先に,「北川さん等,住金女性差別で勝利和解」と書きましたが,本学Y田先生(法学)より「和解勧告」全文がとどきましたので,以下に紹介します。
和 解 勧 告
21世紀を迎えるにあたって制定された男女共同参画社会基本法は、その前文において、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任を分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現することを21世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置づけている。
雇用の分野では「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(均等法)が成立して、20年余が経過し、平成9年の改正を経て、事業主が、労働者の募集、採用、配置、昇進等において、女性に対する差別的取扱いをすることを禁止し、今さらに間接差別の禁止等を織り込んだ再改正へ向けた努力が続けられている。
そして、男女の真の平等を目指す国内外の取組みや、これらの法整備も踏まえて、男女平等に向けた制度の改善が進展している面も見られ、表面に現れる直接的差別は次第に影をひそめつつあると考えられる。
しかし、他方で、過去の意識に支配された人事制度などが改正され、性中立的システムが構築されたかに見えながら、実際には、賃金処遇等における男女間の格差が適正に是正されたとは言い難い現実があり、真の男女平等を目指す精神が、社会、とりわけ企業内に深く根付いていると楽観することはできない。
このような現実は、真の男女平等に向けた意識改革が十分に深化することなく、均等法等を受けて、表面的な整合性を追い求めることからくるものではないかと思われる。そのような意識改革の遅れが、新たな差別(間接差別や女性を中心とした非正社員化等)を生み出す土壌となることに十分な留意がされるべきであり、企業のみならず、社会においても、意識改革に一層真剣に取り組むことが求められる。
また、少子高齢化社会を迎えて、労働人口の動態にも大きな変化が現れてきており、結婚、妊娠、出産、育児などを家庭内のみの問題としてとらえ、そのような負担を背負っている女性を労働力の面から足枷とみるような意識が支配していた時代は過ぎ去りつつあり、今や真の男女平等を実現することが社会全体の問題として認識される必要もある。
当裁判所は、上記のような諸状況に深く思いをいたし、また、審理の結果を踏まえると、本件においても、上述したような課題が完全には克服されていないと思料するものであり、控訴人のような大企業において、改革へ向けた取組みが進展することは、意識改革を進める上で極めて有益であり、社会的にも大きな意義を有するものと思料し、別紙和解条項に基づいて、当事者双方が和解することを勧告する。
大阪高等裁判所第14民事部
裁判長裁判官 井 垣 敏 生
裁判官 森 野 俊 彦
裁判官 大 島 雅 弘
※なお,和解条項は次の2点だそうです。
1)在籍中の原告3名を含む女性労働者の処遇について十分な配慮を行っていく旨の約定
2)大阪地裁判決を踏まえた合計7600万円の解決金支払い
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