松下の新工場が姫路に進出するという。
県の補助金は、いまのところまず数年で90億円。
この他に、姫路市が数年で約100億円。
さかんに雇用の期待がいわれているが、それが「正規雇用」か「非正規雇用」かについては、どこにも情報が示されない。
とはいえ、同じ松下の尼崎工場が、新規採用の97.52%を「非正規」とし、後に直接の雇用責任を負わない「請負」に転換させたことから想像がつく。
「兵庫県民安使い政策」ということである。
残りのポイントは、①関連して地元中小業者にどれほど仕事が新たに入ってくるか、②外部からやってくる関連企業がどの程度の雇用効果をもつか、③松下と関連企業からの「税収」がどの程度の額に達するかといったあたりである。
「新行革プラン」で県民の医療・教育・就労支援の削減を提案しながら、その一方での大企業補助である。
「県」ではなく、「県民」にとってのメリットが明快に説明されるべきである。
松下、姫路進出を決定 薄型TV拠点、県内集積(神戸新聞、2月15日)
松下電器産業が液晶パネル工場を建設する出光興産兵庫製油所跡地=姫路市飾磨区妻鹿日田町
松下電器産業は十五日までに、液晶テレビ用パネルの工場を姫路市飾磨区に建設することを決めた。同日発表する。三千億円を投じ、二〇〇九年度中の稼働を目指す。松下は、パネル生産で包括提携している日立製作所、キヤノンとともに工場建設を計画。姫路市に建設する方向で最終調整していた。(白倉麻子)
大阪府門真市や茨木市などにある松下の研究・開発拠点に近いことなどが建設の決め手となったとみられる。予定地は、姫路臨海部にある出光興産兵庫製油所跡地(約百二十四万平方メートル)。松下は、日立グループのパネル製造会社IPSアルファテクノロジの経営権を取得することで合意しており、工場はIPSが建設する格好となる。
工場では、30型台の液晶テレビ向けパネルを生産。素材には「第七世代」や「第八世代」と呼ばれる二メートル四方程度のガラス基板を使うため、効率的に中・大型テレビ向けパネルが作れる。
フル稼働時には月産十万枚(ガラス基板)を見込む。液晶パネル工場としては〇九年度に稼働し、世界最大となるシャープの工場(堺市)に次ぐ生産規模になる。
兵庫県内で松下は現在、尼崎市内でプラズマテレビ用パネルの二工場を稼働させている。〇九年五月までには同市内で計三工場が操業。加えて姫路の液晶パネル工場が動き出せば、兵庫の東西が松下の薄型テレビ生産の二大拠点となる。
松下が工場建設を決めた製油所跡地は以前、シャープの液晶工場の有力候補地に目された。兵庫県も誘致を進めたが最終的に、シャープは堺市での建設を決定。県はその後、松下に液晶パネル新工場の誘致を働きかけていた。
■総額6000億円規模の投資
松下電器産業が姫路市に液晶パネルの工場を建設することを決め、播磨地域の産業構造は大きく変化する。鉄鋼などの重厚長大産業が中心である地域経済にデジタル家電が新たなけん引役に参入。大阪湾岸は世界有数の先端デジタル家電の集積地に変ぼうする。
「液晶パネル工場の進出で、ガラスなどの部材を供給する関連企業が播磨地域に集まる。投資規模は六千億円になりそうだ」。地元関係者は、大型投資による経済活性化に期待を寄せる。
鉄鋼などの活況で播磨経済も息を吹き返してきた。デジタル家電の集積が加われば、製造業の高付加価値化や、雇用や税収の増加などが期待できる-との見方もある。
兵庫県によると、二〇〇五年秋に松下のプラズマパネル工場が稼働した尼崎市は、経済規模を示す〇六年度の域内総生産が前年度より二千百五十億円増え、13・5%の二ケタ成長。周辺には中小製造業の進出が相次ぐなど、「松下効果は計りしれない」(県)
尼崎のプラズマテレビ用パネル工場に加え、〇九年度には姫路市の新工場が稼働。関西経済活性化を引っ張る先端デジタル家電の集積地の中、兵庫は中核的な位置を占めることになる。(小林由佳)
雇用創出1000人に 松下液晶工場、姫路進出決定(神戸新聞、2月15日)
松下電器産業は十五日、姫路市飾磨区に液晶テレビ用パネルの新工場を建設すると正式に発表した。総投資額は約三千億円で、今年八月に着工し二〇一〇年一月に稼働予定。稼働後の地元雇用は千人規模になる見通しという。フル生産時の年産能力は約千五百万台(32型換算)で、液晶パネルではシャープが堺市に建設中の新工場に次ぐ生産規模になる。
