現代日本の「財界」を論ずる前提として、経済の歴史と経済学の入門解説を行う。
①資本主義経済の歴史的な位置。経済の歴史を、生産手段の所有関係を基軸にみる。
a) 原始的な共同社会。長く移動を不可欠とし、最重要の生産手段である土地とその果実は共同所有。日本では縄文時代の末まで。
b) 古代の奴隷制あるいは貴族社会。土地および直接的な労働者が私的所有の対象となる。弥生時代から平安時代末まで。
c) 中近世の封建制あるいは武士社会。生産用具および土地の利用権は農民等に。しかし、最終的な土地の所有権は領主や将軍に、また移動の自由さえない農民は半ば奴隷的。鎌倉時代から江戸時代末まで。鎌倉時代は東西の二重政権期。室町時代には武士が京都をも統治する。中世・近世の分かれ目は統一権力の誕生による兵農分離の有無。
d) 近代の資本主義社会。新たに重要な生産手段として機械が発明される。社会成員の法的平等は進むが、生産手段所有者(経営者)と無所有者(労働者)との対立的な関係は残り、これが経済的な不平等の源となる。明治維新以後。
②資本主義経済の内部にも歴史がある。資本と資本の関係の本科を基本にみる。企業・会社・法人は法的単位。資本は共同して利益を追求する企業集団の自立的最少単位。
a) 自由競争の資本主義。互いが出し抜きあうことで利益を追求しあう段階。
b) 独占の段階。少数大資本間に価格など各種協定による競争の制限が生まれ、中小資本に対しては下請け支配の関係が生まれる。いずれもすでに自由な競争ではない。第一次大戦戦後から産業部門ごとに。
c) 独占の形成にともなう財界と政治との癒着の進行。戦争経済をきっかけに政財界の癒着はすすむが、戦後は財界が関係を主導する。産業をこえた大資本が財界団体(日本経団連など)をつくり、これが政府に政策と資金を提供し、政治をコントロールする主な力となっている。
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