限られた調査ではあるが、それでも実に深刻な生活の実態が明らかとなっている。
5400人のうち半数が日雇い派遣や日雇い雇用で働いている。しかし、主力となる日雇い派遣の場合、平均月収は13万円程度にしかなっていない。
失業者が職を求める場合にも、日払いでなければ生活がつづかない、履歴書に書く住所がないなどの障害にぶつかっている。
緊急の住宅入居支援と、当座の生活費支援が求められている。
他方、重大なのは、これが人件費削減のための意図された政財界の政策が生んだ結果ということ。
政府はそのことへの反省を明確にすべきであり、これ以上、経済界の自己中心主義に手を貸していくべきではない。
ネットカフェ難民5400人 非正規雇用が半数 20歳代26%、50歳代23% 厚労省調査(しんぶん赤旗、8月29日)
厚生労働省は二十八日、住居を失いインターネットカフェなどに常連的に寝泊まりする「ネットカフェ難民」に関する初の実態調査結果を公表しました。それによると、「ネットカフェ難民」と言われる「住居喪失者」は全国で約五千四百人と推計され、約半数の二千七百人が日雇い派遣や日雇い雇用などの非正規雇用で占められていました。失業者と無業者は、約四割の二千二百人に達していました。
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この調査は、日本共産党の小池晃参院議員が三月の国会質問で実態調査と対策を求めてきたもので、厚生労働省が六、七月に実施しました。
「ネットカフェ難民」たちが住まいをなくした主な理由は、仕事を失ったことによります。調査では、「仕事を辞めて家賃等を支払えなくなった」(東京32・6%、大阪17・1%)、「仕事を辞めて寮や住み込み先を出た」(東京20・1%、大阪43・9%)と過半数を占めています。また、年齢別では二十歳代で最多の26・5%、五十歳代は23・1%と高くなっていました。
東京二十三区と大阪市の住居喪失者へのアンケート調査では、非正規労働者の手取りは、東京で平均十一万三千円、このうち日雇い派遣は同十二万八千円でした。
また、同時に公表された事業主(対象十社)を通じての日雇い労働者の実態調査によると、一カ月未満の短期派遣労働者が五万三千人にのぼり、このうち日雇い派遣労働者が五万一千人と、大半を占めていることが明らかになりました。月平均十四日就労し、平均月収は十三万三千円でした。年齢構成は三十五歳未満の若年層が68・8%を占めていました。
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ネットカフェ難民 二十四時間営業のインターネットカフェ、マンガ喫茶で寝泊まりし、日雇い派遣などで不安定な暮らしを強いられる若者を指します。失業をきっかけに住居を失い、そのために就職が困難になるという悪循環にあります。
厚生労働省の今回の調査では、ネットカフェなどで週半分以上寝泊まりする「住居喪失不安定就労者」を「ネットカフェ難民」として推計しています。
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早急な対策必要
小池晃参院議員の話 懸命に働いても住居が確保できない「ネットカフェ難民」は、早急な実態調査と対策が求められており、私も現場調査にもとづいて国会質問で取り上げてきました。
厚生労働省が初の調査を行ったことは、一歩前進です。
調査は、緊急で限定されたものであるとはいえ、住居を失う理由の第一に、失職で家賃が払えなくなる実態が明らかになっており、私たちが参院選で主張した若者への家賃補助などの必要性を裏付けています。
また、短期派遣労働者のなかで日雇い派遣労働者が大半を占めているのは、驚くべき実態です。
「ネットカフェ難民」を生み出している「日雇い派遣」「スポット派遣」に当面、社会保険加入の道を開くとともに、登録型派遣による日雇い型の雇用をなくしていくべきです。
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大半は短期・日雇い
厚労省「ネットカフェ難民」調査
「将来の生活不安」が過半数
厚生労働省の「ネットカフェ難民」への実態調査では、「ネットカフェ難民」を生み出している日雇い派遣労働者の実態が明らかになりました。
日雇い労働者を派遣している事業主への調査によると、対象となったわずか十社の合計で派遣労働者は、一日当たり平均で六万五千人にのぼります。そのうち一カ月未満の短期派遣労働者は五万四千人、日雇いの派遣労働者も五万一千人と大半を占めています。
