以下は、新聞のインタビュー仕事のために、 安倍内閣の改造と秋の政治の見通しにかかわりそうな記事をかき集めてみたもの。
それにしても、靖国派主導での改憲と、貧困と格差の拡大を推進する「構造改革」、これを推進するための人事というのは明らかで、選挙結果に対してはまったくの開き直りということである。
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2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082801_01_0.html
改憲・「構造改革」に固執
安倍改造内閣が発足
国民の審判に反省なし
安倍晋三首相は二十七日、自民党役員人事と内閣改造を行い、安倍改造内閣が発足しました。派閥の領袖クラスを重要ポストで処遇し、党内向けには「挙党体制」に配慮する一方、改憲や「構造改革」路線など、参院選で国民の審判を受けた政策課題については、まったく反省の見られない、旧態依然の布陣となっています。
麻生自民幹事長・二階総務会長・石原政調会長
自民党の新三役には、幹事長に麻生太郎前外相、総務会長に二階俊博前党国対委員長、政調会長に石原伸晃前党幹事長代理を任命。安倍首相に近く、続投をいち早く支持した人物で固めました。
内閣改造では、十七人の閣僚のうち七人が初入閣。五人が再入閣で、五人が留任しました。女性閣僚は二人です。
内閣の要となる官房長官には、「仲良し官邸団」などと批判の的になっていた塩崎恭久氏にかわり、経済財政担当相や党政調会長、官房副長官などを歴任してきた与謝野馨氏を充てました。与謝野氏は、自民党の新憲法制定推進本部事務総長として、党新憲法草案をとりまとめた“実績”があり、幹事長に起用された麻生氏とあわせ、党と内閣の中枢を改憲派が押さえた形です。
首相が看板にしている「教育再生」についても、伊吹文明氏を文科相に、山谷えり子氏を教育再生担当首相補佐官にそれぞれ留任させ、継続姿勢を鮮明にしました。
民間から岩手県前知事の増田寛也氏を地方都市格差是正担当として入閣させたものの、甘利明経済産業相、大田弘子経済財政担当相、渡辺喜美行革担当相は、それぞれ留任。貧困と格差をひろげ、参院選での自民党大敗の要因となった「構造改革」路線を継続する布陣を敷きました。
町村派から町村信孝氏(外相)、高村派から高村正彦氏(防衛相)、津島派から額賀福志郎氏(財務相)ら、派閥の領袖クラスが入閣。全体として派閥均衡型の組閣となりましたが、谷垣派からの入閣はありませんでした。
安倍改造内閣の顔ぶれ 2007年8月27日
総務相は、地方都市格差是正、道州制、郵政民営化も担当。国土交通相は、観光立国、海洋政策も担当。国家公安・防災担当相は、食品安全も担当。沖縄北方担当相は、国民生活、科学技術政策、再チャレンジ、規制改革も担当。金融担当相は、公務員制度改革も担当。
総理 安倍 晋三
あべしんぞう 52 元町村派
総務地方分権 増田 寛也
ますだひろや 55 民間 初
法務 鳩山 邦夫
はとやまくにお 58 津島派 再
外務 町村 信孝
まちむらのぶたか 62 町村派 再
財務 額賀 福志郎
ぬかがふくしろう 63 津島派 再
文部科学 伊吹 文明
いぶきぶんめい 69 伊吹派 留
厚生労働 舛添 要一
ますぞえよういち 58 無派閥(参院) 初
農林水産 遠藤 武彦
えんどうたけひこ 68 山崎派 初
経済産業 甘利 明
あまりあきら 58 山崎派 留
国土交通 冬柴 鉄三
ふゆしばてつぞう 71 公明 留
環境 鴨下 一郎
かもしたいちろう 58 津島派 初
官房長官
拉致問題 与謝野 馨
よさのかおる 69 無派閥 再
国家公安
防災 泉 信也
いずみしんや 70 二階派(参院) 初
防衛 高村 正彦
こうむらまさひこ 65 高村派 再
沖縄北方 岸田 文雄
きしだふみお 50 古賀派 初
金融
行政改革 渡辺 喜美
わたなべよしみ 55 無派閥 留
経済財政 大田 弘子
おおたひろこ 53 民間 留
少子化男女共同参画 上川 陽子
かみかわようこ 54 古賀派 初
(初=初入閣、再=再入閣、留=留任)
2007年8月29日(水)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-29/2007082902_02_0.html
安倍改造内閣
タカ重用 世界警戒
海外メディアは安倍晋三首相が二十七日の内閣改造や与党・自民党の役員人事で要所に右翼的、「タカ派」の顔ぶれを集めたことに強い警戒心を示し、今後の対アジア外交の行方を注視しています。
支持回復「未知数」 中国
【北京=山田俊英】人民日報は「国際論壇」で、「安倍首相は内閣支持率の低迷で総選挙に打って出る勇気がない。そのため力を蓄えて時機をうかがうことにした」と背景を説明。「内閣支持率が回復しなければ、安倍首相は自民党内の政権継続反対の声を放っておくわけにいかなくなる」が、「内閣大改造で危機を打開できるか未知数だ」と論評しました。
新華社通信も「国際観察」で、「彼ら(新閣僚)が安倍政権の『強心剤』になれるか未知数だ」と論じました。同電は、参議院で劣勢に追い込まれた状況からすると「新内閣は薄氷を踏むようなものだ」と指摘しました。
また、安倍首相が掲げる「美しい国づくり」「戦後レジームからの脱却」「憲法改正」は「民生問題に関心を持つ民衆を引きつけられなかった」と分析。「新内閣が挫折すれば、自民党内で安倍首相の責任を追及する声はさらに高まる」として「日本の政局は大激動の可能性がある」と述べました。
香港でも強い批判
香港ATVテレビ(英語)は二十八日朝のニュースで、「安倍首相の内閣改造と自民党役員人事では、『タカ派』が中心的なポストを占めたとの声が出ている」と報道。
ATVのニュースは、「たいへんなタカ派」町村氏の外相指名について、「町村氏は中国にたいし歴史博物館の展示を見直すよう求めている。彼はこれらの展示が第二次世界大戦での日本をゆがめていると主張する」と指摘。新財務相の額賀元防衛庁長官は昨年六月、北朝鮮のミサイル発射実験直後に、日本は海外の基地にたいする軍事的攻撃能力を高めるべきだとのべたと紹介しました。
同じく香港紙・明報二十八日付も、町村新外相が文部科学相だった一九九八年に「歴史を改ざんする右翼出版社の歴史教科書」の検定を合格としたり、高村防衛相は「対北朝鮮強硬派である」と指摘。麻生・自民党新幹事長は、「日本のタカ派の代表的人物の一人で、親米、対中国強硬派。右翼的発言を繰り返し、侵略の歴史を美化している」と批判しています。
英紙が日中関係注目
英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)二十八日付は、「博物館から『反日展示物』の撤去を中国に要求してきた」町村外相のもとで「改善された中国との関係維持」ができるかどうかに注目しています。
「町村外相」に波紋 韓国
二十八日付の韓国各紙は、安倍改造内閣に町村信孝外相が入閣したことに強い警戒感を示しています。
中央日報は「小泉政権で外相を務めた当時、歴史教科書問題などで韓日関係において相当に右派的な傾向を見せた人物」だと指摘。京郷新聞は、町村氏が「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史わい曲教科書を検定合格させた人物だとして、「韓日教科書紛争を引き起こした張本人」であり、小泉首相の靖国神社参拝も積極的に支持してきたと報じました。
韓国日報は、「町村氏の外相復帰に韓国などの隣国は神経をとがらせている」とし、前回の外相時代に首相の靖国参拝を支持し、南京大虐殺を疑問視する文章を外務省ホームページに掲載したことをあげて、「過去の歴史をわい曲、美化する言行で波紋を起こした」と批判しました。
ハンギョレ紙は、自民党幹事長に就任した麻生太郎氏についても、「創氏改名は朝鮮人が望んだ」といった暴言によって韓国で知られている人物だと伝えています。
批判に逃げの一手 ドイツ
安倍内閣改造について、ドイツの海外向け公共放送ドイチェ・ウェレは二十七日の電子版で、批判をかわす「逃げの一手」と報道しました。
同放送は内閣改造で町村氏や高村氏など、人気があった小泉首相のときに任命された「古い顔が主要なポストを占め」「麻生前外相が自由民主党の幹事長になった」と古さを強調して伝えました。
ドイチェ・ウェレは安倍首相が参院選挙で大敗し、世論調査で支持率が約20%に低下したのは相次ぐ「政治とカネ」のスキャンダルで閣僚が三人も辞職し、年金問題での失敗が国民を怒らせたからだとし、安倍首相は内閣改造で批判をかわす「逃げの一手を打ったと評論家はみている」と報じました。
2007年8月29日(水)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-29/2007082904_01_0.html
