前回の復習から。①親にも定年があり老後がある、長く依存するわけにはいかない、②パートナーの年収は「豊かな専業主婦」が送れるものにはならない可能性が高い、未婚・離婚の可能性もある、③できるだけ自分の力で生活できる力を身につけることが無難。
とはいえ、仕事をするにあたり女性には特有のハードルがいくつかある。①前回もふれた性差別の問題の他に、②男性が長時間労働によって企業社会に取り込まれていくという問題、③男性総合職には少なからず(事実上)本人同意なしの転勤がある。これが女性の生活を大きく左右する。
男性長時間労働は、家事を女性に転嫁する。フルタイマーの年平均労働時間は日本2200時間台、アメリカ2000前後、ドイツ・フランス1500台、オランダ1300台などとなる。この格差が家族が時間をともにするゆとりや、働くものが教養を深めるためのゆとりを失わせる。子育ては家事を飛躍的に拡大するが、それが多く日本では女性の肩にかぶさり、これが女性のはたらく条件を制約する。パートナーの転勤によって望まない離職を余儀なくされる女性も多い。
結局、男性は多くが定年までを仕事中心に生きるが、女性は仕事・家庭・地域など多様な現場に生きることになる。必要とされる能力も異なるものになり、また女性の方が人生を設計する高い能力がもとめられ、実際に人生の分岐にあって選択をもとめられることも多い。
そのような判断を的確に行いうる人間に育つためには、多くの先輩女性の体験を知り、学ぶことが必要。肉親、バイト先、卒業生、先輩学生などと話をする、新聞・テレビなどから女性の生き方を学ぶなどの努力が必要。
キャリアサポートセンター主催の企画や、科目「キャリアを考える」などでも先輩たちの話をじっくり聞く機会はある。今年の前期には、東京火災に就職し、退職し、今日料理の専門学校でフランス語の通訳をしながら、フランス語や文化を学んでいるという卒業生も。聞いてみれば人生は変化にとんでいる。
自分の生き方を考えることを継続するには、将来を考えるためのノートをもつことが有効。自分の将来設計を繰り返し行い、またそれにかかわる情報を書き込み、さらに設計を確かなものとするために必要な行動を明らかにしていく。自分の意思・意欲を継続させるためには、ノート(日記)のような「物」を手にすることが大切。
「就職がうまくいく」ということの基準には、人生の中で仕事をどのように位置づけるかという個人差が反映する。誰にとっても同じことではない。就職を考えるということは、実は人生の見通しを考えていくということになる。また、職種を決めていくにあたっては、いまある幼い自分を基準とした「自分さがし」ではなく、どういう人間になりたいかという前向きの「自分づくり」が必要。それが大人への成長の原動力にもなる。
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