世界的な環境対策の進展に対する不同意が、アメリカの威信低下を導いた。
そこで「スマートパワー委員会」報告は、これに対する積極的な対応を求めている。
「去りゆく政権でなく、来るべき政権のことを考えてほしい」というオルデン・メイヤー氏の言葉は、情けないことながら、従米国家日本への実に的を得たアドバイスの仕方である。
この領域にあっても南北のパワーバランスの変化は明瞭。
温暖化対策G20閉幕 日本提案 NGOから批判続出(しんぶん赤旗、3月17日)
千葉市で開催されている地球温暖化問題の主要国閣僚会合(G20)に参加した環境非政府組織(NGO)関係者は十六日、会場内で記者会見し、同会議について「建設的な議論ができた」と評価する一方、日本政府が提案した産業別に温室効果ガス削減目標を積み上げる「セクター別アプローチ」について批判しました。
「セクター別アプローチ」は産業界の意向を受けやすいため、先進国に25―40%の排出削減目標を求めたバリ合意に照らし、「合意の精神を脅威にさらすものだ」(米国の「憂慮する科学者同盟」のオルデン・メイヤー氏)との批判が相次ぎました。
実際、日本側が同アプローチを提案した十五日の討議は「紛糾だった」(NGO関係者)といいます。先進国、途上国両方から否定的な声があがり、「とくに途上国が率直に批判する場となったことは良かった」(海外NGO関係者)との声も聞かれました。
気候ネットワークの平田仁子氏は「議長国として提案をゴリ押ししようとした日本は、それに失敗した」と指摘しました。WWFジャパンの鮎川ゆりか氏は「日本に求められるリーダーシップは、きちんと中期目標を掲げることだ」と強調。新たな資金・技術協力を含めた積極的な役割を求めました。
また、ブッシュ米政権の任期が残り少ないことから、「今回の会議では、アメリカ代表を“去りゆく国”の代表とみる空気があった」(英国の「E3G」のジェニファー・モーガン氏)との声も。大統領予備選で名前が挙がっている民主、共和両党の三候補とも、ブッシュ政権とはちがって、気候変動問題に積極的にとりくむ姿勢を示していることから、「日本政府は、去りゆく政権ではなく、来るべき政権のことを考えてほしい」(前出のメイヤー氏)との声もあがりました。
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解説
業界別目標 総量削減の保証なし
日米など二十カ国と欧州連合(EU)の環境相、エネルギー相が出席して千葉市で開かれた地球温暖化対策を議論する主要国閣僚会合(G20)で、鴨下一郎環境相は十六日、京都議定書に続く二〇一三年以降の温室効果ガス削減の枠組みとして、鉄鋼、セメントなどの業種や分野ごとにCO2削減可能量を積み上げる「セクター別目標」方式を提案。「セクター(業界)別積み上げの方法論に関する国際ワークショップ」を今年五月に開催することを呼びかけました。
しかし、日本提案の「セクター別目標」方式は、同会合でも「いろいろ疑義が表明された」(甘利明経済産業相)として、全体的な支持を得るには至りませんでした。会合では、二〇一三年以降の枠組みについては「先進国の率先した排出削減と途上国支援」や先進国と途上国の「共通だが差異ある責任」をあらためて確認。セクター別の削減目標積み上げは、国別総量削減目標の代替にはならないと異論が続出したため「議論の継続が必要」となりました。
G20関係者によると、オーストラリアをはじめとする先進国のほか、途上国からも多くの意見が寄せられました。南アフリカ共和国、インドネシア、ブラジルからは「途上国に対し先進国と同様の責任を負わせるものではないか」と反対の声がつぎつぎ上がりました。
環境NGOなども、鉄鋼など業界ごとに削減可能量を積み上げて国別総量目標を設定しようとするのは、先進国と途上国の責任をあいまいにし、二〇二〇年に一九九〇年比25―40%という先進国に迫られた総量削減目標となる保証がないなどと問題点を指摘。日本政府として二〇二〇年の中期CO2総量削減目標を表明するよう求めていました。
中期目標の表明もなく、セクター別の目標積み上げ方式に固執する日本政府の姿勢は、CO2大幅削減を迫る科学的知見を無視するものといえます。(宇野龍彦)
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