CS放送「各党はいま」
志位委員長が語る
どうみる安倍「改造」内閣、どうのぞむ秋の臨時国会
日本共産党の志位和夫委員長は二十八日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、安倍改造内閣をどう見るか、秋の臨時国会にどうのぞむかについて、朝日新聞の坪井ゆづる論説委員の質問に答えました。その要旨は次の通りです。
――改造内閣の印象は。
志位 「人心一新」で改造をやられたということですが、任命権者の安倍首相本人が居座ったままですから、一新のイメージはまったくありません。一新されるべき人が任命したわけですから、どんな顔ぶれを並べてみても、そこには新味もなければ、期待感もでてきません。
全体の布陣をみれば、改憲、タカ派志向の強い人たちを配置したという印象です。私たちは、前の安倍内閣の発足の際に、「靖国」派内閣と命名しました。すなわち、靖国神社のとっている立場、過去の日本の戦争は正しい戦争だったという間違った立場を共有する人たちが圧倒的多数を占めているという問題点を指摘しました。今度の内閣も、私たちが数えたところでは、首相を含め閣僚十八人のうち、「靖国」派、すなわち日本会議議連、あるいはその関連団体に属している人が十二人です。基本的に改憲・タカ派、「靖国」派内閣という点は変わらず、前の体質を引きずっていると思います。
もう一ついうと、「政治とカネ」であれだけ厳しく批判されたにもかかわらず、文部科学大臣に伊吹さんを留任させています。伊吹さんは事務所費問題でまともに説明していないわけですね。きちんと領収書も明らかにさせることなく、こういう方を留任させるということは、国民の審判に対する挑戦です。
――安倍さんの責任が問われてくると。
志位 今度の選挙で、国民は自公政治に二重の審判を下したと思います。
一つは「構造改革」路線という、弱肉強食で貧困と格差を拡大してきた路線にノーという審判が下された。
もう一つは、「戦後レジームからの脱却」、「美しい国」づくりをスローガンにして、「靖国」派のイデオロギーを押しつけ、改憲を最優先課題としてきましたが、これにノーという審判が下された。
この両方の審判を受けたのに、少しでもまともな方向に変わろうとうかがわせる陣容はどこにもありません。この問題については、安倍首相自身が、“基本路線は支持された”といっているのですから、変わりようがないということになりますが。
テロ特措法延長問題―「対テロ」戦争の六年間の全面的検証を
――秋の臨時国会をどう見ていますか。
志位 与党はテロ特措法の延長を最大の課題としていますが、特措法による約六年間の「対テロ」戦争支援なるものが何をもたらしたかの総決算をおこない、きっぱりと延長をやめさせることが一つの大きな問題となります。
国際的な司法と警察によるテロリストの捜索と捕捉という努力を尽くすことなしに、アメリカは報復戦争という手段に訴えた。このやり方自体が間違いであり、国連憲章の精神も踏みにじっているという問題が、戦争の初めからあったわけです。
その結果、アフガニスタンがどうなっているかの全面的な検証が必要です。一昨年、昨年と状況がずっと悪化して、南部やパキスタン国境地帯でタリバンが復活する。それにたいし米軍を中心に軍事掃討作戦をやる。民間人の死者がますます増える。そこでさらにタリバンが影響力を増やすという悪循環が広がっています。米英軍などの死者が増え、民間人の死者も増え、結局、戦争ではテロはなくならないということが結論です。その戦争を支援する法律がテロ特措法ですから、きちんとした検証のうえにたって、やめるという判断をすべきです。
しかも、実際はアフガンだけではなくて、イラク戦争をおこなっているアメリカ軍の艦船にも給油活動をやっているということが明らかになっています。米軍としてはイラク戦争もアフガン戦争も中央軍が一体となってやっており、そこに給油しているわけですから、アフガンだけでなくイラク戦争にも使われているのです。脱法的な運用がおこなわれていることもきちんと明らかにする必要があります。
テロの根をたついちばんの道は
――アメリカ側からは、やめてもらったら困るという声が聞こえますが。
志位 アメリカによる「対テロ」戦争というやり方自体が失敗だったことを六年間が証明しているわけです。戦争ではテロはなくならない、テロをなくすには国際的な司法と警察の力により犯人を捕捉、逮捕することが必要であり、同時に、テロの温床である貧困を国際的な努力でなくしていくことも必要です。そういう非軍事の方法でこそ、本当にテロの根を断つことができるということが一番重要な教訓です。
アメリカを含めてアフガンに軍隊を展開している国の世論調査では、「軍事掃討作戦は失敗だからひきあげるべきだ」という声が多数となっています。世界を見れば、もともと軍事行動に参加していない国の方が圧倒的多数なんですから。
日米同盟という根本問題を正面から問う
志位 さらに、この問題では、日米同盟という問題を正面から問うていきたいと思います。いまどき軍事同盟が絶対で、とくにアメリカが絶対などという国が世界にあるのか。世界で軍事同盟が解体あるいは機能不全の傾向にあるときに、日本だけが、「世界の中の日米同盟」ということで、世界のどこででもアメリカにつきしたがうという軍事同盟体制を二十一世紀も続けていいのか。この根本問題を私たちは提起していきたいと思います。
――臨時国会での他のテーマは。
志位 参院選で争点となった問題について大いに提起していきたいと思います。国民の暮らしを守るという点では「緊急福祉1兆円プラン」を提案しました。その実現をめざしたい。障害者「自立」支援法の応益負担をもとに戻す問題や、来年に計画されている児童扶養手当の削減計画を中止させる問題など、国民の切実な暮らしを守る公約実現の活動を大いにやっていきたいと思います。
「三つの異常」をただす本物の改革のビジョンを大いに示して
志位 もう一つ、国会で日本共産党がめざす日本改革のビジョンを大きく打ち出して、政治の根本の問題点をつく論戦を重視したいと思います。
私たちは日本の政治には「三つの異常」があると主張してきました。
一つは、過去の侵略戦争を正当化する異常で、「従軍慰安婦」の問題とか、歴史をゆがめる教科書問題とかさまざまな形で出ています。
二つ目は、日米同盟絶対、異常なアメリカいいなりという国のあり方の問題です。
三つ目は、財界・大企業の横暴勝手がこんなにまかり通る経済社会でいいのか。たとえば税金の問題では、財界・大企業、大金持ちにたいするいき過ぎた減税を放置したままでいいのかという問題です。
この「三つの異常」をただす本物の改革が必要です。自公政権については「ノー」という審判が下ったわけですが、それではどういう日本が求められているのか、われわれとしてのビジョンを大きく打ち出して、「三つの異常」をただしていく本物の日本改革をやろうじゃないかという大きな論戦をやっていきたいと思います。
「三つの異常」をただせといえるのは日本共産党だけです。それを大いに示し、わが党の役割を発揮していきたい。いまの政治の行き詰まりを打開しようと思えば、「三つの異常」にメスを入れる改革をやらないと出口はありません。私たちが大いに奮闘すれば、国民の認識と共産党の主張が接近していくという可能性、必然性が大いにあると思っています。
2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082801_03_0.html
安倍改造内閣が発足
市田書記局長が記者会見
日本共産党の市田忠義書記局長は二十七日、国会内で記者会見し、同日発足した安倍改造内閣について、次のように述べました。
◇
「人心一新」と安倍首相自身がいいましたが、一新されるべき張本人がそのまま居座って、役員人事、閣僚人事が一新されるわけがないわけで、それ自体が根本的矛盾といえます。内閣の顔ぶれをみても旧態依然で、要所要所に右翼的、タカ派的で、憲法を変える立場にある人ばかりを寄せ集め、かき集めた内閣という気がします。
自民党が参院選で大敗した根本には、貧困と格差をいっそう拡大した「構造改革」路線、そして「戦後レジームからの脱却」といって戦後日本の原点である憲法や平和や民主主義から「脱却」するという、自公政権の基本路線そのものへの国民の厳しい審判がありました。しかしそこへの反省がなく、「人心一新」といいながら、一新されるべき人が一新されないで居座っているのが全体の状況です。
私たちは、参院選で示された有権者の審判に応えて、選挙でかかげた公約の実現めざして日本共産党ならではの論戦を展開し、真正面から安倍内閣と対決していきたいと思います。
2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082802_03_0.html
