日本政府が、ODA予算圧縮の中で、アフリカ向けを例外にするとの方向を決めた。
実のある援助であれば、それはもちろん結構だが、同時に、これがアメリカのスマートパワー委員会報告の方向にそっている点にも注目がいる。
同委員会報告は、アフリカへの中国の影響力強化に対する「対抗」の必要を強く語っていた。
アフリカ支援倍増・首相表明、ODAの重点分野に(日経新聞、5月20日)
福田康夫首相は20日の海外経済協力会議で、アフリカ諸国向けの政府開発援助(ODA)と民間投資を2012年までにそれぞれ倍増する意向を表明した。政府はアフリカをODAの重点分野に据えるとともに、コメ生産支援などの援助政策を拡大。アフリカが抱える豊富な資源の獲得や国連改革での連携に向けて布石を打つ。
08年のアフリカ向けODAは約1000億円、民間投資は約17億ドル。首相は28日に開幕するアフリカ開発会議(TICAD)で一連の支援策を表明する。
町村信孝官房長官は20日の記者会見で、アフリカとの協力を強化する理由として(1)国連安全保障理事会の常任理事国入りでの連携(2)豊富な資源の獲得――をあげた。ODAの増額はそのための手段の1つだった。普段は非公開の海外経済協力会議も首相はわざわざあいさつの場面をテレビカメラに撮影させた。
対アフリカODA 5年で倍増3000億円 政府海外経済協力会議(産経新聞、5月21日)
政府は20日、海外経済協力会議(議長・福田康夫首相)を国会内で開き、アフリカに対する政府開発援助(ODA)を平成24年までの5年間で倍増する方針を決めた。道路網などインフラ整備を中心に援助を行うとともに、日本からの民間直接投資の倍増も目指す。首相が28日から横浜市内で開かれる第4回アフリカ開発会議(TICADIV)で表明する。政府は厳しい財政事情を受けODA予算の削減を強いられているが、アフリカ向けODAを削減対象の「例外」とする方向になった。
首相は会議で、関係閣僚に「アフリカ開発を支援するために力強いイニシアチブを打ち出す。実現できるように各省庁間で取り組んでほしい」と指示した。
アフリカ支援策では、過去5年の対アフリカODA平均額の約1000億円から毎年段階的に増額し、24年には2000億円とする方針。この結果、純増額は5年間で計約3000億円となる。民間直接投資も貿易保険を活用し、約1700億円から約3400億円への倍増を目指す。母子保健協力の拡充や農業生産性の向上などにも取り組む。
ただ、16年の「骨太の方針」が23年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化に向け、ODA予算の毎年2~4%削減を盛り込んでいることが、アフリカ支援増額の障壁となっている。町村信孝官房長官は20日の記者会見で「来年度の予算編成、6月末にまとめる骨太の方針の中で、どう扱うのか別途議論する」と述べた。
アフリカ向けODAを削減対象の例外とする方向だが、外務省と財務省の調整は難航している。財務相の諮問機関の財政制度等審議会が19日、ODAの増額要求を牽制(けんせい)したことに対しても外務省は反発。骨太の方針の取りまとめに向け、両省の間で綱引きが続きそうだ。
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