将来的には次世代ディスプレーの本命とされる有機ELへの展開や40型台の対応も検討していく。
建設地は姫路臨海部にある出光興産の兵庫製油所跡地。敷地面積は約五十ヘクタール。日立グループのパネル製造子会社IPSアルファテクノロジ(千葉県)の経営権を取得することが決まっており、工場はIPSが建設する。
松下は主力のプラズマに加えて液晶でも基幹部品のパネルに巨額投資し、薄型テレビ事業の競争力強化を図る。「第八世代」(一・五メートル×一・八五メートル)と呼ばれる基板サイズで稼働を始める。32型では八枚取り、37型では六枚取りが可能。
同社は姫路への進出理由について、大阪府門真市や茨木市などにある松下の研究・開発拠点や、尼崎のプラズマパネルの主力工場に近いという立地、さらに電力や交通などのインフラの良さを挙げた。同日東京で会見したIPSの米内史明社長は「コンビナート的な形で国際競争力を持たせたい。広大な土地もあり、将来的に工場の拡張余地もある」などと述べた。(白倉麻子、山路 進)
松下、姫路進出 市6年間計100億円支援(神戸新聞、2月16日)
姫路市は十五日、松下電器産業による液晶テレビ用パネル工場進出の支援策として、固定資産税と事業所税に基づく額を六年間助成する「工場立地促進条例改正案」を明らかにした。市の試算では、助成額は二〇〇九年度からの六年間で約百億円に上る。二十二日開会の定例市会に提案し、四月一日施行を目指す。
現在の条例では三年間に限り、固定資産税、事業所税相当額を奨励金として助成。改正案では、五百億円以上を投資する企業を大規模指定事業者とし、三年間の全額助成に加え、さらに三年間、税額の半分を助成する。土地取得のケースだけでなく借地でも適用する。
進出企業が姫路市民を新たに雇用した場合、雇用奨励金を一人につき三十万円助成する制度があるが、現行の三年を六年に延長し、助成限度額を一億円から二億円に引き上げる。(中部 剛)
デジタル家電集積地に 松下、姫路に新工場(神戸新聞、2月16日)
松下電器産業などが姫路に建設する液晶パネル工場の完成予想図
松下電器産業などは十五日、姫路市に液晶テレビ用パネルの新工場を建設すると正式に発表した。重厚長大産業で栄えた播磨沿岸部は今後、最先端デジタル家電の生産拠点としても発展しそうだ。液晶パネルは液晶カラーフィルターなど関連産業のすそ野が広く、既に数社が近隣への進出を検討。尼崎市の同社のプラズマパネル工場とともに、地域経済のけん引役となりそうだ。(白倉麻子)
今回進出が決まった液晶パネル生産は関連産業のすそ野が広く、インフラや装置、カラーフィルターなどさまざまな関連工場が周辺に集積。プラズマパネル以上の波及効果が期待される。
県によると、二〇〇五年秋に松下のプラズマ工場が稼働した尼崎市は、経済規模を示す〇六年度の域内総生産が前年度比13・5%増と二ケタ成長となった。周辺の臨海部に中小製造業の工場進出が相次ぐなど、「松下効果は計りしれない」。
シャープが堺市に建設中の大型パネル工場は、松下の新工場とほぼ匹敵する規模で、関連産業十四社の進出が決定。その投資額も国内最大級で、大阪府は新工場の経済波及効果を約三兆九千億円とみる。
その波及効果は県内にも及び、県内関連工場も生産設備の増強が相次ぐ。旭硝子(東京)は高砂市の高砂工場に約三百億円を投じ、ガラス基板の製造設備の新・増設を決定。液晶の偏光板用の保護フィルムを製造するコニカミノルタオプト(同)も昨年十一月、神戸市西区で五番目の専用工場を稼働させ、ライン増設も決めた。
有機EL向け転用視野
松下電器産業が建設する液晶パネル工場の製造設備は、次世代ディスプレーの本命とされる有機EL向けに転用できる余地が大きく、松下にとって新工場建設はプラズマ・液晶後のテレビ市場に布石を打つ意味合いがある。従来は外部調達に頼っていた液晶パネルの安定確保とともに、将来の有機ELの台頭に備える二段構えの戦略を取ることになる。
