3月31日の日韓外相会談で,韓国側は安倍首相の「慰安婦」発言を厳しく批判した。
麻生氏は「河野談話」の継承という「公式」見解を強調したようだが,首相自身が「狭義の強制性」を否定する発言をすでに行っており,そこに本音があることは誰にも見通しやすいこと。
竹島・独島問題については,何より事実の探究とその理解に関する話し合いが必要だが,麻生氏の「国定教科書ではなく,政府は検閲できない」との発言は,集団自決における軍の命令を削らせている文部科学省の実際の行動とは合致しない。
その二枚舌ぶりもまた,内外世論に受け入れられるものではない。
日韓雪解けムードに影 早期打開は困難か(中国新聞,4月1日)
【済州島(韓国)31日共同=木下英臣】三十一日の日韓外相会談では、宋旻淳外交通商相が麻生太郎外相に対し、従軍慰安婦問題をめぐって安倍晋三首相を厳しく批判、雪解けムードも漂っていた日韓関係に歴史認識問題が再び影を落とした。批判の矛先は直接首相に向けられており、早期の事態打開は難しそうだ。
北朝鮮の拉致問題進展には中韓両国との緊密な連携は不可欠なだけに、歴史認識で広がった溝が波及しないよう早急な対応が求められる。
今回の会談が韓国の保養地・済州島で設定されたこともあり、日本側は「胸襟を開いた率直な対話による外相間の信頼醸成」(外務省幹部)を主眼としていたが、思惑は完全に外れた格好だ。会談冒頭の写真撮影でも宋氏に笑顔はなく、韓国側が事態を深刻視していることをうかがわせた。
麻生太郎外相は慰安婦問題で河野洋平官房長官談話を継承する政府の立場を必死に強調したが、韓国側がこれには特段の反応を示さなかったとされ、とても納得する気配はない。
両外相は北朝鮮問題での連携強化を確認できたものの、韓国側は靖国神社のA級戦犯合祀問題、竹島(韓国名・独島)領有権問題などでも日本の対応を厳しく追及、麻生氏は釈明に多くの時間を費やしたのが実態だ。
慰安婦問題めぐり遺憾表明 日韓外相会談で韓国側(中国新聞,3月31日)
【済州島(韓国)31日共同=木下英臣】麻生太郎外相は三十一日午後、韓国・済州島を訪れ、宋旻淳外交通商相と会談した。宋氏は安倍晋三首相らの従軍慰安婦問題をめぐる発言を念頭に「日本の指導者が間違った発言をしている」と、遺憾の意を表明した。麻生氏は従軍慰安婦問題に対する「おわびと反省」を表明した一九九三年の「河野洋平官房長官談話」を「継承する」と明言、理解を求めたが、歴史認識をめぐる日韓の溝の広がりが浮き彫りになった。
北朝鮮核問題では、六カ国協議の早期再開を目指し連携強化を確認するとともに、同協議の共同合意文書に明記した核放棄への初期段階措置の「着実な実施が必要」との認識で一致した。
宋氏は会談冒頭、日韓関係について「歴史認識問題によって前に向かって進むことが難しくなっている。今日の天気のように、気流がいい状況ではない」と述べ、従軍慰安婦問題をめぐる一連の発言や「河野談話」見直しの動きに強い不快感を示した。宋氏は歴史認識問題について「過ちを犯した過去の世代ではなく、私たちが解決していくべきだ」と指摘した。
麻生氏は北朝鮮政策に関し、拉致問題で進展がない限り、北朝鮮に対する経済・エネルギー支援に応じない日本の立場を重ねて説明した。
日本の文部科学省の高校教科書検定で竹島(韓国名・独島)を自国の領土と記述した教科書を合格させたことについて、宋氏は「独島に対するどのような領有権主張も受け入れられない」と指摘、麻生氏は「国定教科書ではなく、政府は検閲できない」と説明した。
会談では五月中下旬に東京で、日韓両国の安全保障会議を開催することで合意。日韓の排他的経済水域(EEZ)境界画定交渉や盧武鉉・韓国大統領の訪日時期についても協議したもようだ。
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