1)テキスト第1章「産業構造」を読む。アメリカの産業構造の大局的な変化としては,ペティ・クラークの法則にしたがう第1次産業から第3次産業への重点移行がある。それは具体的な景気循環の中で起こること。50~60年代の繁栄,70~80年代の苦境,90年代大型好景気などの変転の中で。
2)第1節「1970年代までの産業構造」。19世紀後半には農業国から工業国への変貌があり,20世紀前半には石油・化学・自動車・電気の新興産業による,①大量生産,②寡占体制,③労使関係,政府による④ケインズ主義という経済の特徴がつくられる。国際競争力も高まり,1919年には債務国から債権国へ移行する。20世紀後半「黄金の60年代」には新興産業が中心となる高度成長が実現する。しかし,60年代末には生産過剰が露顕し,70年代のスタグフレーションの中で国際競争力の低下も明白となる。
3)第2節「『再生』への模索と再編」。製造業の競争力低下の主な原因は,①下方硬直的な賃金制度,②コングロマリット化と多国籍化。ただし②は個別企業の競争力を高める効果をもち,企業収益力は70~80年代を通じて低くない。この段階で,多国籍企業と「国民経済」との利害の乖離が生じてきたということか。80年代には競争力回復のために,①リストラクチャリング,②リエンジニアリング,③不安定雇用の創出がすすむ。あわせて産業構造には製造業に対する,金融・保険・不動産・サービス業の比重拡大がつづいていく。
4)第3節「90年代の大型好景気」。91年3月から01年2月までの,戦後最長の好景気については「ニューエコノミー論」「バブル論」がある。80年代の「個人消費+政府支出」から90年代の「個人消費+設備投資」へと景気拡大要因が変化する。ただし90年代前半には製造・運輸・卸売の設備投資に対して,個人消費の伸びは緩慢であり,個人消費の伸びには90年代後半のバブルが必要だった。ドル高・アジア通貨危機などによる海外資金の流入を背景にバブルが亢進し,株式・投資信託・年金などの家計金融資産が膨張する。他方ビジネスサービスのIT産業は,資金獲得に向け株価上昇期待を印象づけるための積極的な設備投資を展開。これが製造業の経営効率改善にも役立っていく。総じて「大型好景気」は供給サイドの改善のみによるのでなく,それを含みながらも需要サイドの改善に支えられたといえる。
5)戦後の「冷戦態勢」経済の特徴,9.11以後の「戦争経済」と軍産複合体との関連など軍需産業の比重やそれと政治の関わりについては,補足が必要。9.11は01年の「大型好景気」の終結に連続するが,そのような勢力の台頭が「好景気」の中でどのように準備されてきたのか。増大する不安定雇用がバブルに支えられたとすれば,バブル縮小後の労資関係は安定性を失いはじめているか。SEIUの成長などアメリカ労働運動の新しい変化とのかかわりはどうか。ユーロ高やアジア共通通貨への動きがバブルを縮小させる要因ともなる。日本の「マネー敗戦」はバブルを支える要因。他方,国内バブルにほど遠い日本の経済にとって,財界による需要サイドの改善はもっぱら東アジア市場に向けられているといえようか。問題意識を今後に向けて広げておく。
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