「経済財政白書」が、もうかっているのは大中製造業だけで、家計もふくめて他がさっぱりだから景気回復の実感がないと述べている。
これまた、いまさら何をおっしゃるものやら。
そのうえ、打開策はどこにもない。
「新自由主義」の原理と、目の前の経済の現実を、無理やりむすびつけているだけである。
この数年、まったく同じ傾向である。
実感乏しい「景気回復」 家計波及の弱さが影響 経済財政白書(しんぶん赤旗、8月8日)
「景気回復」の実感が乏しいのは、企業の好調さの家計への波及が弱いからだ―。政府の白書がこんな分析をしています。この白書は、大田弘子経済財政担当相が七日の閣議に提出した二〇〇七年度の年次経済財政報告(「経済財政白書」)。安倍内閣は、大企業の「成長」を応援すれば、家計に波及していくとの経済政策をとってきました。政府の分析によっても、その矛盾が浮き彫りになった形です。
白書は、いまの「景気回復」局面は戦後最長なのに「実感が乏しい」のは「企業収益のばらつきや家計部門への波及の弱さも影響」していると分析しています。大中堅規模の製造業の収益は大きく改善したのに、中小非製造業では改善が小幅で、最近は低下に転じています。また、「バブル景気」までは、一人当たりの経常利益が増えるにしたがって賃金も増えていました。今回の「景気回復」では、企業収益に見合った賃金の増加がみられないことが「家計の回復実感を阻害している」としています。
大企業製造業では、企業収益が回復するなか、〇二年から〇五年の三年間で配当総額は約二・三倍、一人当たりの役員給与・賞与は一・七倍と伸びたのに、従業員給与は横ばい。とくに〇六年後半以降の賃金の弱さの複合的要因として、依然として続く非正規雇用の増大や団塊世代退職者の増大などをあげています。
ほころぶ“安倍戦略” 成長下でも格差拡大 07年度 経済財政白書(しんぶん赤旗、8月8日)
大田弘子経済財政担当相は七日の閣議に二〇〇七年度年次経済財政報告(「経済財政白書」)を提出しました。白書に示された安倍「経済成長戦略」のほころびを見てみました。
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「家計部門では二〇〇六年半ば頃(ごろ)から賃金と消費の伸びがともに鈍化し、その後、消費は持ち直したものの賃金は横ばい」―。白書は、労働者の賃金が一向に上昇しない現状を指摘しました。
白書はその原因として、(1)フルタイム非正規労働者の割合の増加(2)団塊世代の退職(3)賃金の低い産業への労働移動(4)地方公務員の賃金引き下げ―などを挙げています。これらの要因が複合的に作用し、労働者の賃金押し下げの原因になっていると分析しました。
今回の「景気回復」局面では、「企業収益が回復する中にあっても、それに見合った賃金の増加は見られない」。白書は、企業がバブル期を超える利益をあげるもとで、それを賃金の上昇に反映させていない現状を浮き彫りにしています。
白書は、「〇二年以降、大企業の企業収益が回復する中で、配当や役員報酬が増加する一方で、従業員給与が横ばいとなっている」と指摘しています。
大企業(資本金十億円以上)の従業員一人当たりの給与に対する役員一人当たりの報酬の水準は、〇五年度には約四・八倍に達し、三十九年前と同じレベルに近づいています。白書の分析から、企業の業績回復のもと、役員報酬だけは増やしても、労働者の賃金が上がらない現状が浮き彫りになっています。
白書は、日本や米英では、「成長と格差拡大が同時に進む例がみられ(る)」という分析結果を紹介しています。
正規、非正規間の賃金格差の拡大や、IT(情報技術)化、グローバル化による格差拡大の助長などを指摘した今年の「経済財政白書」。経済成長によって社会全体が底上げされ、格差は次第に縮小するとされてきた政府の従来の考え方とは異なる考えを示しました。
安倍内閣の「経済成長戦略」のもと、大企業優先の経済成長のみを重視すれば、格差拡大という大きな落とし穴があることに警鐘を鳴らしたものともいえそうです。
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解説
分析と打開策ちぐはぐ
「日本経済は新しい成長に向けたステージに入りつつある」―。内閣府が七日に公表した経済財政白書の冒頭で、大田弘子経済財政担当相はこう高らかに宣言しました。しかし、大田氏の宣言とは裏腹に、白書の各論からは、安倍内閣が進める経済「成長戦略」のほころびが随所に見えてきます。
大企業は、バブル期を超える空前の利益を更新し続けています。
白書は、「リストラ」による企業部門の収益回復が「景気回復」の原動力になったとする一方、「正規雇用の減少と非正規雇用の増加が進むなかで家計部門には厳しい影響が及んだ」と分析しています。
「人々の間で景気が回復しているという実感が乏しいとの指摘がある」―。分析だけは家計の実感に沿いながら、その打開策としては「企業部門から家計部門への波及が回復することで、景気回復の実感が高まることが望まれる」と述べるにとどまります。
家計が景気回復を実感するためには、雇用不安をなくし、賃金上昇を促す真剣な政治の取り組みや、自民・公明政治による負担増路線の転換こそ求められます。
大田氏は白書の冒頭で、「優れた人材やイノベーション(技術革新)の力が存分に発揮されれば、人口減少下で成長を持続するという難題をきっと克服できると信じている」と語りました。企業の業績さえ好調であれば、きっと家計も良くなる―。「信じている」方向が間違っていては、景気回復は家計に波及しません。(山田英明)
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