先日も紹介した『東洋経済』1月12日号によれば、スウェーデンでは、国の歳出の49%が「現金給付を中心とした経済的保障」、県の歳出の71%が医療費、市町村の歳出の80%が福祉・教育に投じられているという。
反対に、この国の現在の医師不足は、医療費抑制のためにまず医師減らしからという、政府自身の姿勢によるもの。
政治家も有権者も、もっと賢くならねば。
機能失う3次救急病院 麻酔科医不足、重症者を制限(神戸新聞、1月25日)
麻酔科医不足が兵庫県内の救急医療に深刻な影を落としている。「最後のとりで」の三次救急病院でも、県立姫路循環器病センター(姫路市)や県立柏原病院(丹波市)で麻酔科医の退職が相次ぎ、脳卒中や交通事故などの重症患者の受け入れを制限せざるを得ない状況だ。背景には、手術件数の急増で勤務が過酷になる中、勤務医が独立して「フリー麻酔科医」になる動きがある。(社会部・田中伸明、今泉欣也)
「姫路循環器病センターの受け入れ制限で、脳卒中患者の緊急手術が急増した。うちも麻酔科医は足らないのに」-。姫路市内の病院関係者はため息をつく。
姫路循環器病センターは、播磨地域の救命救急センター(三次救急)を担う。しかし、昨年十二月に同市の男性が十七病院に救急搬送受け入れを断られ、死亡した問題では、循環器病センターの内科や外科医の不足を受け、救急隊が搬送の打診先から同センターを外していたことが発覚した。
さらに、循環器病センターでは二〇〇四年には七人いた常勤の麻酔科医が、〇七年には一人に激減。今年に入って二人になったが、二十四時間の対応は不可能という。「最後のとりで」が機能不全に陥っている。
丹波地域の三次救急を担う県立柏原病院では、麻酔科の常勤医がゼロになり、脳卒中の患者の受け入れを停止。三次救急への格上げが予定されている県立加古川病院(加古川市)も、麻酔科医は二人だけだ。県立病院では、ほかに塚口病院(尼崎市)でも不在になっている。
麻酔は、医師免許を持っていれば原則誰でもできる。しかし、交通事故や脳卒中などの重症患者の場合、手術前後の患者の呼吸や血流などを管理する麻酔専門医の役割は重要さを増している。
救急病院では、麻酔科医が「集中治療部長」や「救急部長」の肩書きを持つことも多い。県立がんセンター(明石市)の尾原秀史・麻酔センター長は「特に救急医療で麻酔科医は欠かせない」と強調する。
循環器病センターの現状について、姫路市消防局は「心筋梗塞(しんきんこうそく)など循環器系疾患を除けば、昼間でも重症患者の受け入れは難しい状態」と指摘する。
■
県立病院は従来、主に神戸大医学部から麻酔科医の「派遣」を受けてきたが、医局の人員不足で供給がストップ。新臨床研修制度の導入に加え、病院や大学に属さない「フリー麻酔科医」の増加が不足に拍車をかけている。
「独立志向」の背景について、循環器病センターの梶谷定志・救命救急センター長は「勤務医は体力と精神面の負荷が大きい上、フリーでいろんな病院に行く方が高収入が得られる」と話す。
県立病院の関係者は「循環器病センターをはじめ、公立病院はフリー麻酔科医に頼らなければやっていけない現状だが、一部では、術前、術後の管理を十分してもらえない問題点もある」と打ち明ける。
県病院局は、麻酔科医への手当の増額を検討しているが、「抜本的な解決は難しい」という。神戸大医学部で麻酔科教授を務めた尾原麻酔センター長は「学生や研修医に麻酔科の重要性ややりがいを伝え、地位を向上させることが肝要だ」と話している。
コメント