内閣改造・自民党役員人事
「構造改革」推進・侵略戦争正当化
どこが「人心一新」なのか
安倍晋三首相が二十七日に行った内閣改造・自民党役員人事は、七月の参院選惨敗を受けて「反省すべき点は反省をしながら、人心を一新せよというのが国民の声だ」という首相の身勝手な解釈が出発点でした。自らは「人心一新」に含めず早々と続投を宣言し国民に「反省」を口にしました。さぞ参院選の民意を踏まえた布陣が示されるのかと思ったら、まったく違いました。
新鮮味はなし
十七人の閣僚中、文部科学相、経済産業相、国土交通相、行政改革相、経済財政相の五人が留任。他の閣僚も小泉政権や党幹部として弱肉強食の「構造改革」路線を推進し、社会保障を切り捨てたり、アメリカ言いなりの日米同盟を強化してきた当事者がポストを違えてまたぞろ顔をそろえたのです。新鮮味も何もありません。
財務相、文科相、防衛相のポストには安倍首相の出身派閥・町村派と違う派閥会長ら領袖クラスが就きました。党幹事長と総務会長も同じです。昨年九月の組閣で安倍首相が自らの立場に近い人脈で閣僚を固めたことから「論功行賞人事」「お友だち内閣」と揶揄(やゆ)され続けたことを意識した布陣がありありです。
安倍首相にとっては「挙党態勢」「重厚内閣」とすることで与党に参院選惨敗の反省をみせたつもりなのでしょうが、国民向けには何ら反省していません。
参院選で国民が示したものは何だったのか。
「消えた年金」問題や「政治とカネ」のスキャンダル、相次ぐ閣僚の暴言にとどまらず、小泉政権から続く「構造改革」路線による国民の暮らし破壊、貧困と格差の拡大をもたらした政治に対する深い怒りです。また、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を旗印として、侵略戦争に無反省なまま、憲法改定を政権公約の第一に掲げた安倍政権の危うさに対する国民の強い警鐘です。自民党自身、参院選総括で「構造改革の推進でもはや地方が耐えられなくなっている」「国民意識とズレてはいなかったか」と認めています。
ところが、「構造改革」路線推進の主要ポストである経済財政担当相、行革担当相、経済産業相を留任させたのです。大田弘子経財担当相が就任会見で「経済財政諮問会議の重要性はいささかも変わらないし、改革に停滞は許されない」と述べたことは、選挙で下された民意への無反省ぶりを象徴しています。
国民より米国
侵略戦争を正当化する問題でも改造内閣は、安倍首相を含め十八人のうち九人が、改憲・右翼団体の日本会議と連携する日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)に所属。同議連のもとにつくられた「教育基本法改正促進委員会」の役員も三人います。党幹事長に日本会議議連の特別顧問で前会長の麻生太郎前外相を起用したことも、改造内閣がいかに侵略戦争に無反省なのかを物語っています。
安倍首相は、高村正彦元外相の防衛相の任命にあたって、「テロ特措法の期限延長、在日米軍再編についてしっかり取り組んでほしい」と強調しました。町村信孝外相は「日米同盟がわが国の国際関係の基軸だ。日米関係の基礎を固めていく」と語りました。
国民の暮らしには目を向けず、改憲路線にしがみつき、アメリカのメガネでしかみない政治です。自らの悪政に「反省」もできない安倍改造内閣・自民党に未来はありません。(高柳幸雄)
2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082803_01_0.html
安倍改造内閣
顔ぶれから見えるもの
参院選での歴史的大敗を受けて「人心一新」を掲げた安倍晋三首相の内閣改造。しかし、本来退陣すべき首相が居座ったがために、国民の審判になんら応えない、清新さも何もない顔ぶれとなりました。
中枢に改憲派ずらり
憲法改悪
自民党が参院選公約のトップに二〇一〇年の改憲発議を掲げながら、参院選で歴史的大敗を喫したことは、改憲を中心とした安倍首相の「戦後レジーム(体制)からの脱却」に、国民が「ノー」の審判を示したものでした。
ところが、今回の組閣では、改憲と侵略戦争正当化を主張する「靖国」派の日本会議国会議員懇談会の特別顧問を務める麻生太郎氏を党運営の中心である幹事長に起用。内閣の中枢にも自民党新憲法草案をまとめた与謝野馨官房長官など改憲派を多数すえるなど、「戦後レジームからの脱却」に反省の色はありません。
また、安倍首相を含め十八人の閣僚のうち十二人が日本会議国会議員懇談会など「靖国」派議連に所属。教育再生担当首相補佐官には安倍首相の盟友・山谷えり子参院議員が留任しました。侵略戦争を正当化し、戦前の秩序の復活を目指す「美しい国」路線に固執する姿勢も明瞭(めいりょう)です。
参院選での惨敗を受け、政局対応と総選挙へ向けた挙党体制づくりの要となる幹事長には、党内から「野党との付き合いが薄く、少数派閥の麻生氏には荷が重い」という声も出ていました。しかし、この間、「安倍カラー」を前面に押し出す“政権運営”で、首相が「最も信頼」してきたとされる盟友・麻生氏の起用にこだわったのです。
改憲推進という点でも麻生幹事長が“要”です。改憲手続き法が成立した段階で、世論に挑戦して政党レベルの改憲論議を本格化させる狙いがあります。
舛添要一厚労相は自民党新憲法草案作りで与謝野氏を補佐し、現在も改憲手続き法の成立を受け新たに党内に設置された憲法審議会の会長代行です。
また、十七人の閣僚のうち五人が今年三月に中曽根康弘元首相を会長として結成された「新憲法制定議員同盟」の役員を務めています。
消費税増税派が増加
「改革」格差
「成長を実感に」を掲げ、「構造改革」のスピードアップを参院選で訴えて大敗した安倍内閣は、「改革」に関係する甘利明経済産業相、大田弘子経済財政担当相、渡辺喜美金融・行革相ら閣僚を軒並み留任させました。
参院選結果が示したのは、増税や社会保障改悪など、貧困と格差を助長する悪政を推進してきた自民・公明連立政権への国民の審判でした。
しかし、留任した閣僚の顔ぶれを見るかぎり、安倍首相がみずから掲げる「改革」に反省すべき点がなかったと考えていることは明りょうです。党役員の方でも、石原伸晃政調会長が、「規制改革や構造改革は決して否定されたわけではない」とのべました。
自民・公明政権がめざす「構造改革」の内容を示すのは、今年六月に閣議で了承された「骨太の方針2007」です。その中心は「成長力の強化」「歳出削減」で、今後五年間で社会保障関係費の伸びを国と地方の合計で約一・六兆円抑制することを明記。地方を除く国の分だけで医療や介護、生活保護などの自然増分を毎年二千二百億円ずつ抑制していく計画です。
留任した大田経済財政担当相は参院選後の七月三十一日の記者会見で「困難があっても(歳出改革方針を)守っていく」と表明。就任後の会見でも「改革に停滞は許されない」とのべるなど、方針を変えることは一切考えていません。
また、参院選での大敗を受け、消費税増税の先送りの議論もある一方で、安倍内閣には、新たに与謝野馨官房長官や額賀福志郎財務相ら消費税増税論者が増えました。額賀財務相は、就任会見でさっそく「消費税を含めた形で、いろんな議論をしていくことは結構なことだ」とのべました。
安倍改造内閣が、「歳出削減」に集中的にとりくむ構えをみせながら、消費税増税についてどのような判断を下すのか。厳しく問われています。
同盟強化推進の“実績”
日米関係
安倍新内閣にとって九月から始まる臨時国会での最重要課題は、十一月一日に期限切れを迎えるテロ特措法の延長問題です。「対テロ」戦争を口実に、米軍支援のため海上自衛隊の補給艦などを五年九カ月もの長期にわたってインド洋に派兵している根拠法です。
新内閣の防衛相、外相の顔ぶれをみると、日米同盟強化で“実績”を重ねてきた閣僚経験者を据え、米国の延長要求になんとしても応えようとする布陣になっています。
防衛相になった高村正彦氏は、小渕内閣の外相としてアジア太平洋地域での米国の戦争に参戦する周辺事態法(一九九九年)を成立させました。
イラク戦争では、開戦前の段階から「日本は支持する以外の選択肢は考えられない」(二〇〇三年三月二日)と主張。米国が開戦を強行した三月二十日には「最後の手段としてアメリカの下した判断に対し、理解し支持する」(衆院本会議)と表明しました。イラク特措法を強行した特別委員会の委員長も務めました。
外相に就任した町村信孝氏は、小泉内閣時代にも外相を務め、関係自治体・住民が強く反対している在日米軍再編の日米文書(〇五年十月)を合意し、推進してきた当事者です。
また、米兵に性暴力を受けた女性の「一日も早く基地をなくして」という訴えに対し、町村氏は「米軍あるいは自衛隊があるからこそ日本は平和」と真っ向から反論(〇五年七月)。同県にある沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故の際にも「(米兵は)操縦技術が上手だったのかもしれないが、よく最小の被害でとどまった」(〇四年十月)と発言し、いずれも県民から強い非難を浴びました。
