若宮啓文『戦後保守のアジア観』(朝日選書、1995年)を読み終える。
これもまた、読みごたえのある一冊だった。
戦前の「脱亜入欧」から「大アジア主義」への転換、そして戦後の親米反共「大アジア主義」および経済主義にもとづく中国との「和解」。
日韓、日中の戦後史が、時の首相等の「アジア観」を軸に語られる。
加害の歴史の検討を避け、時の政治的必要に謝罪の言葉を従属させる。
そうした謝罪の「小出し」や二枚舌が、一方にアジア各国の苛立ちを生み、他方で謝罪を自ら踏みにじる政治家たちの妄言を生む。
そうした経過がよくわかる本。
この本が出された95年は、戦後50年の国会決議や村山談話が出された年でもある。
著者は、遅ればせながらの日本の変化に期待をかけた。
だが、現実は97年の「日本会議」結成に象徴される、もう10年間の新たな巻き返しを生み出している。
実に根の深い問題である。
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