二年間、ゼネコンへの再就職の自粛などを口頭で指導していたが、「ゼネコンかどうかの分類も定かでなく、きっちりとルール化できていなかった。(指導も)各部局に委ね、徹底できておらず、反省している」と指導が不十分なことを認めた。
指導に反し、元幹部職員三人が退職から約一カ月後にゼネコンに天下っていたことについて、「二〇〇六年春の退職者がゼネコンらしい会社に在籍しているようだが、本人から聞いていない。若干数(指導違反の)疑いがあるが、正確に把握できていない」と述べた。
来春からの退職者について県は、再就職先を正確に把握し、業種などの分類を公表する方針を発表。しかし、〇五年以前の退職者が指導に反してゼネコンに天下りしたかどうかは、「権限がない」などとして本人への確認に難色を示した。
また県は現在つかんでいる情報を元に、五年間に退職した知事部局の課長級以上計三百五十四人の天下り先の業種を公表。外郭団体が百三十九人(39・3%)で最も多く、民間の八十二人(23・2%)が続いた。以下は公益法人四十人(11・3%)▽県の嘱託三十一人(8・8%)▽業界団体二十四人(6・8%)▽学校・園二十人(5・6%)▽医療法人十八人(5・1%)だった。
指導反しゼネコンに天下り 兵庫県庁元幹部(神戸新聞、8月23日)
兵庫県の元幹部職員三人が、県の指導に反して退職後約一カ月でゼネコンに天下りしていたことが二十三日、分かった。ゼネコンへの再就職について県は、公共事業の透明性を図るため退職から二年間は自粛するよう口頭で指導していたが、明文化された規定はなく新たな対策を求める声が強まりそうだ。
県によると、二〇〇三年から〇七年までの五年間で、教育委員会や病院局などをのぞく知事部局の課長級以上で退職した幹部職員のうちゼネコンに再就職したのは四人。県民局の県土整備部長と、県土整備部出身の工事検査室長二人の計三人は、いずれも退職から約一カ月しか経過していないうちに天下った。
ゼネコン各社によると、技術的指導をする業務という。もう一人は、部長級の参事で、退職後二年を過ぎて再就職していた。
三人が天下ったゼネコンは準大手や中堅で、県の事業を受注している。うち一人は「先輩の紹介で再就職した。県からは指導を受けたことがなく、そのような慣例があることは知らなかった」と話している。
公務で知り得た情報を天下り企業の営業に生かすことがないよう、県は、ゼネコンへの再就職には二年間の自粛期間を設けるよう指導している。指導は慣例でしかなく、県議会などから規則化を求める声もあったが、県は指導が徹底されているとして、慎重な姿勢だった。しかし今回、順守されてなかったことが明らかになり、県は対応策を求められそうだ。
県人事課は「民間企業に再就職する場合は、県が関与してないので把握できなかった。退職する職員には説明会などさまざまな機会を通じ口頭で指導している。今後、より徹底したい」としている。
再就職先20道府県が公開 知事会調査(神戸新聞、8月23日)
退職した職員の天下り先を把握し公開している都道府県は、全国知事会が実施した調査で二十道府県に上る。実態がブラックボックスのままでは、民間企業に天下った職員が公共事業に関与しているとの疑惑や、公務員だけが定年後も楽をして多額の報酬をもらっているのではないかという住民の不信感が払拭(ふっしょく)できないからだ。透明化が時代の流れとなっている。
国は退職前の五年間に所属した省庁が、監督権や契約関係を持つ企業への再就職を二年間制限している。一方で地方公務員は自治体任せのため、法改正で一定の制限を加えようとする議論が起こっている。
昨年、福島、和歌山、宮崎の三県知事が相次いで官製談合で逮捕された事件を受け、全国知事会が職員の再就職の実態調査を初めて実施した。今年七月にまとめた結果では、課長級以上の職員で、退職前の五年間に担当していた職務と密接にかかわる企業へ二年間、再就職を制限していると回答したのは、神奈川、新潟など十四道府県。
「制限している」と回答した兵庫県は、ゼネコンへの再就職は、慣例で退職から二年間自粛することなどを口頭で指導。しかし規則などはなく、企業に再就職する場合も県に届けなくてよい。
また、「実態を把握している」「情報を公開している」と答えたのは、ともに二十道府県ある。関西では京都、大阪、和歌山、奈良が入る。兵庫は知事会の調査時点では、実態把握してなかったが、その後調査した。
二〇〇二年に要領を定めた長野県は、ホームページで再就職状況を公表。職員名、再就職先企業・団体名、県の紹介の有無を明示している。担当者は「職員OBがいるからといって有利な取り計らいはないという姿勢を示した。公表は時代の流れ。民間企業への再就職は年三、四人程度だったが、入札改革で公共事業の多くは一般競争入札になり、職員を採用したいという企業の要請は減ったようだ」としている。
どの自治体も、憲法で定められた職業選択の自由の観点から全面禁止はできないとの姿勢だ。だが、民間企業に就職するには企業名や業務内容を届け出るほか、出身自治体への営業活動を自粛する誓約書を提出させ、不正な働きかけがないよう配慮している。
兵庫県人事課は「県民に誤解を抱かれないような再就職の方法や公共工事の透明性を高めるため常に議論している。国の動きも参考にしながら検討を続けたい」としている。
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