有機ELは、超薄型化や折り曲げが可能といった特徴がある。松下はこれまで薄型テレビで主力のプラズマに集中投資してきたが、昨年末に液晶や有機ELの開発で日立製作所、キヤノンと提携を発表。有機ELは「大画面テレビで実用化されるのは二〇一五年ごろ以降」(松下幹部)と予測するものの、ソニーなど先行メーカーの独走を防ぎたい思惑がうかがえる。
シャープが堺市に世界最大規模の液晶工場の建設を進める中で、松下は建設決定のタイミングが遅く、新たな製造設備増強はパネルの供給過剰をもたらす恐れが指摘されている。
松下は「他社より原理的に優れた特性のパネルで、十分にコスト競争力がある」(坂本俊弘専務)と反論。薄型テレビ事業でパネルの方式にかかわらず、基幹部品の生産から製品組み立てまで自社で手掛ける「垂直統合モデル」を貫く考えだ。
松下、姫路進出 森田常務インタビュー(神戸新聞、2月16日)
松下電器産業の森田研常務役員は十五日、神戸新聞社の単独インタビューに応じた。液晶パネル工場を建設する出光興産兵庫製油所跡地の余剰スペースに、関連企業が進出する可能性について言及したほか、稼働当初の段階で、千人規模の雇用に結びつくとの見方も示した。森田常務の一問一答は次の通り。
--姫路進出の理由は。
「プラズマ・ディスプレー・パネル工場のある尼崎市や大阪府茨木市と近く、技術面で連携が図れることが魅力だった。拠点としても十分な広さがあり、電力や工業用水などのインフラが整っている」
「全国で五つの候補地があったが、工場建設に伴う複雑な行政手続きを短時間で処理できるよう、兵庫県や市から前向きな協力を得られたことが決め手になった」
--工場の敷地面積は製油所跡地全体の四割弱に過ぎない。残る部分は、どう活用する。
「まだ明確な予定はないが、ほかの関連企業に進出してもらえる可能性もある。多分、何社か出てこられる可能性があると思う。開発中の有機ELは、液晶パネルをほぼそのまま使えるので、(将来実用化すれば)対応できる」
--経済効果に地元は大きな期待をかける。
「プラズマ工場進出で、尼崎市の域内総生産は13%以上伸びたと聞いている。姫路周辺の方々の期待は、非常にありがたい。当初動くのは工場の半分程度のエリアだが、他の工場からの転勤者も含め千人程度の方に働いていただかないといけない。残るエリアも動き出せば、(雇用数は)さらに大きくなると考えている」
県知事ら税収増、活性化に期待 松下、姫路進出(神戸新聞、2月16日)
松下電器産業が液晶テレビ用パネルの工場を姫路市飾磨区で建設することを発表した十五日、誘致を働きかけてきた兵庫県の井戸敏三知事と、姫路市の石見利勝市長が相次いで会見し、歓迎を表明した。予定地は以前、シャープの液晶工場誘致が有力視されていたが、「まさかの逆転」(井戸知事)で昨年七月、堺市に決定。苦い経験を乗り越えての誘致成功で、関連企業を含む雇用創出や税収増を見込み、地元の期待は早くも膨らんでいる。
「松下の新工場の方が発展の可能性があると期待している。会社の規模も違いますしね」
井戸知事は「シャープに逃げられ、結果的に良かったのでは」との問いに、こう答えた。
シャープ誘致に失敗した直後から知事自らが乗り出し、松下の大坪文雄社長に姫路を売り込んだ。井戸知事は「松下とは尼崎のパネル工場建設の際に培った信頼関係がある」と胸を張り、「地元企業が松下に部品納入する道を開くなど、地域への波及効果を高める支援体制を整えたい」と述べた。また、デジタル家電の生産拠点が県内二カ所で整備されることになり、井戸知事は「先端の産業クラスター(集積)が形成され、世界にアピールできる」。
県は、従来ある優遇策を適用し、新工場の投資額の約3%に当たる九十億円を補助する方針で、数年間にわたって支払うという。
石見市長も「地元企業もビジネスチャンスの拡大が見込め、継続的な雇用確保など大きな波及効果を期待できる」とし、市のプロジェクトチームを同日付で設置。建築確認手続きを迅速化するなど全面的に支援する。
姫路商工会議所の尾上壽男会頭は「播磨地域全体の活性化につながる」とコメントした。妻鹿駅が新工場の最寄り駅となる山陽電鉄は「沿線のにぎわいにつながり、大歓迎」。同駅は普通電車などが停車するだけだが、同社は「特急の停車や、バスの路線開設も考えたい」と話している。
コメント