永田議員ともども執行部総辞職とのことであるが,格別特殊な情報をもつわけでもなく,気の効いたことはいいがたい。それでも無理にひねれば,思いつくことは次のようなところであろうか。
1)そもそも前原体制は,05年選挙での大敗による岡田代表辞任をうけ「選挙で勝てる民主党づくり」をめざして発足した。
2)しかし,その「勝てる民主党づくり」の戦略は,それ以前からの自民党への政策的すりよりを深め,「戦争のできる日本づくり」も含めた自民党との「改革競争」をすすめるもの。中国脅威論を煽り,思いやり予算延長に手を貸し,米軍基地再編に賛同するなど,自民党政治との「改革競争」は外交の領域にも広まった。
3)ところがそのような政治路線であるから,自民党にかわって政権につくために(本当にめざしているとすれば),やれることは自民党とのパフォーマンス競争だけ。政策が同じであれば現政権が有利なのは当然で,民主党の巻き返しには自民党の失策が必要だった。それが執行部の「メール」問題へのとびつきと,これへの固執の背景となった。
4)「メール問題」検証チームによる報告書の概要を見ると,国会での質問が永田議員個人にまかされている。これでは近代の組織政党とほど遠い,驚くべき手工業の党である。結局,事実関係の究明そのものも回避したいようだが,国民や支持者に経過かを伝える義務があるとは思わないのか。そのような説明責任さえ自覚されない点でも,代議制の担い手とは思いがたい。
5)今回のメール問題は,結果的に国会の本当の争点をそらし,自民党の失政を助ける役割を果たした。4点セットだけでなく,06年度予算や米軍基地再編など国政の重大問題がいくつもあったにもかかわらず。「構造改革」の影の部分に,特に格差問題にマスコミや国民の目が向かいはじめたのは1月頃だが,その問題もメール問題にそらされてしまった。政権党のチェックできないだけでなく,政権党の悪政を自ら覆い隠してしまうのだから,まったくもって意義がない。あるのは害悪だけである。
6)民主党の歴代代表は4人である。鳩山3選はあったが,その鳩山氏もふくめて,菅・岡田・前原氏と4人とも最後は任期途中での辞任である。そもそも党としての綱領的文書や統一理念がない。それで基本戦略が自民党へのすり寄りであれば,党としての組織的理念的統一がないのも当然である。小沢氏の次期代表就任が取り沙汰されているが,結局,誰が代表になっても,この根本問題が解決されねば,うすっぺらなパフォーマンス政党であることは変わらない。だからこそ政治姿勢ではなく,「誰がうけるか」が代表選びでも話題の中心となる他ない。
7)経済同友会が,総辞職をとりあえず支持しながら,他方で挙党体制による信頼回復,責任ある野党としての役割を期待している。それはこの間の財界による2大政党制づくりにそった態度といえる。しかし,第二自民党をつくるということは,そもそも政権党との根本での闘いを放棄した,頽廃的な政党と政治家をつくることである。今回のメール問題は,それがそう簡単ではないことを示すものとなったようにも見える。
8)今回の問題で,小泉首相の余裕の記者会見など,一時的に自民に風がいくかに見える。他方で,憲法問題での自民・民主連携を展望して,ここで民主を追い詰めすぎないという自民党側の「配慮」もささやかれている。そもそも2大政党制への動きは,自民党の長期的な低落への受け皿として画策されたものであり,民主の安定は自民にとっても不可欠である。それがそう簡単でないことが示された点で,執行部総辞職は自民党政治の新たな困難を示すものといえるかも知れない。
8)いま必要なのは,憲法にせよ「構造改革」にせよ,国民多数者の利益にそって政治の基本路線そのものを闘わせる本当の野党の取り組みである。共産党にはがんばってもらいたい。また特に憲法問題では,かつて革新自治体の一翼をになった社民党の諸勢力に,いつまでも民主になびくのでなく,あらためて勇気をもって共産党との共同にすすんでほしいと思う。
以上,とあるインタビューへの準備メモでした。
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