政府税調と自民税調のあいかわらずの対立である。
貯蓄から投資へ,大企業の競争力強化,消費税増税,このあたりの意見は一致。
相違の基本は,自民税調が一定の税収確保の上で,これを国民による政治批判がいくらかでも抑えられる形で利用したいということか。
他方で,無駄な大型公共事業温存への力も強く,「官邸主導」への反発もある。
「東京新聞のインタビューに21日、応じた津島雄二自民党税制調査会会長は、法人税率引き下げや証券税制の優遇措置などで、本間正明政府税制調査会会長との考え方の違いを鮮明にした。さらに「課税権の行使は立法府が決める」と言明。税制改正は政府でなくあくまで自民党主導で行う考えを強調した。
(聞き手=経済部・金森篤史)
――成長戦略を掲げる安倍内閣では、企業が国際的競争力を保てるよう法人税率を引き下げるべきだとの声が強い。
「法人税収が予定より増えたからといって、(税率を下げて)返せという議論は財政学のイロハに反する。(公共事業などで)不況時に拡大した財政赤字は、好況になった時に埋める必要がある。法人税率は、日本が厳しい国際競争、少子高齢化の中を生き抜くため、という見地から議論すべきだ。法人税は本年度、増収になっても十八兆円くらいだろうが、企業は年金のために二十兆円も払っている。この両方を議論しなければいけない」
――議論する時期は。
「基本的な制度設計については、所得税、消費税、さらに社会保障の在り方という全体像をみて、二〇〇七年度以降、抜本的な税制改正の実現を目指して取り組む。だからといって、それまで何もしないとは言わない。(減価償却制度の見直しなど)産業の競争力強化、中小企業のための税制の改善など、当面の課題には積極的に取り組む」
――安倍内閣では消費税率の引き上げについて、税制の抜本改革を検討する来年、議論するという方向性が出ている。
「大事なのは国民合意だ。社会保障給付のコストを所得税、消費税などで支払うのか。あるいは保険料でまかなうのか。国民的なレベルで議論して合意を形成する。合意を目指した上でやるという辛抱強い姿勢の方が、早く結果が出る。また、消費税抜きで税制を論じたら、社会保障制度は成り立たないが、消費税の変更を安易に議論してはならない」
――株式の譲渡益、配当に対する税率は、本来の20%から10%へと軽減されており、譲渡益への優遇課税は〇七年十二月末、配当は〇八年三月末にそれぞれ期限を迎える。政府税調は打ち切りの方向で検討している。
「期限が来たから、そこでおしまいと単純に言うべきではない。日本の株価は異常な低金利を前提に形成されてきた。金利が正常化して上がってくるから、株価は押し下げられる傾向にある。そういう局面で、証券市場ばかりでなく、経済全体への影響、つまり『貯蓄から投資へ』の流れを進める必要性を念頭に置いて結論を出したい」
――道路特定財源をめぐっては、今年の「骨太の方針」で一般財源化を前提に年内に具体案をまとめる方針が示された。
「首相が言っているのは『一般財源化を基本として検討する』ということ。『道路財源だから、我慢してガソリン税などを払っている』という声も強い。それも念頭に置いて納税者が納得する結論を出す必要がある」
――政府税調は、安倍政権の成長戦略に沿う形で税制改正論議を進めている。
「政府の諮問機関である政府税調とわれわれとは違う。われわれは国民のために決定する機関であり責任は重い。課税権の行使は、国民に対する深刻な公権力なのだから、権力者といえども乱用は控えなければいけない。その考え方から生まれたのが議会制民主主義。あくまでも立法府が決めなければならない」」
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