第3次アーミテージ報告である。
要するに、イラク戦争や「テロとの戦争」に集中しているあいだに、世界構造の大きな変化に乗り遅れつつあるという問題意識が出発点。
そこを途上国援助や国際協力で打開したいということらしい。とはいえ同盟強化を重視するなど依然として軍事力重視の姿勢も維持される。
とりあえず、新聞報道の限りで新政権に期待されているのは、次のようなこととなっている。
①軍事力と文化の魅力を統合した「スマートパワー」国家を目ざし。
②有志同盟ではなく、東アジアやEUとの正規の同盟を充実させる。
③アメリカの意向がより良く反映する国連改革も重要。
④世界の安全保障と繁栄にもっとも重要なのは中国との関係(ただし両国が衝突する見通しは低い)。
⑤中国の影響力が強まっているアフリカでは、条件をつけない援助が必要。
⑥環境問題では国際的な合意を重視する。
なお、日米同盟については、過去7年間強化されてきたと述べている。小泉政権以降ということである。
米国は「賢い国家」めざせ・超党派の有識者が提言(日経新聞、11月7日)
【ワシントン=丸谷浩史】米国のアーミテージ元国務副長官ら超党派の有識者グループは6日、大統領選に向けた外交戦略をまとめた報告書を発表した。2008年大統領選をにらみ、次期政権は軍事力と、文化などの魅力を統合した「スマートパワー」(賢い力)国家を目指すべきだと提言。イラク戦争以降、米国のイメージと影響力が低下したとの反省から、地位向上に外交努力が必要との判断だ。
専門家グループは共和党系のアーミテージ氏、民主党系のナイ・ハーバード大教授を中心に構成した。
報告書は01年の同時テロ以降、米国は「6年間にわたって戦時下にある」と指摘、この間の議論はほとんどがイラク戦争、テロとの戦いに費やされてきたと総括した。そのうえで「イラクとテロに焦点をあてた狭い物の見方にかわり、より広い目標、戦略を提示したい」と報告書の狙いを説明した。(12:29)
米政府に国際協調路線への復帰呼びかけ…超党派の米有識者(読売新聞、11月7日)
【ワシントン=坂元隆】共和党のリチャード・アーミテージ元国務副長官と民主党のジョゼフ・ナイ元国防次官補(ハーバード大教授)を中心とする超党派の米有識者グループは6日、米国の安全保障・外交政策に関する報告書を発表、国際協調や途上国開発を通じ、米国に対する世界の信頼を取り戻すよう提案した。
報告書は、2001年9月の同時テロ以降、米国が「恐怖と怒りを世界に輸出するようになった」と指摘。軍事力や経済力だけでなく、理想や文化、技術などの「ソフトパワー」を駆使して世界を指導する「賢い大国」になるべきだと主張した。そのうえで、同盟関係・国際機構、途上国開発、市民外交、技術革新など5分野で具体的提言を行っている。
なかでも同盟関係に関しては、一国主義や有志連合より、条約に基づく同盟や国際機構の重要性を強調し、来年の米大統領選で選出される新たな指導者が、日本を含む東アジア諸国との同盟と、北大西洋条約機構(NATO)を通じた欧州との同盟に改めて本腰を入れて取り組むよう促した。また、国連の改革を進め、平和維持活動やテロ防止などの分野で国連が「米国の意思を実現するうえで積極的な役割を果たす」と期待感を表明している。
さらに、米国がこれまで気候変動に関する京都議定書など国際的取り決めをしばしば拒否したために国際的信用を失ったと批判し、国際的な法的枠組みを尊重するよう訴えた。
一方、報告書は、米中関係を「世界の安全保障と繁栄にとって最も重要な2国間関係」と位置づけ、米国が中東で忙殺されている間に、中国が間隙を縫って「自らの経済的利益と、世界的大国になるための長期的戦略を追求している」と述べた。しかし、報告書は、米中両国がエネルギー面などで相互依存を深め、北朝鮮問題などの外交問題でも協力関係を維持しているとして、米中両国が今後衝突する可能性は低いとの見方を示した。日米同盟については、ブッシュ政権の過去7年間を通じて「不可欠で多層的な協力関係を継続している」と高く評価している。
中国との関係「最重要」 米超党派グループが報告書(中日新聞、11月7日)
【ワシントン6日共同】アーミテージ元米国務副長官ら外交・安全保障問題の超党派グループが6日、次期米政権の課題をまとめた報告書を発表した。日米同盟について「重要で多面的な協力関係が今後も継続する」と指摘すると同時に、中国との2国間関係が「国際安全保障にとって最重要」と位置付けた。
報告書は知日派のアーミテージ氏とナイ・ハーバード大ケネディ政治大学院教授を中心に、共和、民主両党の現職議員らが作成に参画。ブッシュ政権の外交がイラク政策に偏っていたとの反省に立ってまとめられた。
報告書は中国について多くを割き、米中関係の重要性を強調した上で「ワシントンが中東に気を取られている間、経済利益のため巧みに米国の抜けた穴を埋めている」として、中国が天然資源開発などを積極的に進めていると指摘。
特にアフリカなどでは、援助に条件を付けないことが歓迎され、米国に代わり中国の影響力が拡大しているなどと問題点を列挙した。
米中関係が最も重要=兵器拡散防止などで協調を-米超党派報告書(時事通信、11月7日)
【ワシントン6日時事】アーミテージ元米国務副長官ら超党派の外交・安全保障専門家グループは6日、外交戦略に関する提言をまとめた報告書を発表した。報告書は「世界規模の安全保障や繁栄にとって、米中関係ほど重要な2国間関係はない」と位置付けた上で、今後、中国の影響力が拡大していくものの、「米中両国が対決の道を進むことを必ずしも意味しない」と指摘。大量破壊兵器の拡散防止問題やエネルギー安全保障、環境問題などで協調していくべきだと強調した。
日米同盟については「過去7年間で強化された」とした上で、重要かつ多面的な協力関係が継続されるとの見通しを示した。
「脱ブッシュ」提言 外交政策で次期大統領に 民間団体(しんぶん赤旗、11突き8日)
【ワシントン=山崎伸治】アーミテージ元米国務副長官とナイ元米国防次官補が座長を務める研究グループは六日、次期米大統領に対する外交提言をまとめた報告を発表しました。世界中で悪化する米国の「イメージと影響力」を回復するため、軍事力と経済力に加え、対外援助や外交などの「ソフトパワー」を重視するよう求めるなど、「脱ブッシュ」の方向を強く打ち出しています。
報告は米国の「影響力の衰え」に危機感を表明し、原因の第一にイラク戦争を指摘しました。
中国について、米国が中東に没入している間に世界中で影響力を広げていると警戒感を表明。しかし「米中両国が世界的な影響力の面でたたかい、衝突する道にあるわけではない」として、中国の「ソフトパワー」の限界や米中の協力の可能性を指摘しています。
そして次の米大統領がだれになろうと、米政府がとるべき方策として、(1)同盟関係の再活性化(2)地球的規模の開発支援(3)市民レベルの外交(パブリック・ディプロマシー)の推進(4)国内外での経済的格差の是正(5)環境問題での技術革新―の五つをあげています。
研究グループは米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が設置。アーミテージ、ナイ両氏を座長に、現職・元職の上院議員や元最高裁判事、元米軍司令官ら十八人が委員を務めています。
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