中国経済は、市場経済の導入によって成長率を急速に高めたが、反面、テキスト69、84ページにあるような問題を生み出しもした。「調和社会」の追求は、それらの解決を求める取り組みを意味してもいる。
そもそも論に遡れば、市場経済・貨幣経済・資本主義経済は、じつはそれぞれ別物となる。とはいえ、歴史の現時点での主な区別は、市場(貨幣)経済と資本主義経済の間におくべきか。
市場経済には、①需要と供給の調整を事後的にだが行うはたらきがあり、②商品(労働力をふくむ)価値をはかるはたらきがあり、さらに、③競争をつうじて経営コストの削減など、生産力の拡大を追求させるはたらきがある。
他方、市場経済には、①売りと買いの分離という恐慌の可能性がはらまれ、②際限のない貨幣蓄蔵への傾向をもち、その結果として、③貧富の格差を拡大し、さらに今日にあっては、④資本主義経済を生み出す役割をもつ。
歴史的には、社会主義における市場経済の位置づけについては、①マルクスは否定、②レーニンは否定から「戦時共産主義」の困難をへて活用の立場に転換、③スターリンは完全否定、④それが旧ソ連の体制づくりの基本となり、東欧・中国などでも模範とされた、しかし、⑤中国やベトナムでの経済建設の実体験があらためて市場の活用を求めるようになっている。現在はその実験の段階にある。
市場経済を前提し、それが生み出す一定の資本主義部門を容認し、それらを社会主義づくりへの活力とするというこの挑戦は、市場経済を前提とした資本主義の内部に、資本の本性を抑制する制度を生み出す資本主義の発展の過程と、遠くへだたるものではない。
次回は、テキスト第4章へ。
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