第1回の授業。「シラバス」にそって、授業内容の説明をする。
「現代社会と経済学」「経済学」「比較経済論」と、授業のレベルは高くなる。09年度前期の「比較経済論」は中国に焦点をあてる。
テキストは、兪可平『中国は民主主義に向かう』。著者は政治学者であり、中国共産党の幹部の一人でもある。このテキストの検討と、今日の世界経済の動きの概括を授業の2本柱とする。
なぜ、中国に注目するか。簡単にいえばそれが世界最大の経済大国となり、政治的影響力を高めていくくから。2035年にBRICsはG7のGDPを追い越すといわれ、アメリカの国家情報会議がつくった「2025年の世界」も、25年時点で中国・インドがアメリカと世界への影響力を争うと予測する。
2007年からの世界金融危機および08年からの世界同時不況の中で、アメリカをふくむ先進国と新興国・途上国の成長率格差はむしろ広がっている。IMFの09年予測は、先進国をマイナス成長とする一方、新興国・途上国はプラスを維持するものとなっている。
同時不況の中で、アメリカ・イギリスは「新自由主義」路線からの脱却をすすめ、中国は輸出依存型から内需主導型への転換をめざし、他方でEU諸国は社会保障・失業対策の充実をもって、アメリカのような莫大な景気対策の必要を否定している。
「新自由主義」推進のアメリカ型資本主義に対して、社会的連帯を土台にすえたEU型の社会的資本主義の優位がバランスのとれた経済成長の面からも明らかになり、激変の時代だからこそ内需を振興するという中国の政策も(アメリカ・イギリスもその要素をもち始めているが)まったく妥当。
さらに、EU諸国から「ブレトンウッズ2」の声があがり、中国が基軸通貨をSDRにするとの提案を行うなど、ドルを基軸通貨とする国際通貨システムの再編も大きな話題となっている。これはアメリカのドル特権を剥奪・縮小するものでもあり、アメリカ経済にとっては重大問題。
こうした経済や政治の大きな転換を直視し、オバマ政権は大国としての生き残りの道を切り開くべく、最初の外遊先に東アジアを選んだ。クリントン国務長官は、日本にはグアム島の米軍基地建設への資金提供を求め、人口が最多のイスラム国家インドネシアではTACへの加入を表明し、中国では、21世紀の最重要2国間関係が米中関係であると表明した。
世界経済の今後は簡単には予想できないが、中国の台頭はまちがいなく、その中国が、国内外で民主主義充実の道を進むことができるかどうかは世界にとっての大問題。
世界経済の変化を多角的に追いかけながら、この中国の変化の可能性を考えてみる。
受講者制限があるので、必要な人には希望書を提出してもらう。
最近のコメント