1)戦後のアメリカ経済について大雑把にふりかえる。戦後の対外経済戦略は,①自由貿易の推進,②国際決済通貨としてのドルの強制,軍事戦略としては①アメリカの繁栄に都合の良い国際共同体の建設,②ソ連封じ込めとなる。大戦期に進んだ経済の軍事化は,戦後の「産軍複合体」形成と戦争政策の推進の強い衝動源となる。
2)しかし,戦後の圧倒的な経済的軍事的優位が,①日本や西ドイツの経済成長,②植民地体制の崩壊,東アジアやEUの軍事的自立化の方向などに脅かされてくる。その結果,80年代以降は国民への「豊かさの分配」が頭打ちとなる。労働市場の変化や福祉の削減がすすめられ,91年からの大型景気においても,労働条件は悪化をつづける。これを「証券(株主)資本主義」の形成が結果的に補い,バブルの進行のもとで年金基金や投資信託をつうじた金融的利益が個人消費を支えた。大型景気終了後,経済状態悪化への不満が「戦争」によってそむけられたが,06年秋の中間選挙にそれがどういう形をとって現れるのか。そこが当面の注目点の1つ。
3)第4章「アメリカ型金融システムと証券資本主義」を学ぶ。まずアメリカ型金融システムでは,①金融仲介機関より金融市場の果たす役割が伝統的に大きい,いわゆる直接金融の役割が大きく,その結果,メインバンクシステムは日本のような特定の相対関係という姿をとっては発展しなかった。具体的には家計から企業への資金移動が金融の主流だが,その家計部門においても直接間接を意味する株式所有の増加,すなわち「非仲介」化がすすんでいる。他方,家計の可処分所得に対する債務の超過,ブッシュ政権における政府の最大の財政赤字という新たな問題も生まれている。前者は労働者の「貧困」を一挙に目に見える形にあらわす可能性をもつ。
4)近年の金融革新は,技術的にはIT革命,政策的には規制緩和が推進力。99年の金融近代化法により業際規制の撤廃が行われるが,同様のことは日本でも進んでいる。96年末からの「金融ビッグバン」は,①保険・銀行・証券の業際規制の撤廃,②この分野への外資導入を柱とした。これはユニバーサルバンク化をすすめるアメリカの金融関連資本受け入れの土壌づくりの意味をもった。この新たな競争条件の形成(竹中平蔵氏風にいえば「山の国」を競争によって鍛える規制緩和)に対抗するべく,日本の都市銀行は吸収合併をすすめ,90年11行から06年3グループへと減少していく。大型景気終了後,ブッシュ政権は新たな景気刺激策(企業への資金供給策)として,01年の6%から03年の1%へと,急速なフェデラル・ファンド・レートの低下をすすめる。ただし,これは04年から再び上昇の過程に入っている。次回は第5章へ。
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