ストックホルム国際平和研究所の2007年版年鑑が、世界の安全保障における軍事偏重の問題を指摘している。
軍事に投ずる金を、テロや紛争の温床となる「貧困」の克服につかうことはできないのかという問題意識である。
世界の軍事費は、この10年で37%の増加。
過去4年で通常兵器の取り引きは50%も増え、その武器供給者の60%はアメリカとロシア。
世界の軍事企業100社の総売上の63%を、アメリカ企業が占めている。
米ロ仏英中の核兵器は2万6000発以上。
「対テロ」戦費 米52兆円 01~06年 「経済悪化の一因」 世界軍事費 10年で37%増 SIPRI07年版年鑑(しんぶん赤旗、6月13日)
【ロンドン=岡崎衆史】ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は十一日、世界の軍事情勢を分析した二〇〇七年版年鑑を公表しました。このなかで、米国は「対テロ世界戦争」ですでに四千億ドル以上支出していることをあげ、イラク戦費がさらに増え続けることを指摘しています。
年鑑では、米国の軍事費に関連し、〇一年九月から〇六年六月までに、「対テロ世界戦争」に支出されたのは四千三百二十億ドル(約五十二兆円)とし、「米国の軍事費増は、〇一年以来の米経済の悪化の一因となった」と分析しました。またイラクの戦費について、このままいけば一六年には総計で二兆二千六百七十億ドルに達すると警告しました。
〇六年の世界の軍事費は、一兆二千四十億ドル(約百四十六兆円)で、十年間の変化として、一九九七年比で37%増えたことを明らかにしました。そのうち半分近い46%が米国の軍事費です。
〇六年では、最も多い米国が五千二百八十七億ドルで、二位の英国が五百九十二億ドル、フランスが三位で、五百三十一億ドルでした。
一方、〇五年五位だった中国が四百九十五億ドル(SIPRI推定)で、初めて日本を抜いて四位に浮上。日本は四百三十七億ドルで、〇五年の四位から五位となりました。
年鑑は〇六年の世界の通常兵器の取引量について、過去四年間でほぼ50%増えたと指摘。〇二年から〇六年までの最大の武器供給国は米国とロシアでそれぞれ全体の30%程度を占めているとしました。
世界の軍事企業上位百社の〇五年の武器売上額は〇二年比で18%増の二千九百億ドルで、そのうち、四十の米国企業が全体の63%を占めるといいます。米軍事企業の一部は、アフガニスタンやイラク戦争など、「米同時テロ後の米国の政策で巨額の利益を上げてきた」とされます。
核兵器については、〇七年年頭で米国、ロシア、フランス、英国、中国の核弾頭は二万六千発を超えるとし、「英国を除くすべての国で核兵器近代化計画が進められてきた」と分析。英国は、現有の潜水艦発射核ミサイルを更新する意向を示しているとしました。
年鑑はさらに、安全保障の軍事偏重の問題を指摘。経済的な欠乏や資源獲得競争などが紛争の要因となっていることを挙げ、富裕国が貧困国を支援し、貧困、飢餓や環境問題などに対処することが、「人間の生存状況を直接改善し、国際的な安全保障を間接的に強化する」と強調しました。
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