2007年3月27日の発足当初から、「9条の会」を名指しし、草の根の改憲運動の必要を提起してきた新憲法制定議員同盟が総会を開いた。
今回の総会の目玉は、はっきりと民主党の幹部を改憲同盟の幹部にすえて、改憲に向けた自民・民主一体の動きをつくること。
「派兵恒久法」づくりへの動きを見ても、両党の改憲に向けたチームワークの深まりは明白。
とはいえ、07年7月の参議院選挙で、自民党はマニュフェストの筆頭に「新憲法制定の推進」をかかげて大敗を喫したばかり。
焦る必要はどこにもない。
状況を的確に市民に知らせ、粛々と、護憲の世論を広げつづけることがわれわれの道。
改憲同盟 自・民で新体制 役員に両党幹事長ら “政府を代表して” 官房長官が発言(しんぶん赤旗、3月5日)
自民、民主、公明、国民新各党などの改憲派議員でつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)は四日、国会内で総会を開きました。民主党幹部を新たに役員に加え、改憲策動を推進する新体制を発足させました。
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自民党からは安倍晋三前首相、伊吹文明幹事長、谷垣禎一政調会長らが新たに顧問に就任、民主党からも鳩山由紀夫幹事長が顧問、前原誠司副代表が副会長に就きました。二〇〇八年度予算案の衆院強行通過をめぐって「対立」姿勢をみせる自民、民主両党が、九条改憲という国のあり方の根本問題で基本的に同方向であることを示すものです。
あいさつで中曽根会長は「憲法問題がいま冷えている最中に、なお国会議員の中には根強い憲法改正への意欲が充満している」とし、「超党派で最大公約数を求めながら国家像を決めていく大事業だ」と強調しました。これまでなかった民主党幹部の参加で、改憲機運を盛り上げる狙いを示しました。
閣僚では町村信孝官房長官が参加し、「(中曽根氏から)内閣を代表して出てこいというご命令をいただき、これは天の声だとして私は喜んで参加した」などと発言。憲法改定を目標とする議員同盟の副会長に名を連ね、改憲の呼びかけの先頭に立つ立場を鮮明にし、憲法尊重擁護義務(憲法九九条)に公然と違反する行動に出ました。
また、鳩山邦夫法相、高村正彦外相、額賀福志郎財務相らが役員に名を連ねています。
総会では当面の活動方針として(1)衆参両院の憲法審査会始動へ働きかけをさらに強める(2)民主、公明両党の議員を中心に会員の増強を進める(3)「九条の会」に対抗していくため地方の拠点づくりを進める、ことを確認。五月一日には「新憲法制定推進大会」(仮称)を憲政記念館で開催することを決めました。
「九条の会」に対抗 新憲法制定議員同盟 地方拠点作り狙う(しんぶん赤旗、3月5日)
解説
新憲法制定議員同盟の新役員体制の発足は、これまで参加のなかった民主党幹部を組み込むことで、参院選で挫折した改憲策動を盛り上げることに狙いがあります。議員同盟幹部は、「政局の中で民主党との対立はいろいろあるが改憲は党派を超えた課題であり、政界再編を狙っているわけではないが、客観的には大きく動かす軸になるだろう」と語りました。
それは憲法守れの国民世論に追い込まれた改憲派の危機感のあらわれでもあります。
四日の新憲法制定議員同盟の総会では「拠点となる地方組織づくり」を方針として確認しました。
愛知和男議員同盟幹事長は活動方針の説明の中で「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力が、全国に細かく組織作りができておりまして、それに対抗していくにはよほどこちらも地方に拠点を作っていかねばなりません。そこが今後の活動の大きな焦点となる」と強調。「各党支部や青年会議所などに頼んで拠点になってもらうことも一つかと思う」と提起しました。
中曽根康弘会長も「各党の府県支部に憲法改正の委員会をつくり、全国的な網を張っていくことが私たちの次の目標。そしてできれば超党派の全国的な国会議員、地方議員の連合の会をできるだけ早期につくりたい」と発言しました。
「九条の会」を名指しして「対抗」意識をむき出しにした発言は、焦りの表れです。
自民党は〇五年の「新憲法草案」の発表後から全国的なタウンミーティングの開催や国民運動の展開を繰り返し提起してきました。しかし、現実には改憲促進の“国民運動”の広がりは見られませんでした。「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍内閣の下で改憲手続き法が強行されましたが、国民世論は「九条改定反対」の方向に大きく動いています。
昨年の「新憲法制定議員同盟」の発足に当たっても「九条の会」に対抗した国民運動の展開を提唱していましたが、実現せずにいます。九条改定の主張そのものが国民的に受け入れられていないことの反映です。(中祖寅一)