両氏に共通しているのは、国民世論に逆らっても、あくまで米国を擁護してきた“実績”―。こうした姿勢で、テロ特措法延長や在日米軍再編を強行すれば、国民からのいっそうの批判は避けられません。
2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082802_01_0.html
主張
安倍改造内閣
国民の審判受け止めていない
「空気が読めない」から、その頭文字をとって「KY」―最近の若者言葉です。参院選での大敗にもかかわらず居座りを続ける安倍晋三首相もそう呼ばれてきました。その首相が選挙後一カ月にしておこなった内閣改造と党役員人事は、この政権が国民の審判をまともに受け止めていないことを浮き彫りにしました。
安倍首相は参院選後、「反省すべきは反省する」と繰り返してきました。しかし、自らの居座りに加え、この人事では、安倍首相には国民が何に審判を下したのか、何を反省すべきかが、まったくわかっていません。
中枢を占める「靖国」派
安倍政権は発足以来、内閣・党の中枢を侵略戦争肯定の「靖国」派で固め、小泉純一郎政権以来の「構造改革」路線を継承するとともに、「美しい国」づくりや「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げて、改憲路線をひた走ってきました。
参院選挙での自民惨敗も、「消えた」年金問題や閣僚の失言だけでなく、弱肉強食の「構造改革」路線と、「美しい国」を旗印にした改憲路線の押し付けに、国民が「ノー」の審判を下したためです。このことは、参院選での大敗後も安倍首相が居座っていることに、内閣支持率が下落を続けていることでも明らかです。
国民の審判を受け止めるなら辞めてしかるべき安倍首相がおこなった改造人事ですから、そこに国民が評価できるものがないのは当然ですが、それにしても、今度の人事はひどすぎます。
党役員人事で、辞任した中川秀直氏に代わって幹事長に就任したのは外相から横滑りした麻生太郎氏です。麻生氏や政調会長に就任した石原伸晃氏はいずれも首相の盟友で、総務会長の二階俊博氏も首相の居座りを支持してきました。自らの出身派閥である町村派会長の町村信孝氏や高村派会長の高村正彦氏、ベテランの与謝野馨氏、額賀福志郎氏なども入閣させ、文字通り「かきあつめ」と「寄せ集め」で体制を強化しました。これでどうして「人心一新」などといえるでしょうか。
変わらないのは内閣・党の要所を改憲タカ派や「靖国」派で固めたことです。麻生幹事長は、「靖国」派の団体、日本会議国会議員懇談会の特別顧問を務める「靖国」派の代表格です。外相に就任した町村氏や防衛相に就任した高村氏も改憲タカ派です。与謝野官房長官や額賀財務相、留任した伊吹文明氏、渡辺喜美氏らも「靖国」派の議員連盟のメンバーです。まさに、国民の審判にそむいて、改憲路線を突き進むための布陣というほかありません。
「構造改革」路線を担当する閣僚も、ほとんどが留任あるいはベテランの起用です。あきれたのは、「バカ大臣はけじめを」「安倍さんがやめないとは驚きだ」などと、選挙中からさかんに首相を批判してみせていた舛添要一参院議員まで、厚生労働相として閣内に取り込んだことです。「構造改革」路線を強行していくためのなりふり構わぬ姿です。
居座りと巻き返し許さず
内閣改造を受け、九月からは臨時国会が始まります。焦点となるテロ特措法の延長案などの審議も始まります。「構造改革」路線の継続が焦点になる、来年度予算編成の作業も本格化します。
安倍改造内閣とその与党に国民が期待できるものはありません。参院選挙で示された国民の審判を踏まえ、安倍首相の政権への居座りと、国民の審判に逆らった巻き返しを許さないことが、いよいよ大事です。
2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082802_02_0.html
各閣僚、消費税に言及
額賀財務相「真正面から議論」
二十七日の新閣僚の記者会見では、記者の質問に答えて、消費税について言及する大臣が相次ぎました。
秋の抜本税制改革論議について問われるなかで、額賀福志郎財務相は、「消費税を含めた形で、いろんな議論をしていくことは結構なことだ」と強調。「国民の基礎年金の負担についてどうしていくか、議論をしていかなければならない」「真正面からきっちりと逃げないで議論して安定した財源確保のために努力をしていく必要がある」と述べました。
与謝野馨官房長官も、「社会保障制度を維持していくためには、どうしなければならないのかという問題もある」と指摘。「総合的な観点に立って、消費税だけでなく、法人税、所得税その他の税制をふくめて抜本的な議論をしていただきたい」とのべました。
舛添要一厚労相は、基礎年金の財源問題について「もう少しちょっといろいろ検討してみたい」と発言。「すぐに税金に財源を求めるんじゃなくて、厚生医療行政というのは、知恵を働かせる(べきだ)」などと語ったものの、「それから先に増税という話になる」とのべました。
2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082804_01_0.html
自民党の新幹事長 麻生氏の暴言録
“創氏改名 朝鮮人の要求”
“高齢者 迷惑するくらい元気”
新しく自民党幹事長になった麻生太郎氏は、数々の暴言を繰り返し、国内外から厳しく批判されてきました。主な暴言をみてみました。
改憲・軍拡
「自衛隊(の存在)はみんなが認めている。日本は戦力を保持しないといっても、外国は理解できない。憲法九条二項を『陸海空自衛隊、これを置く』と置き換えればいい。憲法『改正』でなく『修正』が第一歩だ」(01年4月14日、時事通信社などとのインタビュー)
集団的自衛権をめぐる政府見解について「権利はあるが使ってはいけない、というのは無理がある。世界中で認められていない国はない」。(01年11月4日、学習院大学で講演)
「周辺事態」で海上自衛隊艦艇が支援中の米艦へ攻撃があった際、「日本が逃げるというのは、同盟関係でいかがなものか」と述べ、応戦も認められるべきだと見解。(06年10月27日の衆院外務委員会)
「核武装」をめぐる議論について「いろんなものを検討したうえで持たないというのも一つの選択肢だ」と核武装の議論を否定せず。(06年10月17日の衆院安全保障委員会)
日本の核武装に関する質問に対し「安さだけでいったら、核(武装)の方がはるかに安い」「ミサイル防衛(MD)の技術はこの十年で恐ろしく進歩した。日本が専守防衛をやるなら、MDを徹底してやった方がいい」。(03年5月31日、東京大学で講演)
北朝鮮のミサイル発射について、朝鮮労働党の金正日総書記に「感謝しないといけないかもしれない」。(06年7月8日、広島市内の講演)
靖国・歴史観
「遊就館には何度か行ったことがあるが、戦争を美化するという感じではなく、その当時をありのままに伝えているというだけの話だ」(05年11月21日に出演した米通信社ブルームバーグ・テレビの番組でインタビュー)
「(靖国神社に)祭られている英霊は、天皇陛下万歳といった。天皇陛下の参拝が一番だ」(06年1月28日)
小泉純一郎首相の靖国参拝について「祖国のために尊い命を投げ出した人たちを奉り、感謝と敬意をささげるのは当然。首相としても簡単に譲るわけにはいかないと思う」と支持。(05年11月13日、鳥取県湯梨浜町で講演)
「『大変だ、大変だ』と言って靖国の話をするのは基本的に中国と韓国、世界百九十一カ国で二カ国だけだ」(05年11月26日、金沢市内の講演)
「創氏改名は、朝鮮人の人たちが『名字をくれ』と言ったのが始まり」と事実をねじ曲げる。(03年5月31日、東京大学で講演)
消費税増税
「一連の構造改革を支えていくために税構造を抜本的に変えるなど、直間比率の見直しなどを含めた税制改正を行う」と発言。党税制調査会での議論に、消費税増税も検討課題にすることを示す。(02年1月19日、自民党大会)
「基本的には、直間比率を見直さないといけない。(消費税の比率を増やす)広く薄く、が正しい」(03年1月7日、自民党本部で会見)
偏見・暴言
「高齢者の85%は周りが迷惑するくらい元気だ」(06年9月14日、自民総裁選街頭演説会)
「六十五歳以上で寝たきり老人や、要介護老人はたった13%。87%は、周りが迷惑するくらい元気が良い。しかも(お金を)持っとる」(07年1月19日、愛知県春日井市で講演)
「消えた年金」五千万件の突き合わせで年金受給者は「もっともらえるかもしれない。こらぁ欲の話だろうが。それが、何も、いまあせって電話することない」。(07年7月12日、兵庫県姫路市で街頭演説)
