1)出席者9名。まずは「『風俗』に関する報告2--買春する男たち」(渡辺さん)。いのうえせつこ『買春する男たち』から,95年末のソープランドの年間総売上が約3258億円であり,平均3.5万円の費用とすれば,全男性の4人に1人が利用した勘定になることが紹介される。実際には繰り返し通う者が相当数にのぼるあろうことから,利用者比率はもっと下がると思われる。しかし,その後10年をへて,より安価な営業も増えており,特に若い世代の一部に「買春の日常生活化」の傾向もあり,買春者の数字の変化については予想がつかない。
2)なぜこのように大規模な買春が継続するかについては,男性の本能という議論への批判の上で,①かつての女性蔑視(道具視)への反省の浅さ(社会も法律も),②資本にとっての儲け口としての重要性などが指摘される。「男なら当然,いかないのがビビリ」といった議論は多くが自分の行動を無反省に正当化するためのもの。買春の理由として「女郎屋へ行くのはトイレにいく感覚」というのが典型だが,「寂しさを紛らわすため」とする場合にも,結局,女性の肉体(肌のぬくもりといっても)は自己を満足させる手段としかとらえられない。道具である。そのような意識が社会に広く存在することの根拠に対する分析として,さらに資本の営業戦略(広告,風俗産業に対するイメージづくり等)の角度から見ることも必要か。
3)テキスト第6章3節「労働運動・市民運動と女性」,6節「家族生活の変化」,8節「日本の若者文化とマイナリティ運動」,9節「韓国の大衆文化と反体制文化」を読む。日本における女性の社会進出に応じた主婦論争のテーマの変遷,事実婚の拡大やシングル化の傾向,日本の民法における子どもによる親の扶養義務,富国強兵による性と生殖の一体化強制からの性の解放の傾向,体制(大人社会)への抵抗と結びついた運動圏文化の希薄化などが話題となる。さらに第7章「女性運動と『女性国際戦犯法廷』」」から1節「女性運動の発展」を読む。2001年の女性省発足に象徴される,韓国での急速な女性運動の発展と法制定や改正,横山ノックや京大の矢野氏等による日本のセクハラ(性暴力)事件,軍事独裁政権を打ち倒した韓国市民運動の勢いなどが話題となる。
4)「妓生買春」「韓国の風俗産業」「性売春特別法」(田中丸さん)の報告がある。キーセン観光については71年100から72年219.8への日本人観光客の急増がある。その背後には「ナイトライフを楽しみましょう」といったうたい文句での買春ツアーによる組織的動員があった。韓国の観光振興政策と日韓両国の観光会社の利益第一主義によるもの。この手のパンフレットをつくり,観光客の動員に功績があったとして,日本の旅行会社8社(JTB,東武トラベル,日本旅行,東急観光,日本通運,名鉄観光,近畿日本ツーリスト,東邦トラベル)が表彰されたという。「性売春特別法」は04年9月施行で,①売春業者の処罰強化,②性交類似類似行為への処罰,③被害女性の人権保護が強調されるものとなっている。その一方で,韓国の企業による中国やフィリピン等海外へ出ての買春ツアーも行われ,また日本人観光客向けのアガシ(お嬢さん)予約サイトも継続している。
5)神戸新聞の記事(6月13日)から「世界で進む米軍再編」(小谷さん)の紹介がある。再編に必要な費用負担を日本は2兆円,韓国は6300億円,ドイツはゼロと対比したものである。在日米軍基地にかかわっては,①世界的規模での日米の軍事一体化,②憲法「改正」の突破口,③広範な反対運動の発展などが話題にになる。最後にビデオ『軍需工場は,今』を見る。三菱重工をはじめとした日本の軍需企業の実態,その中で平和企業としていきることを求める労働者への差別と闘い,平和を求める運動と自衛隊を国民に親しませるためのアピールの競争,憲法「改正」の動きとのかかわりなどが流される。「戦争がなくてもやっていける企業づくりをしようという労働者の声はもっとも」という感想が出る。
6)次回は,第7章2・3節を読み,『ガイドブック 葵から菊へ-靖国神社編』を学ぶ。
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