1)出席者8名。しばし就職問題論議に花が咲き,その後「天皇問題」から議論に入る。徳川幕藩体制から明治権力への権力移行が,なぜ「天皇」の担ぎだしを必要としたかについて。「江戸~明治にかけのて天皇制の形成」(小谷さん)が,①江戸期天皇の財産は12万石と中規模大名なみであった,②しかし天照大神の子孫が歴代日本の支配者であるとの思想は支配層に根深く,③「お伊勢まいり」のように天皇信仰は庶民の中にも深い影響力をもった,④尊皇攘夷運動の支柱となった水戸学には朝廷権威によって幕府の専制を抑制するとの思想があった,⑤江戸後期には天皇(公家)の伝統的権威と幕府(武家)を結び付けることで幕府権力の再興をはかる「公武合体」論もあった,などの論点を紹介する。死後,家康が祀られた日光東照宮も「神社」だったが,いまだ元日に「初詣」にいくなどの庶民慣習もあり,日本の歴史におけるこの思想(宗教)の根深さにあらためて注目させられる。「天皇のための戦争」に動員されていく明治期以降の国民の心性の理解に欠かせぬ論点なのだろう。
2)テキスト第4章「戦時動員と日本軍『慰安婦』」を読んでいく。関連して「女子挺身勤労令」(田中丸さん),「現代におけるアフリカ女性へのレイプと日本の人身売買について」(渡辺さん),「満州移民化政策」(原田さん),「内鮮結婚と創氏改名」(辻中さん)等の報告もある。南京に「安全区」をつくったミニー・ヴォートリン,日本政府による朝鮮銀行券の発行,今日の中国残留孤児問題につらなる満州への移民(棄民)政策(それは移住を強制された朝鮮人にも),戦後破壊された「朝鮮神社」,女性の出産能力自体が軍国主義の「道具」とされた多産政策,ズボンを下着としてのみ着用した朝鮮女性に対するモンペ強制の文化的意味,婦選獲得運動や廃娼運動が戦争推進運動に巻き込まれていく経過,沖縄の「集団自決」を強要した「教育」の力,戦争に強力した日本基督教団や仏教教団の変質などが話題になる。とりわけ最後の宗教問題は「国家神道」への「教義」そのもののすり寄り改編を含むものでもあった。
3)次回は第5・6章へ。
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