「七万八千円と一万六千円はどっちが高いか。アルツハイマーの人でも分かる」などと日本のコメが中国で日本国内よりも高値で流通していることを例に、農産物の輸出を奨励。(07年7月19日、富山県高岡市で講演)
「独断と偏見だが、金持ちのユダヤ人が住みたくなる国が一番いい国じゃないか」「ユダヤ人と挙げて気に入らなければ、アルメニア人でも華僑でもいい。少なくとも日本人の中では(反発は)考えられないと思う」 (01年4月19日、東京都内の日本外国特派員協会で講演)
2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-28/2007082815_01_0.html
安倍改造政権 「政治とカネ」を洗う
問題献金は変わらず
「再チャレンジ」安倍改造内閣
事務所費問題や失言などで閣僚四人が相次いで交代した安倍内閣の顔触れが一新しました。二十七日発足の改造内閣。参院選で「ノー」を突き付けた多くの国民の声をよそに、続投を選んだ首相の「再チャレンジ」。しかし、「政治とカネ」をめぐる問題は引き続き噴出しています。
先物業界から4000万円
与謝野官房長官
安倍改造内閣の官房長官に就任した与謝野馨氏(衆院東京1区)が、「必ずもうかる」などの強引な勧誘で被害が続いている商品先物業界から、六年間で約四千万円の資金提供を受けていることがわかりました。
商品先物取引は投機性が非常に高く、知識のない一般の消費者にとってはリスクが高い取引です。年金生活の高齢者などが業者から「必ず値上がりする」と勧誘され、数百万―一千万円単位の損失を被るなどの被害が多数報告されています。
与謝野氏の資金管理団体「駿山会」の政治資金収支報告書(二〇〇三―〇五年)によると、同会は先物業界の政治団体「政経政策研究会」からほぼ毎月二十五万円ずつ、三年間で計八百五十万円の寄付を受けています。そのほか、〇四年には政経政策研究会と別の業界団体「平成の会」が、与謝野氏の政治資金パーティー券をそれぞれ六十万円分、購入しています。〇〇年から〇五年までの資金提供は合計三千九百五十万円にのぼります。
先物取引をめぐっては、〇五年の法改正などで業者に対する規制が強化されましたが、東京先物証券被害研究会事務局長の宮城朗弁護士は「現場の実感としては、まだまだ相談件数は多い」と話します。〇五年十一月には、大手グローバリーの社長ら幹部四人が、商品取引所法違反の疑いで逮捕されています。
談合企業から受領
冬柴国交相
安倍改造内閣で国土交通相に留任した公明党の冬柴鉄三氏の資金管理団体などが、大阪府枚方市の官製談合事件で社長が逮捕された建設会社から献金を受けていたことが二十七日分かりました。
公共事業で巨額予算を預かる国土交通省の担当大臣が、公共工事で不正を働いた業者から献金を受けていたことは問題です。
献金を受けていたのは、冬柴氏の資金管理団体「冬柴政経懇話会」と、同氏が代表の「公明党衆議院小選挙区兵庫第8総支部」。大阪府枚方市発注の清掃工場建設をめぐる官製談合・汚職事件で、談合の共犯容疑で社長が逮捕された兵庫県西宮市の建設会社から、合計三十万円の献金を受けていました。
兵庫県の公報などによると、献金は〇五―〇六年に計二十万円が建設会社社長名義で、また〇三年に十万円が建設会社名義で行われていました。 同氏事務所も「間違いない」と事実を認めています。
同氏は社長が逮捕された後の今年六月、献金を返還。その後、政治資金収支報告書を修正しています。
http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070828/shs070828002.htm
【内閣改造 土俵際の再出発】(上)意中の候補、次々断念(産経新聞、8月28日)
「国民の厳しい声を真摯(しんし)に受け止め、美しい国作りを再スタートさせるため本日改造を行った」
27日午後9時すぎ。首相官邸で記者会見した首相、安倍晋三は格差問題などに応えるために重厚な布陣を敷いたことに理解を求めたが、疲労の色がにじみ、声は張りを失っていた。参院選敗北により参院で少数与党となり、与党にも退陣要求がくすぶる中での内閣改造・党役員人事が、いかに苦悶(くもん)に満ちたものだったか。順風満帆で政権を発足させた11カ月前にこのような事態を誰が想像しただろうか。
内閣支持率を回復させるには新鮮で特色ある顔ぶれ、党をまとめるには重厚でバランスの取れた布陣が必要だ。野党の攻勢を考えると「政治とカネ」疑惑やスキャンダルは禁物となる。
安倍は内閣情報調査室などに閣僚候補者の入念な「身体検査」を指示したが、これが予想外の事態を招いた。政治資金などで「不法とはいえない不適切」という事案が続出、意中の閣僚候補を次々に断念せざるを得なくなった。加えて、防衛相の小池百合子が突如辞任を表明。安倍の「右腕」の総務相、菅義偉も事務所費問題に関する一部の報道で矢面に立たされた。
人事構想の見直しを迫られた安倍はインド・東南アジア外遊中も公式日程を終えると1人ホテルの部屋にこもり、生みの苦しみは改造前夜まで続いた。熟考中の安倍は「野武士」のような形相だったという。
だが、どんなに「配慮」に満ちた人事も全員が納得できるものにはならない。
安倍は、元首相、森喜朗が推した元官房長官の福田康夫、元財務相の谷垣禎一の入閣は見送った。森は27日夜、神戸市内で講演し、「非常に堅実な実務型内閣だ」とほめながらも「やっぱり安倍さんも理想は残したいんだろうな。相変わらず、石原(伸晃政調会長)や渡辺(喜美行革担当相)らを残した。前は年少組だったが、今度は年中組という感じか…」と皮肉った。
◇
内閣改造で安倍がもっとも執着したのは外相、麻生太郎の幹事長起用だった。安倍は参院選後、麻生の外相続投方針を百八十度転換する。
最大の転機は、臨時国会召集日の8月7日に訪れた。国会内で開かれた代議士会で、元文科相の小坂憲次らが相次いで安倍の面前で退陣を要求。党の大勢が「安倍降ろし」で雪崩を打ちかねない空気が広がった。
衆院本会議終了後、参院での開会式に天皇陛下をお迎えするため、モーニング姿に着替えた麻生は、国会内の一室で安倍と向き合った。
「事態は深刻だ。内閣改造は早めた方がいい。国会最終日の10日に電撃改造をやるべきじゃないですかね…」
麻生は、祖父である元首相の吉田茂が昭和29年に欧米7カ国を外遊中に反吉田連合が結成され、帰国後内閣総辞職に追い込まれた事例を挙げて、このまま月末まで内閣改造を先延ばしして、19~25日にインド・東南アジアに歴訪すれば、その間に安倍包囲網が構築される恐れがあることをとうとうと説き、最後にこう念を押した。
「今は保守勢力の最大の危機であり、国家の危機でもある。でも筋を通せば必ず道は開けるものですよ」
消えた「電撃改造」
麻生の言葉は安倍に重く響いた。麻生の指摘通り、党内の不満をそのまま放置していれば、反安倍の火は一気に燃え広がりかねない。だが、閣僚候補者の身辺調査は間に合わない上、だまし討ちに近い改造を失敗すれば不満は増幅しかねない。麻生のアイデアはリスクが大きかった。
ただ、幸運にも7日を境に安倍降ろしの動きは一気に鎮火に向かった。党内で「これ以上の混乱は見苦しいし、民主党に利するだけ」(中堅)との雰囲気が広がったからだ。国対委員長の二階俊博や元防衛庁長官の額賀福志郎ら派閥領袖級らも相次いで「続投支持」を打ち出した。
思いを巡らせた末、安倍は最終的に「電撃改造」を断念したが、安倍はこの時点で「安倍-麻生」体制を政権の軸とすることを決断した。
◇
安倍の祖父は元首相の岸信介、父は元外相の安倍晋太郎。一方の麻生は、祖父が吉田茂、先祖は明治の元勲、大久保利通にさかのぼる。共通する「毛並みの良さ」もあり、安倍政権発足以来ぴったりと息を合わせてきたが、元々は疎遠だった。両者が親しくなったのは安倍が官房長官、麻生が外相に就任した2年前からだ。
安倍が親友の塩崎恭久(前官房長官)を外務副大臣に押し込んだことに麻生が激怒。その「手打ち式」として銀座のラウンジに繰り出したことがきっかけだった。ここで14歳の年の差を超えて意気投合し、昨年秋の総裁選では2人は対抗馬となるが、友情は続いた。
安倍は1年前、首相就任にあたり、麻生を幹事長に起用しようと考えた。しかし、このときは森らの説得で断念。だが、外相に迎え入れ、二人三脚で「主張する外交」路線を進めてきた。
「ライバル同士なのになぜ馬が合うのか」と周囲がいぶかしむと、麻生はこう説明した。
「おれと安倍の政治信条や国家観はほとんど一緒だ。ついでに敵も一緒だ。ケンカしようがないじゃないか」
麻生のいう「敵」が、元幹事長の加藤紘一や元副総裁の山崎拓らを指すことは明白だ。つまり、安倍が「安倍-麻生」体制を選んだということは、政権の求心力が低下しているこの時期に、あえて「敵に対して妥協しない」という意思を示したともいえる。(敬称略)(2007/08/28 08:05)
