11月1日の経済財政諮問会議で、農地改革がテーマとなった。
農業での大企業経営を可能にするという方向そのものには変わりがないが、いつまでに、どれほどの規模で実施するかについては、躊躇が生まれ始めているようだ。
参議院選挙での「地方の反乱」が、ジワジワと効いてきているということである。
農業に法人参入、農相が前向き姿勢…経財諮問会議(読売新聞、11月1日)
政府の経済財政諮問会議(議長・福田首相)は1日、農地改革をテーマに議論した。
御手洗冨士夫・日本経団連会長ら4人の民間議員が、「農業の生産性を高めるには、農地の集約と新規参入の促進が重要」との認識を示した。
4人の民間議員は「高齢化が進むことを考えると、農地の流動性を高めることが重要だ」として、遅くても2009年度までに法人の農業への参入条件を緩めることを提案した。
農地税制の見直しにも踏み込み、現在は自分の土地を自ら耕作している場合に限って認められている相続税の納税猶予措置について、「農地として利用されているのなら、貸し出している場合も認めるべきだ」と提言した。
提案に対し若林農相は、「株式会社を含む法人の参入を認めていきたい」と前向きな姿勢を示した。
ただ、内閣府が先月27日に開いた経済財政に関する地方会議では、「徳島県のように山間地が多い地域では、大規模化したくてもできない」などと批判的な意見も出ている。
福田首相は1日の会議で、「農業は(FTA交渉の進展など)外的な状況変化が早い。改革のスピードアップを図ってほしい」と指示した。一方で所信表明演説では、「高齢者や小規模な農家も安心して農業に取り組める環境を作る」と、小規模農家への配慮をにじませており、民間議員とは微妙な温度差が残る。民間議員の提言通りに改革が進むかどうかは不透明だ。
農業改革に目立つ先送り 農相、民間案とも迫力欠く(東京新聞、11月1日)
政府の経済財政諮問会議は1日、農業・農地改革を中心に論議した。若林正俊農相は長期賃貸制度が柱の農地改革案を提出、民間議員も農地利用を促す税制改革などを示した。しかし、双方とも企業の参入条件緩和など具体策には先送りが目立ち、福田内閣が進める農政改革の見直しが影を落とした形だ。
農相は農地改革について、農地情報データベース化や耕作放棄地解消など5つの重点項目を指摘。5年程度の工程表も示し、20年超の長期賃貸制度などが2008-09年度に始まるよう、法改正するとした。
民間議員は、農地の所有でなく利用を促す必要があると提言。多様な法人を農業参入させる仕組みを09年度までに実現することや、農地を貸し付けた際の相続税の猶予措置などを求めた。
しかし、民間議員の提言は後退した印象が強い。諮問会議の農業ワーキング・グループは企業の農地取得を課題に上げ、6月の「骨太の方針」では農業経営の大規模化や新規参入促進も打ち出した。
こうした改革に参院選の与党惨敗がブレーキをかけた。
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