改憲問題である。
中川幹事長がいう「普遍的価値と文化・伝統」というのは、アメリカの要求と日本の「伝統」のミックスということだろう。
自民党は改憲を2段階で行う策も考え始めたようだ。とはいえ、果たしてこれが自民党の本流だろうか。
他方、自民・民主・国民・無所属でつくる超党派の「準備会」が、海外での戦争を前提に、国の名誉や天皇の元首化をはかる、2004年の自民党改憲「たたき台」路線での改憲案を示している。
こちらは「伝統」をもっと重視した改憲を行えという動きである。
各党が憲法記念日談話 「新憲法」「加憲」「改憲阻止」(東京新聞、5月3日)
憲法記念日に当たり各党は三日付で談話などを発表した。
▽自民党(中川秀直幹事長談話) 国民投票法案は必ず今国会で成立させる。新憲法制定を政治日程に入れるという方針の下、普遍的価値と文化・伝統を取り入れた「美しい国」づくりのための憲法草案を考える国民運動を展開していく。
▽民主党(鳩山由紀夫幹事長談話) 憲法を変えるかどうかは国民が決める問題だ。安倍晋三首相は新憲法制定を叫ぶ一方、集団的自衛権の行使を認める解釈改憲の方針も示している。およそ立憲主義とは無縁の時代錯誤の考え方だ。
▽公明党(党アピール) 国民主権など憲法三原則を堅持しつつ、環境権など新たな理念を加えて補強する「加憲」が最も現実的で妥当だ。九条は一、二項を堅持した上で、自衛隊の存在や国際貢献を加憲の対象とするか検討している。
▽共産党(市田忠義書記局長談話) 安倍首相は在任中の改憲を明言している。中心的な狙いは九条を改変して「自衛軍」保持を明記し、米国とともに「海外で戦争をする国」につくり変えることだ。改憲阻止に国民が立ち上がるよう訴える。
▽社民党(党声明) 憲法はわが国が平和国家として歩むことを定めた国際的な公約だ。国民投票法案の強行採決や教育基本法改悪など一連の動きは、安倍内閣が戦後体制を否定し、根底からつくりかえようとする意図を顕著に示している。
▽国民新党(亀井久興幹事長談話) 国民の意識が変化し憲法と乖離(かいり)しているのは事実で、見直す必要があると考える。憲法の精神と基本原則を維持し、改正の発議が円満に行われるよう党利党略によらない議論を積み重ねるべきだ。
憲法施行きょう60年 2段階改憲自民が検討 9条は後回し(東京新聞、5月3日)
日本国憲法は3日、施行から60年を迎えた。これまで、一度も改正されることはなかったが、安倍晋三首相は任期中の憲法改正を目指すことを明言。施行60年にあたっても、改憲に強い意欲を示す異例の首相談話を発表した。憲法を改正する手続きを定める国民投票法案も今国会で成立する見通しとなっている。憲法改正の発議は3年後に可能になり、具体的な政治日程に組み込まれることになる。憲法改正最大の争点は戦争放棄をうたった9条。しかし、自民党は環境権やプライバシー権などを制定する改憲発議を優先し、9条の改正は、次の機会にする2段階改憲の検討に入った。
自民党は二日、国民投票法案が今月中旬に成立する見通しになったのを受け、まず民主、公明両党や国民の賛成を得やすい環境権やプライバシー権の新設などの賛否を問う国民投票を行い、焦点の九条は後回しにする二段階改憲の検討を始めた。
国民投票法案は、発議について「内容が関連する事項ごとに区分して行う」と規定。項目ごとに改憲の賛否を問う方式を導入した。一方、共同通信が四月中旬に実施した世論調査では「九条改正は必要なし」との回答が44・5%に上ったのに対し、「改正の必要あり」は26・0%にとどまった。
この発議の方式と世論の動向を踏まえて、自民党では「まず国民が入りやすい事項から発議して国民投票に慣れてもらうことを検討する必要がある」「各党が反対できない事項から改憲して、九条は最後だ」といった意見が出ている。
自民党は、七月の参院選後の臨時国会で衆参両院に新設される憲法審査会を舞台に、改正原案の骨子を作成する方針だ。
憲法審査会は法律が施行されるまで三年間、調査に専念すると規定されているが、自民党は骨子なら策定可能と判断。衆院憲法調査会が二〇〇五年四月にまとめた最終報告書をベースに議論を進めたい意向だ。審査会は衆参両院に設置されるため、合同審査会で調整しながら議論を進める。
<解説>発議に向け着々と布石
自民党が二段階改憲方式の検討に入ったのは、国民投票法案の施行から三年後に改憲の発議が可能になれば、すぐに対応できる態勢を整える狙いがある。
国民投票法案が成立すれば、改憲の動きが加速するとの懸念に、公明党幹部は「少なくとも三年間は発議できない。すぐに改憲が実現するわけではなく、将来の話だ」と打ち消してきた。
しかし、自民党は「三年間ものんびりとしているつもりはない」(閣僚経験者)として、改憲原案の骨子など準備万端整えて、発議の解禁に備える方針だ。
自民党が、国民投票法案の成立を改憲への大きな前進と位置付けて、これを機に改憲への歩みを一層速めようとしているのは疑いない。
しかし、最近の世論調査では、民意は改憲の賛否で割れている。安倍首相が在任中の改憲に強い意欲を示している以外、自民党がなぜ改憲を急ぐのか、説得力ある説明は聞かれない。
国民投票法案自体にも、さまざまな問題点が指摘されている。与党は一度立ち止まって考えてみるべきではないか。
防衛軍に国益条項… 超党派議員が「新憲法大綱案」(産経新聞、5月2日)
超党派の保守系国会議員有志でつくる「新憲法制定促進委員会準備会」(座長・古屋圭司自民党衆院議員)は2日、現憲法を全面改正するための「新憲法大綱案」をまとめた。準備会は「党派を超えて団結し、新憲法の制定に向けて具体的な行動を開始する」(提案趣意書)方針で、大綱案を改正論議のたたき台と位置づけている。
大綱案は、平和主義を堅持し、「防衛軍」の保持と集団的自衛権の行使を容認した。武力攻撃やテロ、大規模災害時への備えとして首相に一時的に非常措置権を与える「国家非常事態条項」の新設を盛り込んだ。
また、「国家の主権、独立および名誉を護持し、国民の生命・自由・財産を保全することが国家の最重要の役割」として、国の領域の保全や資源、環境の保護を促す国益条項を創設することを打ち出した。
天皇については、象徴天皇制を維持しつつ元首と明記する。また、昨年の皇室典範改正問題の混乱を踏まえ、現憲法で「世襲」(第2条)と定める皇位継承について、世襲に加え「皇統に属する男系男子」の要件を新憲法に明記することにした。
前文は、歴史や伝統的価値観など国の特性、国柄を継承発展させていくことを宣言するものと位置づけ、国民主権の議会制民主主義▽基本的人権の尊重と、国民が権利や自由を公共に役立てる▽国の主権・独立・名誉の擁護と世界平和の希求-などを国の基本原理とした。
「準備会」は自民党の萩生田光一、今津寛、民主党の松原仁、笠浩史、国民新党の亀井郁夫、無所属の平沼赳夫-の各氏ら国会議員25人で構成。3日午後1時から東京都千代田区平河町の砂防会館別館で開かれる民間憲法臨調主催の公開憲法フォーラムで正式発表する。
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