http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070829/shs070829001.htm
【内閣改造 土俵際の再出発】(下)本気だった「倒閣」(産経新聞、8月29日)
27日に発足した安倍改造内閣は派閥領袖がずらりと並ぶ「挙党態勢」となった。安倍にとって必ずしも満足なものではなかったが、自民党内にはそれ以上に不満がくすぶる。
反安倍、参院選惨敗後に密談
前参院国対委員長、矢野哲朗の入閣を見送られたため、参院議員会長の尾辻秀久は28日、首相官邸に乗り込み、不満をぶちまけた。閣僚から漏れた議員は、「泥船に乗らずにすんだ」と強弁するが、不信は広がる。安倍応援団といわれる若手・中堅にも改造は決して評判はよくない。
そんな中、28日夕、都内のホテルに元官房副長官の園田博之、後藤田正純ら衆院議員6人が結集した。いずれも反安倍の急先鋒(せんぽう)だが、「カラオケ仲間」の与謝野馨が官房長官になったことを歓迎。退陣要求は当面控え、与謝野を通じて安倍に政策変更を求めていく戦術に切り替えることを決めた。
親安倍も、反安倍勢力も足並みに乱れが出ている。自民党の歯車はどこから狂ったのか-。
参院選前夜の7月28日午後、外相、麻生太郎の携帯電話が鳴った。安倍からだった。
「ゆっくり話をしたいんですけど、今夜空いていますか」
だが麻生は地元・福岡に戻ったばかり。「申し訳ないが、今夜は帰京できない。明日必ずうかがいます」
安倍はこの時点で、参院選でどんな結果が出ようとも退陣しない腹を固めていた。もし自分が政権をほうり出すと、次期首相選出で党内が簡単に一本化するとは思えない。麻生、元官房長官の福田康夫、元財務相の谷垣禎一らで激しいバトルとなるだろう。そうなれば得をするのは誰か。安倍の脳裏に民主党代表の小沢一郎の顔が浮かんだ。
安倍は平成5年の政治制度改革をめぐる自民党分裂こそが、日本経済をどん底に落とした「失われた10年」の原因だと考えている。その引き金を引いた小沢がどんな動きをするかは容易に想像がついた。
「どんなに苦しくても踏ん張るしかない」。そう考えた安倍は、盟友であり、ライバルである麻生の意向だけは聞いておきたいと考えたのだ。
翌29日午後4時、ワンボックスカーでひそかに公邸に乗り付けた。安倍が自らの意向を伝えると麻生の返事は明解だった。
「衆参逆転など大したことない。安倍政権が打ち出した教育、安保などの大方針はちっとも間違っていないんだから胸を張って続投すべきだ。しっかり支えますよ」
2人が会談中、公邸の電話が鳴った。幹事長の中川秀直だった。
中川は国会近くのホテルで、元首相の森喜朗、参院議員会長の青木幹雄とともに今後の対応を協議していた。自民党の獲得議席を「40台後半」「40台前半」「30台」の3パターンに分類し、今後の政治情勢をシミュレートしていた。
敗戦の色はすでに濃厚。報道各社からひそかにかき集めた出口調査の結果は最悪の「30台」を示していた。青木は「安倍君はまだ若い。今辞めれば次のチャンスが生まれる」。森もうなずいた。
森に安倍の意向を確かめるように促された中川は、公邸に電話し、麻生がいることを知る。「なぜ麻生が…」。3人は首をかしげた。
麻生と入れ違いに公邸入りした中川は「続けるのも地獄、退くのも地獄。イバラの道だ」と語り、「辞任もやむなし」と諭したが、安倍はきっぱりと言った。
「解散のない参院の選挙で政権選択が行われることは基本的にはあるべきではない。大勢が判明した10時すぎにテレビで続投を表明する」
2日後の7月31日。東京・汐留の高層ビルの一室で、参院選で瀕死(ひんし)の痛手を受けた安倍政権を揺るがす密談が繰り広げられていた。
「メディア界のドン」といわれる人物が主催する秘密会合に顔をそろえたのは派閥領袖級の4人。元副総裁の山崎拓、元幹事長の加藤紘一、元幹事長の古賀誠の「新YKK」、そして元厚相、津島雄二だった。
誰とはなく「安倍はもうダメだ。世論が分かっていない。一気に福田擁立でまとめよう」と声を上げると、新YKKとは一線を画していた津島も「あの人(安倍)には人の暖かみを分かる心がない。『正しいことさえ言っていれば人は分かってくれる』と思いこんでいる」と応じた。
くしくも同じ夜、森は別の会合で「次の内閣改造のキーワードは『安心』と『安全』だ。失敗すると安倍は厳しい」と語り、福田、谷垣の入閣が政局のカギを握るとの見通しを示し、こう言った。
「どんなに追い込まれても、安倍に解散はさせない」
森のこの言葉は一気に広まった。加藤らは「福田擁立で各派がまとまれば森は乗ってくる」と手応えを感じた。この後新YKKが不気味なほどに沈黙したのは、それだけ「倒閣」が本気だったことを示していた。
汐留での会合で慎重姿勢を崩さなかった古賀も3日朝、都内のホテルで開かれた財界とのセミナーでは多弁だった。
「参院選は歴史的な大敗だが、首相の続投も歴史的な決断だ。内閣改造の結果をみて私たちもどう行動するか考えなければならない」。古賀は最後にこう結んだ。
「衆院解散はびっくりするほど早くなる」
「福田擁立なら即座に総裁選」
参院選後初の日曜日となった8月5日夕。森は東京・神山町の麻生邸を訪ねた。すでに麻生の幹事長就任のうわさが流れていた。
森「君は安倍さんに人事を何か吹き込まれているのか」
麻生「いいえ、まったくありません」
森「君は今後も安倍さんを支えてくれるか」
麻生「安倍政権は国家的に正しいことをやっていると思うから、私はそれに乗っているんです。参院選で負けたのは小泉改革のツケが最大の原因で、安倍さんのせいとはいえないでしょう」
森に派閥領袖級の人物評などを次々に問われ、「おれの意向を探りに来たのか」と感じた麻生は、こう切り出した。
「なんだかちまたには福田擁立なんて動きがあるらしいが、こんなものは絶対にのめない。安倍さんと総裁を争った私が支えるといい、『安倍だ』『安倍だ』とはしゃいだ連中がハシゴを外すなんてまったくおかしな話ですよ。そもそも福田さんは総裁選に出てもいないじゃないですか」
森は「福田さんには安定感があるから…」と言ったが、麻生は頑として譲らなかった。
「もし福田擁立という動きが本格化したら、即座に手を挙げて総裁選を要求します」
森は幹事長時代から、加藤と敵対して「冷や飯生活」を送ってきた麻生に「目をかけてやった」との思いがある。麻生もその恩義を強く感じているが、この会談は2人にシコリを残した。
一連の目まぐるしい動きは、「人を疑うことを知らない」といわれてきた安倍にも深い不信の念を芽生えさせた。
「逆風の時でないと他人の本心はなかなか見えないものだね…」
安倍は周囲にこう漏らしたという。
参院選での大敗は、自民党内の人間関係をより複雑にさせた。これまで親しかった者がお互いに疑心を抱き、敵さえも手を組む状況が生まれつつある。党派を超えた動きは今後ますます活発化するとみられている。政界が新たなうねりにのみ込まれていくことは間違いなさそうだ。(敬称略)
◇
この企画は石橋文登、大谷次郎が担当しました。(2007/08/29 07:36)
参院・民主が第1党で国会は?
2007年08月29日、朝日新聞
http://www.asahi.com/kids/janken/TKY200708290178.html
今後提出される法案の流れ
友野記者:9月になると、国会が始まるよ。
ケン:7月の終わりにあった参議院議員選挙では、民主党の人がたくさん当選したんでしょ。
友野記者:よく知ってるね。政権をとっている党を与党(今は自民党と公明党)といい、それ以外を野党という。参議院で一番多く議席を占めるのが、野党の民主党になったんだ。
ジャン:そうなると、国会もこれから何か変わるのかしら。
●選挙結果を重視、法案は成立しにくくなるよ
◆衆院に戻して成立は可能 強引な手法には国民の目
友野記者:今回の選挙で、参議院では、民主党の議員が、自民党と公明党を合わせた数よりも多くなった。国会では新しい法律など物事を多数決で決めるけど、今の政権とちがう意見を持つ政党が半分以上になったんだ。
ケン:そうすると政府の考え通りにならなくなるの?
友野記者:そういう場合もあるだろうね。国会には衆議院と参議院がある。参議院では民主党の議員が一番多いけど、衆議院では自民党が半分以上を占めている。衆議院と参議院で、一番議席が多い政党がちがうんだ。
ジャン:じゃあ、衆議院と参議院で意見が食いちがったりするのかしら?
友野記者:そうだね。新しい法律を作るには普通、最初に衆議院で話し合い、その法律案に賛成かどうか多数決をとる。賛成が過半数(半数をこえる)なら、次に参議院で話し合う。参議院でも賛成が過半数なら法律ができあがる。
ただ、これからは衆議院から送られた法律案に、参議院で民主党とほかの政党が反対することは十分に考えられる。
ポン:新しい法律ができなくなるの?
