1)テキスト96~101ページを読む。公共事業に関する項目。「山の国」主導の経済政策の転換は,大型公共事業の推進政策の転換不可欠とする。竹中氏は公共事業の異常拡大の要因を,①景気対策としての期待と族議員の存在,②公共事業を制御する仕組みの不在,③アメリカからの公共投資圧力とまとめていく。このまとめは的外れではない。89~90年の日米構造協議や94年の日米合意による10年で630兆円の公共事業支出については,①アメリカの建設企業が日本参入を狙っていたとの見方もあるが,②おそらくより真実に近いのは日本経済たたきの目的。
2)91年に至るバブル経済期に日本大企業が行ったアメリカ進出と土地や不動産の買い占めは,アメリカ国民の内部に日本経済を「脅威」ととらえる見方を醸成した。同じ91年にソ連が崩壊し,アメリカにとっての脅威はソ連の軍事的脅威から日本の経済的脅威へと移行する。この時期にはCIAによる日本の産業競争力の分析も行われている。アメリカの対日戦略は「構造改革」の強制とともに,公共事業費の飛躍的拡大におかれる。前者が日本市場へのアメリカ企業の進出を準備し,後者が国家財政の破綻を導く。両者は日本経済の「脅威」を解体する方針として共通性をもつ。
3)その中で,竹中氏は「海の国」主導への経済政策の展開を求めて,公共事業の改革を提起する。現実にも93年の51兆円をピークとした公共事業費は,今日40兆円を割る水準にまで抑制されてきた(とはいえそれでもその規模は世界最大でアメリカの3倍に近いレベルにある)。公共事業政策の転換は,①地方から都市への公共事業の集中と,②漸減する公共事業費を少数の大手ゼネコンに集中するための中小建設業者排除を主な特徴とする。この政策によって利益を保障された大手ゼネコンは,「構造改革」に抵抗せずに支持していく。これが竹中氏のいう「海の国」主導の政策への「山の国」の糾合である。それは無駄や環境破壊につながる事業をやめるものではなく,東京・名古屋・大阪での空港・港湾・環状道路など,依然として「不要」なものへの投資をつづけるものとなっている。小泉内閣の「都市再生本部」はこれを推進する中心となった。
4)学生による授業評価アンケートを実施する。
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