選挙結果についての分析だが、民主党への評価があがったのではなく、むしろ評価の下がり方が、民主党より自民党の方が大きかったといったところである。
公明党に対して、もっと少なくて良かったとの声が強いところは注目される。
いずれにせよ、自民でも民主でもダメだとなれば、これにとって変わる政治路線の浮上が不可欠となる。
他方で、その浮上を阻止するための2大政党制構築への力もまた、強くはたらくことになるだろう。
自民離れ雪崩打つ…総括(読売新聞、8月6日)
05年衆院選自民投票者の51%が他党へ 民主躍進は「敵失」の見方多数
第21回参院選の公示前から投票日直後までの約1か月半、読売新聞社がインターネット利用者を対象に行った「参院選ネットモニター調査」の結果をまとめた。「郵政解散」で自民党が圧勝した2005年衆院選の投票行動と比較すると、自民党支持者の半数以上が離反する「地殻変動」が起こっていた。反面、民主党や小沢代表を評価する声は少なく、もっぱら自民党の「敵失」を理由に挙げる人が多数を占めた。
自民離れ雪崩打つ
05年衆院比例選で自民党に投票した人は、今回比例選で大きく変化した。
05年に自民党に投票した人のうち、今回も自民党に投票した人は42%で半数に満たず、37%は民主党、14%がその他の政党に流出した。これに対し、05年衆院比例選で民主党に投票した人は、74%が今回も民主党に投票した。
6月初旬の第1回調査で聞いた投票予定先と、実際の投票結果を比較すると、自民党が25%から23%に減ったのに対し、民主党は35%から48%へ大幅に増えた。第1回で自民党と答えた人の17%、態度未定だった人の46%が、それぞれ民主党に投票していた。
選挙中も自民離反加速
投票先を決めた時期を尋ねると、公示日(7月12日)前が29%、公示日ごろが11%、選挙期間中が30%、投票前日(28日)が12%、投票当日(29日)が13%だった。与党は公示前から年金記録漏れ問題で逆風にさらされていたが、有権者の半数以上は、選挙期間まで投票先を見極めていたことになる。
公示日前までに決めた人の投票先は民主党47%、自民党35%だったが、選挙期間中に決めた人は民主党が60%以上に対し、自民党は10%台。投票前日と当日に決めた人も、民主党が40~50%で、合計で自民党の倍以上に上った。
自民党は選挙期間で反転攻勢のチャンスがあったにもかかわらず、赤城徳彦・前農相の事務所費問題などで失点を重ね、支持者の離反がさらに加速したことがうかがえる。
民主評価は上向かず
民主党躍進の理由を尋ねると、「安倍首相への批判や不満」が58%で最も多く、次いで「自民党以外では民主党がよい」が23%。「民主党の公約を評価」8%、「小沢代表への期待」は4%と少なかった。比例選で民主党に投票した人に限っても、この割合はほとんど同じで、「敵失」との見方が多数を占めている。
政党の総合評価を0度から100度までの「温度」(評価がプラスでもマイナスでもなければ50度)で示してもらう「政党評価温度」を、6月中旬と選挙直後で比較すると、自民党は39度から28度まで低下したが、民主党も45度から43度へ減少しており、評価は上向かなかった。
選挙結果「望ましい」72%
選挙結果については有権者の多くが肯定的だった。「どちらかと言えば」を含め「望ましい」と答えたのが72%。「どちらかと言えば望ましくない」は15%、「望ましくない」は13%だった。主要政党別の獲得議席に対する評価は、公明党を除く各党で「ちょうどいい」が42~56%で最も多かった。公明党については「もっと少ない方がよかった」が47%で、「ちょうどいい」の39%を上回った。
安倍内閣の戦略上の失敗
今回のネットモニター調査結果について、川上和久・明治学院大法学部長(政治心理学)に聞いた。
◇
年金問題での怒りによる自民党への厳しい世論は当初からあったが、それが必ずしもすべて民主党への支持に結びついていたわけではなかった。だが、久間章生・前防衛相の「原爆発言」や赤城徳彦・前農相の事務所費問題などが加わり、自民党は反転攻勢する間もなく、じりじりと支持を失い、最後は無党派層も一気に民主党支持に傾いていった。
「世論の風速計」ともいえるこの調査結果の推移をみれば、赤城前農相の出処進退など自明の理だった。刻々と映し出される世論を読み、適切な手を打てなかったこと自体、安倍内閣の戦略上の失敗だと言える。
モニターの声
自民党にお灸をと思っていたら、テレビのインタビューで自民党が「お灸をすえられた」と言っていた。久々に自分たちの意思が反映されたと身近に思った(愛知県の40歳男性)
安倍首相の任命責任と決断の甘さが招いた結果だと思うが、小沢代表には期待していない(愛媛県の59歳女性)
自民党の惨敗は仕方がないと思うが、小沢代表率いる民主党にも安心して政権を任せられない。民主党が勝利した以上、国民に目を向けた政治をお願いしたい(茨城県の43歳女性)
これまでの大臣の不祥事の結末および責任の取り方からすれば、国民の疑念が生まれるのは当然で、今回の結果は妥当だと思う(岐阜県の29歳女性)
年金や生活格差ばかりが争点になって、憲法、外交、教育など、国のあり方についての論争が極めて低調だった。今回の結果で北朝鮮や中国や韓国は大喜びしていることだろう(宮城県の56歳女性)
民主党の躍進は、無党派層の民主支持というより、反自民の意味合いが強い。自民よりは幾分かだけ民主党の方がマシくらいの感じなので、民主党の今後の行動によっては、次回衆院選で大敗する可能性もあると思う(京都府の47歳男性)
自民党の今までのツケがたまって、たまたま安倍首相に回って来ただけで、かわいそうだと思う(広島県の38歳男性)
予想以上に厳しい結果になった。民主党には政権与党になるべき党としての自覚と研鑽を積み、国民の信頼感を高めてもらいたい(埼玉県の71歳男性)
最後の最後まで迷ったが、選挙区では民主党の候補者を選び、比例選では自民党に投票した。今の安倍内閣には不満だらけだが、参議院議員の任期6年を考えたら、民主党で大丈夫なのかなと複雑な気持ちになった(鹿児島県の34歳女性)
◆ネットモニター調査 読売新聞社が2000年衆院選以降の国政選挙で毎回実施している。全国のインターネット利用者1000人に委嘱し、同じモニターを対象に継続調査した。質問、回答はすべてインターネット上で行った。実施時期は〈1〉6月15~19日〈2〉6月22~26日〈3〉6月29日~7月3日〈4〉公示直前の7月6~10日〈5〉選挙戦序盤の7月13~17日〈6〉投票日直前の7月20~24日〈7〉投票日直後の7月30日~8月1日。
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