これらの短期労働者は、携帯電話のサイトなどで募集されており、十社のうち、二社で現住所を確認できなくても、派遣労働の登録ができるとしています。
短期派遣労働者への調査によると、日雇い派遣労働者が84・0%と最も多くなっています。
「ネットカフェ難民」への調査では、九割が男性です。
職種では「建設関係」(東京40・9%、大阪24・0%)が最も多く、東京では「運転・運搬・倉庫関係」(13・5%)、大阪では「製造関係」(20・0%)が続きます。
ネットカフェ以外の寝泊まり場所は、「路上」が約四割。東京では「ファストフード店」(46・1%)、「サウナ」(32・1%)の割合が高く、東京の若年層は「友人の家」(49・4%)も多くなっています。
住居喪失の理由は、仕事を辞めたことによるものが過半数を占め、「家族との関係悪化によって家を出た」(東京13・8%、大阪12・2%)が続きます。
住居を確保するための問題点としては「敷金等の貯蓄の難しさ」(東京66・1%、大阪75・6%)、「安定収入が無いために入居後に家賃を払いつづけられるか不安」(東京37・9%、大阪58・5%)「入居保証人の確保の難しさ」(東京31・3%、大阪24・2%)などがあげられています。
求職活動での問題点は、「日払いでないと生活費が続かない」(東京40・2%、大阪53・7%)、「履歴書に書く住所がない」(東京30・4%、大阪56・1%)が上位です。
平均手取り額は、東京で十万七千円、大阪で八万三千円です。将来への生活の不安を過半数が感じ、「いずれどうにかなる」と思う人は、東京の若年層で28・4%ですが、中高年層では11・9%となっています。
厚労省初の実態調査 “ネットカフェ難民” 放置できない 緊急かつ抜本的な対策を “難民”抜け出せない悪循環(しんぶん赤旗、8月29日)
厚生労働省が二十八日発表した日雇い派遣労働者と“ネットカフェ難民”の実態調査は、深刻な実態を改めて浮き彫りにするとともに、緊急かつ抜本的な対策が求められることを示しています。
日雇い派遣など低賃金の不安定雇用は、ワーキングプア(働く貧困層)の原因となっていると指摘されてきました。
今回の調査でも、日雇い派遣が大半を占める短期派遣労働者の平均月収は十三万三千円。ネットカフェ難民の日雇い派遣の月収も十二万八千円。これでは年収百六十万円にもならず、人間らしい生活などのぞめません。
安定した仕事を探そうにも「日払いの仕事でないと生活費が続かない」と答えており、“難民”になるとなかなか抜け出せない悪循環に陥っていることを示しています。
正社員への就職希望も強く、好んで“難民”になっているわけではない実態も明らかになっています。厚労省は「なくしていかねばならない」(柳沢伯夫前厚労相)といいながら、対策をとっていません。公共住宅あっせんや就労支援など直ちに緊急対策をとることが求められています。
厚労省は、日雇い派遣は学生などによる臨時・一時的な就労も少なくないとして、雇用保険への加入も認めていません。違法派遣で業務停止命令を受けたフルキャストでは、労働者が派遣を受けられなくなっても、日雇い労働者に出るはずの失業手当ももらえません。
学生などが日雇い派遣に就いているのは一割弱しかなく、八割が日雇い派遣で生計をたてていることが明らかになりました。雇用保険の適用を直ちにはかるべきです。
日雇い派遣は、一九九九年に派遣労働が原則自由化されてから急増しました。財界・大企業が正社員を減らし、非正規雇用を増大させるなかで、百万人近い人が日雇い派遣で生計を営んでいるともいわれており、雇用や生活の破壊を食い止めるために抜本的な対策をとることが求められます。
ところが、政府・与党は「労働ビッグバン」と称して、派遣労働者に対する直接雇用の申し込み義務をなくすなど、財界の要求にこたえて労働者派遣法のさらなる改悪をねらっています。
労働政策審議会では、派遣法の「見直し」と称してさらなる規制緩和が浮上しています。これは参院選で示された貧困と格差解消を求める民意にそむくものです。
派遣労働は臨時・一時的な場合に限定し、均等待遇や正社員化をはかること、そのために派遣法を「派遣労働者保護法」に改正するなど、規制緩和の流れを抜本的に切り替えることが求められています。 (深山直人)
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