最近のニュースの紹介から。ベトナムで行われるAPECに向け,アメリカが加盟21ケ国によるFTA実現の構想を提示した。東アジアサミットへの牽制だが,これには日本政府も「実現性は将来的にも乏しい」との評価。アメリカの思うように東アジアを誘導することへは様々な障害があるようである。
中国・アフリカサミットが11月3~5日に北京で行われた。アフリカ53ケ国のうち48ケ国が参加。訪問の全人員は3500人に達している。北京宣言は中国とアフリカ各国との内政不干渉を原則とした政治交流の活発化,経済交流の活発化をうたった。中国は資源と市場を獲得,アフリカ側は援助と投資による雇用創出を得るものとなる。
フィナンシャル・タイムズにはこれを新植民地主義と見る評論が掲載されたが,世銀のポール・ウォルフォウィッツ総裁がこれを否定。過去25年間に3億の貧困層を救い出した中国の経験は,6億の貧困層をかかえるアフリカにも貴重な教訓となるとした。
さらに大きく現代世界の構造変化を考えていく。20世紀初頭には少数の資本主義帝国が世界を植民地として分割していたが,その後,3つの大きな事件が起こる。1つは1917年のロシア革命,2つは戦後の植民地崩壊,3つは90年前後のソ連・東欧の崩壊。これをへたうえで,現代世界は,①発達した資本主義,②社会主義をめざす国,③アジア,アフリカ,ラテンアメリカ,④旧ソ連・東欧の4つにわけられる。
①発達した資本主義は約9億人。ソ連崩壊をきっかけに「西側の団結」は過去のものとなった。植民地体制をゆるさないことが常識となり,アメリカの覇権主義は強いが例外的なものとなる。利潤第一主義についてはヨーロッパでこれにルールを与える動きが強まっている。全体としてアメリカ型とヨーロッパ型の2つの類型の距離が開いている。日本はアメリカ型に追随している。
②社会主義をめざす国は約14億人。ソ連・東欧は統制経済で西側には閉ざされた国だったが,中国・ベトナムは市場経済の活用をすすめ,さらに西側とも積極的な交流をしている。キューバは市場の活用を行わないが,南米の自主独立諸国との交流を深めている。IMFが発表する購買力平価でのGDP比較によれば,05年の世界にしめる比率はアメリカ20%,中国15.4%,日本6.4%,インド5.9%の順。経済的地位も高まっている。
③アジア,アフリカ,ラテンアメリカは約35億人。経済建設では資本主義で成功した事例は極めて少ない。新しい国づくりの方向を模索している。118ケ国による非同盟諸国運動をつくり,民主的で戦争のない世界への取り組みを強めている。インドの事例。西ベンガル,ケララ,トリプラの3つの州がインド共産党(マルクス主義)を中心とした左翼政権。その人口合計は1億2190万人。中央政府は国民会議派政権だが,インド共産党(マルクス主義)は閣外協力の与党となっている。南米の事例。98年選挙,99年1月発足でベネズエラにチャベス政権ができる。00年にはチリで,03年にブラジルとアルゼンチンで,05年にはウルグアイ,ボリビアで,それぞれアメリカに従属しない独立派の政権が選挙でつくられている。南米総人口3億4000万に対して,これら各国の合計は2億6000万。ベネズエラではソ連型社会を否定したうえで,新しい社会主義が論じられている。
④旧ソ連・東欧の国は約4億人。東欧はEUやNATOに入り込む動きが強いが,他方には「上海協力機構(SCO)」(中国・ロシア,カザフスタン,キルギス,タジキスタン,ウズベキスタンなど)という地域共同体づくりもある。これにはモンゴル,インド,パキスタン,イランなどがオブザーバーとして参加。
以上,現代世界の各種の出来事は,これら4つのグループのどこに属する,どの方向への動きかと考えると意義が理解しやすい。
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