南アジアで唯一「地域協力連合」に未加盟だったアフガニスタンが加盟した。
政治的経済的孤立からの脱却や,パキスタンとのあいだに相互信頼をかかげての加盟であり,決定は既加盟7ケ国の合意である。
他方で,米軍の長期駐留や,アフガン戦争をきっかけとして,アメリカ主導でつくられたカルザイ政権の実態については疑問も残る。
「連合」内部で大きな政治力を発揮するとは思えないが,慎重な観察が必要だろう。
南アジア協力連合 アフガンの加盟 パキスタンとの関係で前進(しんぶん赤旗,4月11日)
三、四両日ニューデリーで開催された南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議で、アフガニスタンの加盟が正式に承認されました。SAARC発足は一九八五年です。南アジアでただ一カ国未加盟だったのがアフガンでした。
抱き合い喜ぶ
首脳会議開会式で、これまでの加盟国インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、ブータン、スリランカ、モルディブの七カ国首脳が「アフガン加盟」を承認すると、会場からは大きな拍手がおき、アフガンのカルザイ大統領とパキスタンのアジズ首相は抱き合って喜びました。
八七年と八八年、アフガンの加盟が議論されたとき、パキスタンは反対しました。この時期、アフガンに駐留する旧ソ連軍の完全撤退がまだ実現していませんでした。
パキスタンには、世界各国からアフガンのソ連軍とたたかう“イスラム聖戦士”が集まり、出撃拠点にしていました。アフガンとパキスタンはいわば「敵対関係」にありました。
現在も決して良好とは言い難い関係です。カルザイ大統領が「アフガンの旧タリバン政権勢力がパキスタン領内を拠点に越境攻撃を繰り返している」と非難すれば、パキスタン側は「タリバンのテロはアフガンの問題」と反論しています。
しかし、アジズ首相は開会式の演説で相互信頼の重要性を強調しました。「南アジアの政治環境は紛争と相互不信によって悪化したままだ」「平和促進のためには対話と妥協により、意見の不一致や紛争を解決する必要がある」
カルザイ大統領は「南アジアの家族となれた」と喜び、「アフガンの政治的経済的な孤立を繰り返してはならない。経済協力を追求したい」と語りました。
現在、南アジア諸国から八万人の建設技術者、労働者がアフガンに派遣され、復興のために働いています。アフガンにとってSAARC加盟国との協力は、国家再建に不可欠です。トルクメニスタンの天然ガスをアフガン、パキスタン、インドへと輸送するパイプライン計画では、アフガンが重要な位置を占めています。
多極主義追求
米軍など外国軍のアフガン駐留が状況を複雑にしています。カルザイ大統領はこの点について演説では触れませんでしたが、「アフガンは、地域や国際問題を平和的で慎重に解決することを追求している。わが国の外交政策はSAARCに代表される多極主義である」と述べました。
長期間かつ大量の外国軍の駐留を認めているアフガンですが、SAARC憲章が定める「南アジア地域の平和、安全、友好、発展の促進」を志向しています。
「SAARCにとってアフガン加盟は、まちがいなく重要で画期的な出来事である」(バングラデシュ・アハメド暫定首相)。平和への努力と協力の実践で、地域機構としての実績を積み重ねれば、国際社会からも、このような評価が得られるでしょう。
(ニューデリー=豊田栄光 写真も)
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