福田康夫・衛藤征士郎『一国は一人を以って興り、一人を以って滅ぶ』(KKベストセラーズ、2005年)を読み終える。
明石散人氏を聞き手とする鼎談なのだが、特に福田氏の発言に注目して読んでみる。
いわく、郵政民営化は正しかった、「構造改革」も正しい、消費税増税も仕方がない、アメリカは民主国家として成熟している、イラク派兵はもちろん正しい、憲法改正は大前提……。
当然のことではあるが、当たり前すぎるほど自民党幹部にふさわしい発言ばかり。
あえて注目点を見つけるならば、日米関係にくわえて多極的友好関係が必要だと、小泉流の日米同盟唯一主義に距離をとったところくらいか。
とはいえ、その点の転換は、不承不承ではあっても、すでに安倍首相のもとで行われてしまっている。
当人の意図がどうあれ、福田氏が果たす役割は、靖国派の過度の台頭によるアメリカとの摩擦、財界の経済戦略との不整合を取り除くことのみとなっていくのだろう。
麻生氏でなく福田氏という自民党内の急速な「選択」の変化も、それを求める力の強さを表しているのだと思う。
新憲法起草委員会で、「安保及び非常事態に関する小委員会」委員長だった福田氏は、改憲後も日本の平和主義は明白であると述べている。
だが、自衛以外の目的での、しかも国連の同意を必要としない自衛「軍」海外派兵は、いったいどのような「平和」主義の現われだろう。
その点の説明はまったくない。
総理に「なりたいと思ったことはないし、資格もないですよ」。
おそらく1年前のポスト小泉選挙で安倍氏と闘う勇気と力があれば、福田氏は日米同盟堅持のもとでの東アジア重視路線を売りにすることもできたのだろう。
しかし、時期はすでに失われた。
今の頼みは、ひとえに財界とアメリカの支持であり、課題はアメリカの対東アジア政策の枠内に、日本の外交を位置づけなおすことである。
その政治路線の基本は、「構造改革」の推進と、靖国色の希薄化したもとでの改憲とという、実に平凡な「財界・アメリカいいなり」政治に見える。
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