小倉英敬『侵略のアメリカ合州国史』(05年、新泉社)を読み終える。
副題は「〈帝国〉の内と外」であり、
侵略の対象は国内にもあるとされている。
先住民の「浄化」は、部族間の対立を利用した
奴隷狩り(戦争捕虜化)によっても行われた。
対抗する部族連合の蜂起があったが、
それは伝統文化の再生を自覚した民族解放闘争であった。
アメリカ独立の革命は、イギリス本国との闘いとともに、
先住民の独立と自由を奪う征服の闘いでもある。
領土拡張を正当化した「マニュフェスト・デスティニー」は、
それを文明とキリスト教の普及によって道徳的に粉飾した。
メキシコとの戦争による領土拡張の1つの要因は、
イギリスがメキシコの負債を根拠に
カリフォルニアを購入するのではないかとの懸念であった。
この戦争では、ヒスパニックに対する人種差別の意識が見えた。
自由を語るアメリカが奴隷制を正当化するには、
奴隷を「終身奉公人」ととらえる、
奴隷を人格でなく財産ととらえる、
人種差別によって黒人を本来的に野蛮なものととらえる
などの思想的な工夫が必要だった。
アメリカ独立戦争では、英軍と植民地軍の双方が、
黒人奴隷の戦力化推進のための
形式的な奴隷解放を掲げることとなった。
独立後の合州国憲法には、
「奴隷」「黒人」という語は登場しない。
南北戦争において、北部は連邦維持を至上命題に
南部軍の攻撃力弱体化のために黒人解放を掲げたが、
戦後、黒人問題への関心は薄れていった。
それが、特に南部における奴隷制復活・継続の
重要な条件となっていく。
1894年の米西戦争をきっかけに、合衆国は
ヒスパニックやアジア人への支配を広げるが、
それを正当化する理由に「劣等人種」をあげることは、
国内での黒人差別や植民地主義の容認にも
つながっていった。
米西戦争は、植民地再分割戦争という意味で、
世界史上最初の近代的な帝国主義戦争となる。
これを通じて手にしたフィリピンは、
最初から、アジア進出への拠点と位置づけられていた。
同時期に、ドイツが中国の租借を開始したことへの
対抗という自覚も大きな役割を果たした。
さらに、アメリカは米西戦争において
自らをキューバの解放者と規定してもいた。
アメリカの建国神話が含んだ「自由」は、
イギリスでのような封建的なものに対する
革新的なイデオロギーとしての自由ではなく、
「アメリカ化」を海外に強制する
覇権外交のためのイデオロギーという意味をもった。
20世紀初頭の20年は革新主義の時代と呼ばれるが、
それは後に大統領となるウィルソンが、
海の向こうに「新しいフロンティア」の存在を宣言し、
それにもとづく海外進出が実行されていく時期でもあった。
時代はとぶが、戦後のマッカーシー
に象徴される反共ヒステリーは、
反共の名のもとに、共産主義だけではなく
女性、黒人、貧困など、あらゆる進歩的社会運動を
抹殺しようとするものであった。
以上、鍋焼きうどんをハフハフしながら。
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