アメリカ下院に日本政府の「慰安婦」問題にたいする曖昧さを残さぬ謝罪をもとめる決議案が出されている。
以下はこれを提案したマイク・ホンダ議員の提案説明。
ホンダ議員は過去の日本政府閣僚による謝罪発言の存在を知った上で,実際の行動がその発言の真意を疑わせるものになっていることを問題にしている。
ホンダ議員は,かつての戦争で日系人であることを理由にアメリカで収容所にいれられた経験をもつという。
翻訳は,女たちの戦争と平和資料館のHPからコピーさせてもらったものである。
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2007 年1月31 日
「議長、私は今日、1930 年代から第二次大戦継続中のアジアと太平洋諸島の植民支配および戦時占領の期間において、日本の帝国軍の下で想像を絶する非人間化に苦しんだ、20 万人を超えるアジアの「慰安婦」に対する強い支持のうちに起立しております。
この女性たちの体験は、そのむごたらしさにおいて前例を見ないものであり、日本政府によって公的に遂行されたものでありますが、彼女たちは集団強かん、強制中絶、屈従、またやがて身体切除、死や結果的自殺に至る性暴力を耐え忍びながら、今日に至るまで、この悲劇から正義を得ることがかなっておりません。
彼女たちの望みはささやかなものです。日本政府がこの犯罪に対する完全な歴史的責任を認め、謝罪し、受け入れることなのです。
本日、私は、日本に対し第二次大戦中にその帝国軍の下で慰安婦が耐え忍んだ悲劇について、正式に、かつ曖昧さのない形で、謝罪し、認めるよう求める決議を提案いたします。
日本国の総理大臣が公式謝罪を発表すべきであるばかりでなく、日本が、曖昧さのない形で責任をとらなければなりません。
このような決議が果たして必要かどうかに疑念をもち、わが国と日本の間の強い友情と同盟関係に影響を与えるのではないかと警告する者もあります。日本はすでに謝罪したのであり、この決議はその認識を欠いていると論じる者さえあります。確かに、これまでに日本の複数の首相が慰安婦に関連する声明を発表してきたことはほんとうです。
しかしながら、日本政府がこれらの声明を、明白な敬意をもって見ているわけではないことは明らかです。また慰安婦たち自身がこれらを公式の謝罪とは認めていません。日本はこの問題に関する自己の立場を曖昧なものにしてきました。このことは、過去の声明や教科書を変更しようとする最近の複数の試みによって明らかとなっています。
例えば1993年、当時の河野洋平官房長官は日本の慰安婦について有望な声明を出しました。彼女たちの受難に対する日本政府の真摯な謝罪と後悔【訳注-「おわびと反省」の英訳はこのようなニュアンス】を表明したものでした。今日、日本の自由民主党には、河野官房長官の声明を見直し、可能ならば撤回さえしようと奮闘する人たちがいるのです。
さらに日本政府は、日本の教科書において「慰安婦」制度を軽視しようとし続けています。私たちは自らに問わなくてはなりません、もし日本がほんとうに自らの過去を受け入れ、自らの帝国軍がこの女性たちに何を無理強いしたかを認めているならば、何故彼らは、教育を通じてこの知識を抑え込もうとするのか?と。
この悲劇に関する教育は、今後女性に対する暴力が、特に紛争時において、決して受容されるべきでも繰り返されるべきでもないことを確保するために重要です。教科書の抑圧は、河野長官の声明を見直そうとする努力と合わせて、落胆させられるものであり、日本がこの女性たちに対する謝罪について揺らいでいることを示しています。
私がここで明確にしておきたいのは、私が我々と日本の間の強い友情の重要性を認識し評価していることであります。私は、アジア女性基金を通じて慰安婦生存者に金銭的賠償を行おうとした日本の努力を評価しております。アジア女性基金とは政府によって着手され資金の多くを政府に負う民間基金であり、その目的は「慰安婦」に対する償いをねらいとしてプログラムやプロジェクトを実行することでありました。
アジア女性基金は2007 年3月31 日をもって解散することとなっています。私は、アジア女性基金が重要であったということには同意しますが、現実は、大多数の慰安婦生存者がこれらの資金の受け取りを拒否したということであり、日本政府からの、疑いの余地も曖昧さもない謝罪がなければ、その金は彼女たちにとって意味をなさなかったということなのです。
この決議の目的は、日本を叩いたり辱めたりすることではありません。この暴虐を生き抜き今もまだご存命の数少ない女性たちのため、正義を達成することについてのものなのです。我々は、これほど長い年月の間知られずにきたこの重大な人権侵害を、認識しなくてはなりません。
さらにこの決議は、和解を促進し助けることを目指しています。米国議会がかつてHR442号、1988 年の市民権法を採択したときのようにです。これは、第二次世界大戦中に不正義にも収容所に入れられた日系米国市民に対する公式の謝罪でした。年少の頃に収容所に入れられた人間として私は、自分自身のこととして、我々は過去に対して無知であってはならないこと、政府の行為を通じての和解は長期にわたる効果を持つことを知っております。
議会でこの問題を前進させることについて、我が良き友であったレイン・エヴァンズ元議
員の努力に触れることなくしては、不注意のそしりを免れないでしょう。私は、誇りをも
ってレインから渡されたたいまつを掲げ、慰安婦のみなさんと、またこの問題を米国議会
が取り上げるよう彼女たちのために懸命に努力した数々のコミュニティとに希望をもたら
したことについて、彼を称えるものであります。
議長、率直に申すならば、世界中でこの重荷とともに生きる数少ない慰安婦生存者は、今や亡くなりつつあります。我々は、この決議を進めることによって、彼女たちがいくらか
でも心の平安を得られるようにしなくてはなりません。この残虐行為を生き抜いた女性た
ちにとって、この決議は、我々の国家が彼女たちを支持し、彼女たちの正義を求める声に耳を傾けていることを示すものなのです。」
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