メディアでは、チャベス「独裁の可能性」ばかりが話題となるが、地域人民権力の形成や、6時間労働など、憲法改正案はかなり多様なようである。
とはいえ、「革命の推進」と「再選制限」は、果たして対立するものなのだろうか。
地域人民権力と政府権力との関係など、もう少し、詳しい情報がほしいところ。
国民投票まで1週間 ベネズエラ憲法改正案(しんぶん赤旗、11月26日)
チャベス政権のもとで「二十一世紀の社会主義」をめざした社会変革がすすむ南米のベネズエラで、十二月二日に憲法改正案の是非を問う国民投票がおこなわれます。賛成、反対派双方が大規模なデモを連日おこない、壮大なキャンペーンを繰り広げています。(メキシコ市=松島良尚)
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チャベス大統領は今回の憲法改正を「革命の原動力」の一つに位置づけ、一九九九年に自身の政権下で制定された現行憲法三百五十条のうち三十三条項の改正を八月十五日に提案しました。
再選規定で論議
その後、議席を持たない野党も参加した国会での審議を経て三十六条項が加わり合計六十九条項に増えました。大統領側は、「現行憲法の骨格は変えないものの民主主義をさらに深化させて革命の速度を上げ、確固とした方向を定める」ためと強調しています。
反政府派やメディアが改正案でもっとも重大視しているのは、大統領任期の六年から七年への延長と再選制限の撤廃(第二三〇条)で、「独裁権力の強化」とか「永久権力のねらい」と批判しています。
大統領側は、再選制限の撤廃は変革をすすめるためであり、自動再選や終身制をうたったものではなく、選挙の当落は有権者が決めることだと強調。欧州連合(EU)二十七カ国のうち独仏をはじめ十七カ国は再選禁止規定がないことなどを挙げて反論しています。
実際、国民の中からは「野党がチャベスの連続当選を前提にしているのはおかしい」「革命のプロジェクトを系統的に実施するには再選制限がない方がいい」との声が上がっています。
改正案が国家非常時に国民の知る権利を制限できるようにしていることも、反対派や人権団体、ジャーナリスト団体などが民主主義の大きな問題だと批判しています。現行憲法は非常時でも制限できないとしてこの権利を明記していますが、改正案では削除されました(第三三七条)。
フロレス国会議長は、これによって「民主主義や平和を破壊しようとする者が処罰を免れることはなくなる」と述べ、メディアが二〇〇二年のクーデターに加担したさい、法的に規制できなかった経過を指摘しました。
国民の手に移行
一方、政府が改正案全体の中心と位置づけているのは、公権力を国民の手にいっそう大胆に移行するという点です。参加型民主主義を拡充し、国民を社会主義建設の主役にすえようというねらいです。
そのため、すでに二万七千以上組織されている新しい住民自治機関、地区住民評議会を中心とする人民権力の創設(第一六条)や、地方自治体機能の人民権力への移管(同一八四条)などを提案しています。
改正案の中には、大土地所有制や独占の禁止(第一一三条)、多くの国民に歓迎されている法定労働時間の短縮(同九〇条。一日八時間から六時間へ)もあります。選挙権の十八歳から十六歳への引き下げ(同六四条)には野党も賛成しています。
両派のキャンペーンが進む中で、これまで革命を支持してきた与党議員の一部やバドゥエル前国防相らが反対を表明しました。ただ反対派のほとんどは、〇五年の国会選挙でおこなった投票ボイコット戦術をとらず、「ノー」に投票するよう呼びかけています。
投票方法については、反対派が主張していた条項ごとの投票は退けられました。六十九条項は大統領提案を中心とする条項と残りの条項の二つのグループに分けられ、グループ単位でそれぞれの賛否が問われることになっています。
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