じつに、まっとうな「主張」だと思う。
過度のアメリカ市場依存は、①日本の最大の輸出市場が中国・東アジアに移っており、②東アジア経済自体がアメリカ依存からの脱却をすすめることで、すでに大きな変化の中にある。
そうなると、経済の分野に残された最も大きな問題は、通貨の運用にかかわる政策となる。
ドル支持一辺倒でいいわけがない。
世界構造の大きな転換の中で、①日本の地位にかんする中長期のビジョンをもち、②そのビジョンにそった経済外交の展開が求められている。
だが、世界戦略の立案そのものを、もっぱらアメリカに依存してきた戦後支配層の知的脆弱は深刻である。
さて、では、どうするか。
主張 ドル離れ 世界は新秩序模索の時代へ(しんぶん赤旗、12月30日)
今年の世界経済は、アメリカのサブプライムローンの破たんに始まる国際金融の深刻な動揺に明け暮れました。世界的な金融不安は収束の見通しのないまま、年明けに持ち越されようとしています。
ブッシュ政権は、「米国経済のファンダメンタルズ(基礎条件)は安定している」と繰り返しています。しかし、サブプライム危機は、世界から資金を集中し株価をつり上げて景気上昇を続けてきた米国経済のもろさを世界中に露呈しました。強いドルを前提にして経済繁栄を誇ってきた“アメリカ・モデル”は、大きな壁にぶつかっており、世界的に「ドル離れ」の時代を迎えています。
背景に世界経済の構造変化
「ドル離れ」の直接の契機は、米国経済への信認の揺らぎから、アメリカに流入していた長期、短期の資金が他の通貨(ユーロや円など)へ乗り換えて、ドル安がすすむことです。しかし、今回の「ドル離れ」には、いっそう根深い、歴史的、構造的な背景があります。
かつての「ドル離れ」は、ドル売り・ドル安がすすんでも、ドルに代わりうる国際通貨がなかったために、一時的なものに終わり、基軸通貨としてのドルの地位は安泰でした。
しかし、近年はEU(欧州連合)のユーロが第二の基軸通貨として発展し、また世界最大の外貨準備を保有する中国の人民元、日本の円など、「ドル離れ」の受け皿が多様になっています。すでに世界の外貨準備に占めるユーロの比率は25%を超えています。
さらに、中国、インド、ブラジル、ロシアなど新興諸国の急激な経済発展のために、世界経済の構造が大きく変わってきています。
たとえば、二十年前には、G7(主要資本主義七カ国)が世界のGDP(国内総生産)の六割強を占めていましたが、最近では、発展途上国だけで五割を超え、G7を追い越しています。かつてのように、G7諸国だけで通貨調整をおこない、ドル安の進行を止めるなどというやり方は、今日の世界経済では通用しなくなっています。
もともと第二次大戦後、ドルが基軸通貨の地位をほしいままにしてきたのは、その巨大な経済力とともに、世界最大の軍事力を背景にしていました。しかし、世界の世論を無視したブッシュ政権のイラク戦争の強行は、財政収支と貿易収支の「双子の赤字」を拡大し、ドル急落への内外の懸念を拡大しています。しかも、イラク情勢の泥沼化などによって、内外で政治的・軍事的な求心力が低下し、それもまた「ドル離れ」に拍車をかけています。
このように、いますすみつつある「ドル離れ」は、世界経済の構造変化、政治、経済にわたるアメリカの地位低下を背景としており、来年以降の世界は、アメリカの一国覇権主義、ドル支配の体制に代わりうる新秩序を模索する時代に入りつつあるといえるでしょう。
対米追随路線に未来はない
福田内閣は、アメリカ国内でさえ強い批判をあびているブッシュ政権のイラクにたいする戦争をいまだに支持し、日米軍事同盟堅持、ドル支配容認の対米追随路線をとりつづけています。
世界が新たな秩序をめざして動き始めているもとで、こうした路線に未来はありません。最近の日本の金融市場の激動に見られるように、それは日本の政治と経済に大きなゆがみをもたらしており、対米追随路線は直ちに転換すべきです。
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