友野記者:難しくなるが、まったくできないというわけではないんだ。つまり、もし参議院で賛成が半数にとどかなくても、衆議院で3分の2の議員がもう一度賛成すれば法律は成立する。今、衆議院では自民党と公明党で3分の2以上を占めるから、最終的に成立させることは可能だ。
ケン:それなら参議院で強くてもあんまり意味がなさそう。
友野記者:そんなことはないよ。法律案は参議院から先に話し合う場合もある。民主党が自分たちで作った案を参議院で先に話し合うことにしたら、参議院では賛成が過半数を占める可能性が高い。
ジャン:でも参議院だけでは成立しないんでしょ。
友野記者:そう、次に話し合う衆議院で賛成が少なければ、その法律は成立しない。でも、一番最近の選挙結果は、今の世の中の考え方を最もよく映し出しているといえる。だから、投票した人たちの気持ちを軽んじているという批判をさけるためにも、自民党は「参議院で過半数を取れなかった法律案は全部、衆議院で多数決をやり直す」という方法はとらないだろう。
ケン:民主党は?
友野記者:民主党だって、法律案に反対するなら、その理由をちゃんと説明しないと、投票した人たちは納得しない。選挙に勝ったからこそ、これまでよりも厳しい目で見られることになるんだよ。
◆テロ特措法の延長めぐり攻防 自民・民主の意見説明に注目
友野記者:自民党は1955年にできたんだけど、56年から参議院のまとめ役である議長はずっと自民党出身の人だった。でも、今回初めて民主党出身の議長になったよ。
ケン:これから国会ではどんな法律案が話し合われるの?
友野記者:一番大変になりそうなのは、自衛隊がインド洋でアメリカ軍の船などに給油する活動を続けるための法律(テロ特措法)改正だろう。アフガニスタンのテロ組織と戦うアメリカ軍を支援するというのが目的だ。でも今の法律は11月1日に期限が切れてしまう。そこで政府は1年延長する法律案を出す予定だけど、民主党は反対すると言っている。
日本が世界の中でどういう役割を果たしていくべきなのか、自衛隊をどう考えるかなど、自民党と民主党どっちの意見に説得力があるか、注目だね。
●きょうのポイント
▽7月の選挙の結果、参議院で1番議席を占めるのは野党の民主党になった。衆議院は、与党(自民党と公明党)で3分の2以上を占める。
▽法律案は普通、衆議院と参議院でそれぞれ過半数の賛成を得て成立する。これからは、衆議院で可決されても参議院で否決される可能性がある。
▽参議院で否決された法律案は、衆議院でもう1度3分の2以上の賛成を得れば成立する。しかし、1番最近の選挙結果を重視するため、すべての法律案に対してこの方法を取ることはないとみられる。 記者:友野賀世(朝日新聞政治グループ)
http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070829/shs070829002.htm
「安倍改造内閣」本格始動 国会論戦、小沢シフト(産経新聞、8月29日)
参院議席の与野党逆転で、秋の臨時国会の運営が厳しさを増す中、安倍改造内閣が28日、政権の命運をかけて本格スタートした。テロ対策特別措置法など重要法案で対決姿勢を強める民主党の小沢一郎代表を牽制(けんせい)し、立ち向かうための人材を閣僚や自民党の要所に配し、「小沢・民主党シフト」で論戦を挑む。安倍晋三首相は民主党との対話を模索する一方で、新内閣を「政策実行内閣」と命名、あくまで政策実現を通じて国民の支持と理解を求めていく考えだ。
要所に手の内知り尽くした人材
「小沢氏は自民党幹事長時代にわれわれを指導してくれたし、私は(共通の趣味の)囲碁で小沢氏を指導してきた。大変いい方だと思っている」
与謝野馨官房長官は28日の会見でこう述べ、小沢氏との良好な関係を強調。この日はリップサービスに徹して周囲をけむに巻いた。
だが、11月1日には小沢氏が延長反対を表明しているテロ特措法の期限が切れる。日本銀行政策委員など衆参両院の同意が必要な人事案件では民主党との調整難航は必至だ。9月10日にも召集される秋の臨時国会は、開会冒頭から波乱が予想され、秋以降は消費税率引き上げなど税制改正論議も本格化する。
「国会が大変厳しい状況なので、優れた調整能力を発揮してほしい」
安倍首相は27日夜の会見で、与謝野氏の起用理由をこう指摘した。与謝野氏自身も「私は政策マンだなんて言われるが、国会運営が政治生活の大勢を占めてきた」と、与野党との調整に自信をのぞかせてもいる。
また、民主党の鳩山由紀夫幹事長の実弟である鳩山邦夫法相も「兄弟のパイプも生かしたい」と調整に意欲を示す。鳩山氏は民主党の衆院議員に自らの元秘書がいることも強みだ。
増田寛也総務相の場合は、平成7年に新進党幹事長だった小沢氏に擁立され、“小沢王国”の岩手県で知事に初当選。後に、自らの政党色を弱める過程で小沢氏から離反した経緯がある。このため、「硬軟織り交ぜた小沢氏サイドの揺さぶり手法に詳しいはず」(自民党筋)とされる。
増田氏は以前、小沢氏を「政治の師」と語っていた。この点について増田氏は28日未明、総務省で記者団に対し「今も変わらない。歴史的事実だ。それで政界に入ったのだから」と明言。同時に、「政治的立場というのはそれぞれの場面ですごく変わりうる」とも語り、かつての師匠が率いる民主党相手に論戦に臨む意気込みを示した。
自民党総務会長の二階俊博氏は、新進党時代に小沢氏の側近として国会対策などに奔走、「表も裏も小沢氏のやり方を知り尽くしている」(自民党筋)という。外相に町村信孝氏、防衛相に高村正彦氏という外相経験者を配置したのは、臨時国会のテロ特措法審議の答弁で、万が一にも民主党側に付け入るすきを与えないためだ。
安倍首相自身は28日、記者団に「民主党や小沢さんに対抗しようという気持ちで内閣を作ったのではない」と述べた。だが、自民党内では、「民主党との協調を図りつつも、全面対決になった際には反撃することを考えた布陣ではないか」(中堅)との見方が強い。
(2007/08/29 03:26)
http://www.sankei.co.jp/keizai/kseisaku/070828/ksk070828002.htm
安部改造内閣 政府と財界、不協和音も 「村瀬社保庁長官、使い捨て」(産経新聞、8月28日)
政府と経済界との間で不協和音が響いている。安倍晋三首相が内閣改造直前に踏み切った村瀬清司社会保険庁長官の更迭をめぐり、「経済界から送り込んだ人材が使い捨てにされた」(財界幹部)との声が強く、今後の官民交流に影響を与えかねない情勢だ。格差問題の解消などを抱えた安倍改造内閣は、財界との関係改善という新たな課題にも取り組む必要がある。
3年前に損保ジャパン副社長から初めて民間出身の社保庁長官に抜擢(ばってき)された村瀬氏は、業務の効率化や意識改革などを進めてきた。しかし、宙に浮いた年金記録などの問題に直撃され、参院選で与党は惨敗。結果的にその責任を取らされる形で村瀬氏は更迭され、総務省OBの坂野泰治氏が近く就任する。
今回の更迭人事について政府は、参院選直後から村瀬氏の交代を模索し、経済界に後任を打診していた。だが、与野党から集中砲火を受けた村瀬氏の姿をみた経済界に引き受け手はいなかった。このため、村瀬氏は当面留任するとみられていたが、内閣改造直前の24日夜に駆け込み的に更迭が発表された。
こうした政府の対応について、経済界からは「年金記録問題は村瀬氏の就任前から起きていたこと。交代はやむを得ないとしても、新しい厚生労働相に本人から辞任を申し出る形にしてほしかった」(財界幹部)と更迭に踏み切った政府への批判が噴出している。
安倍内閣は、公務員の天下り禁止を打ち出しており、政府系金融機関の統合に伴う新トップは民間から起用される。だが、民間から登用された村瀬氏が「世論に対するアリバイづくり」(財界筋)のような形で更迭された影響は大きく、経済界からの人材起用にも支障が生じる恐れがある。
民間からの人材登用は、官庁からの天下りを防ぎ、民間の発想で業務の効率化や創意工夫を促す目的がある。ただ、そうしたポストは政治任用的なものであり、最終的には政治の意思決定に左右される。それだけに今回の更迭劇は改めて政府の人材登用の姿勢を問うことになりそうだ。(経済部次長 井伊重之)
(2007/08/28 08:51)
http://www.news.janjan.jp/government/0708/0708221178/1.php
前原・前民主党代表が自民国防族と「テロ特措法延長」を訴える
2007/08/23 JANJAN
民主党の前原誠司・前代表は22日、日本海外特派員協会で自民党の中谷元・元防衛庁長官とともに記者会見し、11月1日に期限が切れる「テロ特措法」の延長を訴えた。
民主党はすでに小沢一郎代表が同法の延長に反対することを明言しており、前原氏の発言は民主党内の波乱要因になりそうだ。
前原氏は、戦後日本の繁栄の礎となった軽武装、経済重点主義は日米同盟によるもので、それを引き続き重視すべきという伝統的な見解から、テロ特措法延長の必要性を以下のように訴えた―
▼アメリカの自衛権行使で始めたアフガン戦争は国連や国際社会が追認した▼テロを阻止するために日本が参加することは大事。インド洋での補給活動を続けるべき。
一方、中谷氏からは次のような指摘があった―
▼世界の中で日本が果たすべき役割▼小沢民主党代表は党利党略で特措法の延長に反対している▼中東政策への影響
前原氏はこれまでにもテレビ番組などで「アフガニスタンでのテロとの戦いから日本が抜けることは国益に反する」(12日、テレビ朝日)などとして、同特措法は延長すべきとの見解を示してきた。個人的な見解とはいえ、今回、自民党防衛族(中谷氏はテロ特措法成立時の防衛庁長官)と肩を並べて「テロ特措法は延長すべし」と海外のメディアに訴えたことで、小沢代表に対する異論をより鮮明にすることになった。
民主党の前原誠司・前代表
両氏の冒頭発言ののち、記者との質疑応答に移った。そのなかで、前原氏は「『テロとの戦い』は検証すべき時期にきている」との見解も示した-
記者(シンガポールビジネスタイムス):小沢さんは党利党略で判断(特措法延長に反対)しているのではないか?
