前回の復習から。労資関係には、お互いの「もちつもたれつ」(相互依存)の側面と、お互いの「パイの奪い合い」(対立)の側面がある。「愛社精神」だけを語るのは、後者を見失わせるものとなる。
あわせて、女性の場合には、企業社会での性差別にも遭遇させられる。その紹介が今日のテーマ。卒業生たちの体験から。
1)就職活動の時点での体験。セミナーを女性が申し込むと満員といわれ、同じ場所から男性が申し込むと参加OKといわれる。セミナーの中で、男性のみに質問をあたえ、女性は最初から相手にしないなど。
2)就職直後の体験。いわゆるお茶汲み教育が同期社員の女性だけを選んで行われる。カップが誰のものか、誰が日本茶・コーヒー・紅茶の何を好むか、砂糖の数はいくつかなど。
3)研修者の派遣をめぐる体験。部署ごとに毎年1人が研修に出る。3年間、すべての部署から男性だけが出続けた。もちろん研修は職務上の専門性を高めることを通じて、昇進への道を開くものであり、これが男女の生涯賃金の大きな差にもつながっていく。
4)セクハラによる退職。「あなたを誰がものにするかが話題になっている」という類の発言と行動が、複数の上司によって行われ、同僚たちが自分を見る目も変わってくる。結局、被害者である女性が転職を余儀なくされた。
いずれも過去10年ほどのあいだに、ゼミの卒業生たちが体験してきたこと。企業社会の統べてがこうではないが、以上のような体験は卒業生の10人に1人といった割合になっている。こちらの耳に届かぬ事例もあるのだろう。
①自分の身に同じことがふりかかる可能性があることへの事前の構えをもつこと、②このようなことをどうすれば改善していけるかという課題意識をもつことが大切。
なぜこうしたことが長くつづいているか。それは「古い考え方」の継続ではなく、労資関係における「パイの奪い合い」の1つのあらわれ。「総額人件費削減」の1つの具体化。
就職活動にあたっては、実際に内部ではたらいている人に話を聞く。あわせて就職活動については、「25才くらいまでに落ち着いてはたらくことのできる場が見つかれば良い」と長い目で考える。大学4年で就職活動は終わってしまうわけではない。
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