フランスでも非正規雇用の拡大が社会問題となっている。
とはいえ,日本の非正規との待遇格差はきわめて大きい。
29歳以下の若い世代が多いことを反映しているが,それでも賃金は正規雇用よりマシとの回答さえ多いという。
日本型非正規の拡大をグローバリズムの必然などという,ごまかしの議論を鵜呑みにしてはいけないということである。
仏の非正規労働 日本と待遇大違い 失業の危険高いが 賃金・保険・休暇 正規と同じ(しんぶん赤旗,4月2日)
フランスでも有期契約雇用や派遣労働などの不安定雇用が広がっていますが、待遇では日本とは大違い。年功・昇進の機会がない分、正規雇用との格差が生じるものの、同じ仕事では賃金だけでなく、社会保険、休暇でも正規雇用労働者と同等です
「不安定雇用は一種の社会的拷問です。何よりも将来の生活設計を描けないことが一番の問題です」
仏自動車大手ルノーの労組指導者フィリップ・ノエル氏はこう指摘します。同社では常時、全体の15%前後(八千―一万人)を派遣労働者に頼っているといいます。
先日、雇用省が発表した調査報告「労働者から見た短期契約」もこの指摘を裏付けています。
それによると、数カ月の有期雇用契約者の場合、「失業の危険が大きい」と考える人は79%、「長期的な生活設計が立てられない」人は85%に達しました。派遣労働者ではそれぞれ81%、87%と一段と厳しい見方になります。
賃金10%上積み
その一方、日本と大きく異なるのは待遇面です。有期雇用契約労働者の61%、派遣労働者の82%は、正規社員と同じ仕事の場合、「賃金は悪くない」と回答。派遣労働者の場合はむしろ「より高い賃金が得られる」としています。
フランスでは学生アルバイトであっても労働はきちんとした契約に基づき、有期や派遣の短期雇用契約の場合でも、正規社員と同様に企業は社会保障負担分の支払い義務が生じ、労働者は同じ条件で有給休暇もとれます。また契約満了時には、皆勤が条件になりますが、「不安定雇用手当」として契約期間の全賃金の10%が上積みして支払われます。また派遣労働者の場合は、もし有給休暇(週二日の定休日を除く)を一日も消化しないで勤務した場合には、さらに10%が上積みされることになっています。
有期雇用契約、派遣労働がフランスに登場したのは一九七〇年代のこと。労働総同盟(CGT)傘下の派遣労働者組合(USI)のヤニク・プーラン書記長は「景気の安全弁としての人買い」だと、当時大きな反対運動を起こし、「社会保障への加入義務は真っ先に勝ちとった」と説明してくれました。
50%が29歳以下
ただ建前としての同一労働・同一賃金は、短期雇用契約労働者の場合、年功・昇進の加算がない分、現実には正規社員との格差が生じます。ルノーの四大工場の一つでは「平均して20%の差がある」と聞きました。
派遣労働者が契約満了時の手当の加算や皆勤による上積みによって「(正規社員)より高い収入が得られる」のは、派遣労働者の50%が二十九歳以下という事情を反映しています。
雇用省の調査報告によると短期雇用契約労働者は二〇〇四年現在、百七十万人で、民間企業労働者の10%。うち有期雇用契約は百二十万人、派遣労働者は五十万人としています。
同調査報告にはパート労働が含まれていませんが、国立統計経済研究所の資料によると、パート労働者は〇五年現在、四百二十八万人で全就業人口の17・2%を占めています。
最近フランスでは雇用情勢が改善したといわれます。今年二月の失業率は8・4%(二百万人)で、一九八三年六月以来、四半世紀ぶりの「低」水準になりました。しかし統計上の失業率が改善し始めた一昨年春以降、新規雇用は70%が不安定雇用と呼ばれる有期雇用契約か派遣労働あるいはパート労働です。
一年前の若者解雇自由法と称された「初採用契約(CPE)」の大反対運動に見るように、むしろ雇用省の調査以後に不安定雇用の問題は深刻化しているとみなければなりません。
コメント