中谷:国際的に評価されている活動になぜ小沢さんが反対するのかわからない。アメリカに物申すという姿勢で存在感をアピールしているのだろうが、それでは党利党略で大きな間違いを犯すことになる。
記者(日本インターネット新聞):「テロとの戦い」というが実はビン・ラディンとの戦い。なぜこれに日本がおつきあいするのか?血で血を洗う戦いを繰り広げてきたイランとタリバーンが、今では軍事的に協力している。シーア派革命防衛隊の伸張。イラクと同じ図式だ。ここに支援するということは火に油を注ぐようなものだが?
中谷:アフガニスタンでの日本の活動は国際的に認知されている。テロの培養地は叩かなければならない。
前原:どうやって(アフガン戦争を)収束させるかの検証がされていない。アフガン情勢は(初期と比べると)変質してきている。「テロとの戦い」は検証すべき時期にきている。
記者(AFP): 2人がジョイントして記者会見することは、党の執行部にとってはハッピーではないのでは?
前原:特派員協会から要望があったので来た。中谷さんと示し合わせたわけではない(場内笑) 。
記者(フランスRTL):フランスのサルコジ大統領がブッシュ大統領との会談で「イラクの軍事的解決は不可能だが、政治的解決は可能」と言った。これについてどう思うか?
前原:私もそう思う。前の質問(日本インターネット新聞社)にも答えたが、「テロとの戦い」の検証は緊急を要する。
この他にも安倍首相続投問題、大連立などについて質問が出、珍妙なところでは「桜パパの賭けゴルフ問題」まで飛び出した。
いずれにせよ「テロ特措法延長」をめぐる激突は、秋の臨時国会の最大の見せ場となる。前原グループの動きいかんでは民主党の「特措法戦術」も変更を来たす可能性もある。この日の記者会見には多数の海外記者が出席し、発言に耳を凝らした。国内大メディアの番記者、ワイドショークルーも訪れ大変な熱気だった。 (田中龍作)
http://www.chunichi.co.jp/article/politics/news/CK2007082902044839.html
郵政造反組が“復権” 副大臣決定 森山、今村氏ら起用
2007年8月29日 中日新聞夕刊
政府は二十九日午前の臨時閣議で、各府省の副大臣二十二人を決定した。一昨年の郵政民営化法の衆院採決で反対票を投じた郵政造反・復党組から森山裕、今村雅弘両氏が“復権”を果たした。参院の造反組からも中川義雄、岩永浩美両氏が起用された。昨年十二月に自民党に復党した十一人で政府要職に就くのは初めて。同日昼、皇居で認証式が行われた。
政務官人事の決定は三十日に先送りされた。
政務官候補にも復党組二人と、反対票を投じた参院議員二人の名前が挙がっている。造反組の復党の際には、「改革後退」のイメージを与え、内閣支持率が大幅に下落した。
これに関連し与謝野馨官房長官は二十九日午前の記者会見で「(郵政造反は)はるか昔に起きたようなことで、何らの感想もない」と指摘。その上で「郵政民営化は既定路線として定着している。既定路線について何らの影響も与えない」と述べた。
副大臣の党別内訳は自民党十九人、公明党三人。派閥別(参院を含む)では津島派四人、町村派三人、古賀、山崎、伊吹、谷垣派各二人、高村、二階、麻生派各一人、無派閥一人。顔触れは次の通り。(敬称略。党名のない議員は自民党議員。参院以外は衆院)
【内閣府】木村勉(東京15区)、山本明彦(愛知15区)、中川義雄(参院北海道)
【総務】佐藤勉(栃木4区)、魚住裕一郎(公明党、参院比例)
【法務】河井克行(広島3区)
【外務】小野寺五典(宮城6区)、木村仁(参院熊本)
【財務】遠藤乙彦(公明党、比例北関東)、森山裕(鹿児島5区)
【文部科学】池坊保子(公明党、比例近畿)、松浪健四郎(比例近畿)
【厚生労働】西川京子(福岡10区)、岸宏一(参院山形)
【農林水産】今村雅弘(佐賀2区)、岩永浩美(参院佐賀)
【経済産業】新藤義孝(埼玉2区)、中野正志(比例東北)
【国土交通】平井卓也(香川1区)、松島みどり(東京14区)
【環境】桜井郁三(神奈川12区)
【防衛】江渡聡徳(青森2区)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070829i115.htm?from=main1
臨時国会、9月10日に召集…政府・与党方針(読売新聞、8月29日)
政府・与党は29日、臨時国会を9月10日に召集する方針を決め、野党各党に伝えた。
会期は11月上旬までの60日間程度となる見通しだ。11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長問題が最大の焦点となる。
与謝野官房長官と自民党の大島理森国会対策委員長が29日、国会内で会談し、「10日召集」を確認。その後、大島氏が民主党の高木義明国対委員長らに伝えた。4日にも開かれる、衆参両院の議院運営委員会理事会で了承され、閣議決定する運びだ。与党は、10日に安倍首相の所信表明演説を行い、12~14日に衆参両院で各党代表質問、18~21日に衆参の予算委員会を開きたい考えだ。
次の臨時国会は安倍改造内閣発足後、初めての国会で、参院で与野党が逆転した中での最初の本格的論戦の場となる。焦点のテロ特措法改正案に関しては、与党は9月下旬に衆院で審議入りしたい考えだが、民主党など野党は延長に反対しており、激しい攻防が予想される。(2007年8月30日1時4分 読売新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0827/TKY200708270350.html
町村新外相、「在任中は靖国行かない」
2007年08月27日23時08分 朝日新聞
町村信孝外相は27日夜の就任後初の記者会見で、靖国神社への参拝について報道陣の質問に答え、「私自身は少なくとも外相在任中は参拝をするつもりはない」と明言した。
町村氏は、安倍首相が靖国神社参拝の有無を明言しない「あいまい戦略」をとっていることについて「私は安倍首相があえてあいまい戦略で、参拝するしないということを明言しないというのは、ひとつの適切なる知恵だと評価している」とも述べた。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007082901000722.html
岡田、前原両氏起用の声も 民主党は政調と国対が焦点
2007年8月29日 20時08分 中日新聞
民主党の小沢一郎代表は29日、31日に実施する党役員人事の検討を進めた。事実上の集団指導体制を取ってきた菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長の続投は確実視されることから、政策の取りまとめ役となる政調会長と、与党との対決の最前線に立つ国対委員長人事が注目の的。党代表経験者の岡田克也、前原誠司両氏の起用や、参院からの抜てきなどが取りざたされている。
小沢氏は21日の常任幹事会で「人事を一新したい」「挙党一致で政権を目指したい」などと説明しただけで以後は沈黙。鳩山氏でさえ29日、就任あいさつに訪れた自民党新3役らに「人事は小沢氏の頭の中。全く知らない」と話した。
それでも党内では、政策立案能力の高さと党内融和の観点から、政調会長に小沢氏とやや距離を取る岡田、前原両氏のどちらかを起用、政権担当能力をアピールするのではないかとの見方が多い。ただ、両氏とも小沢氏主導で昨年12月にまとめた「政権政策の基本方針」に批判的で、いずれも周囲には就任に慎重な姿勢をみせている。
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