憲法議員同盟の役員
四日の新憲法制定議員同盟総会で了承された役員は次の通り。☆は新。かっこ内の元は元職。敬称略。
【会長】中曽根康弘(元)
【会長代理】中山太郎(自民・衆院)
【顧問】衆院=海部俊樹、中川秀直、丹羽雄哉、中川昭一、瓦力、山崎拓、☆安倍晋三、☆伊吹文明、☆谷垣禎一(以上自民)、☆鳩山由紀夫(民主)、綿貫民輔、☆亀井静香(以上国民新)、参院=青木幹雄(自民)、元職=塩川正十郎、奥野誠亮、森下元晴、上田稔、倉田寛之、関谷勝嗣、片山虎之助、☆粟屋敏信、☆葉梨信行、谷川和穂
【副会長】衆院=津島雄二、古賀誠、野田毅、島村宜伸、深谷隆司、与謝野馨、高村正彦、二階俊博、町村信孝、額賀福志郎、大野功統、斉藤斗志二、杉浦正健、森山眞弓、堀内光雄、☆臼井日出男、☆石原伸晃(以上自民)、☆前原誠司(民主)、平沼赳夫、☆玉沢徳一郎(以上無所属)、参院=☆藤井孝男、☆尾辻秀久(以上自民)、☆田名部匡省、☆渡辺秀央(以上民主)、山東昭子(無所属)、元職=小野清子
【副会長兼常任幹事】衆院=保岡興治、鳩山邦夫、大島理森、船田元、金子一義(以上自民)、参院=鴻池祥肇、☆泉信也(以上自民)
【幹事長】愛知和男(自民・衆院)
【副幹事長兼事務局長】柳本卓治(自民・衆院)
【副幹事長】中曽根弘文(自民・参院)
【常任幹事兼事務局次長】衆院=☆平沢勝栄(自民)、参院=林芳正、岡田直樹(以上自民)
【常任幹事】衆院=☆松原仁(民主)、☆下地幹郎(無所属)、参院=☆谷川秀善、☆中川義雄(以上自民)、☆亀井郁夫(国民新)、元職=飯田忠雄、永野茂門
【監事】萩山教嚴、木村太郎(以上自民・衆院)
憲法審査会始動ねらう 議員同盟 きょう総会 民主幹部が新役員に(しんぶん赤旗、3月4日)
自民、民主、国民新各党と無所属の改憲派議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は四日に総会を開きます。新たに民主党から鳩山由紀夫幹事長、前原誠司副代表ら幹部の参加を得て新役員体制を発足させる見通しです。
同議員同盟は一月の臨時国会閉会時に、衆参両院議長に対し三百人をこえる衆参両院議員の賛同署名を添えて改憲原案の調査権限を持つ憲法審査会の早期始動を申し入れ、明文改憲論議の促進へ働きかけを強めています。
昨年五月に与党が強行した改憲手続き法に基づき同年八月には衆参両院に憲法審査会が設置されました。しかし、参院選での与野党逆転の結果を受け、審査会の組織と運営のルールを定める審査会規程の議決に野党が反対する中で、いまだに始動できていません。
「二大政党」で
その中での同議員同盟新役員体制への民主党幹部の参加。これは、自民・民主「二大政党」による改憲にむけた共同が、安倍前内閣の強硬な改憲姿勢のもとで破たんしたのを修復し、憲法審査会の早期始動につなげる狙いがあります。
民主党憲法調査会幹部の一人は、「総選挙を前にいま自民党と改憲で握手するのは難しいが、安倍内閣のもとでの強硬なやり方への一定の総括がなされるなら、憲法審査会を動かしていくことそのものには反対ではない」と話します。
また、四日の議員同盟総会では安倍晋三前首相が新役員に就任する予定です。侵略戦争の正当化、天皇中心の復古的改憲を主張する「靖国」派による影響力“回復”を目指す動きとみられています。
同議員同盟は昨年四月、旧自主憲法期成議員同盟を改称し改憲保守派を集めて結成されました。結成時の活動方針では「護憲派の運動(例えば九条の会)が盛んになっているので、ぜひ当議員同盟が中心になって、これに対抗する運動を強力に展開していくべきである」と強調。「九条の会」をはじめ草の根の護憲の取り組みに“対抗”し、改憲促進の国民運動の「中軸」となることを目指してきました。
教育で“普及”
自民党憲法審議会は、「当面、衆参の憲法審査会の始動の見通しは立たない」(同幹部)という中で、改憲手続き法にもとづく国民投票法制の整備に向けた検討作業を独自に始めています。テーマは投票年齢の十八歳への引き下げや、公務員の国民投票運動規制などです。
六日に予定される会合では、投票年齢の引き下げに対応して、小中学校、高校での憲法教育の実情などについて意見交換するとしています。教育の点では、改憲手続き法審議の中で自民党の法案提出者は「(投票年齢を引き下げるなら)若い世代に、今の憲法のよい点、時代に合わない点についてしっかりと認識してもらう」(〇六年十二月)と発言しています。同審議会が憲法教育の実情を検討しようとしていることは、二〇一〇年の国民投票法の施行―国民投票実施をにらんで、子どもたちに改憲派の主張を“普及”しようとする動きであり重大です。(中祖寅一)
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