「教育再生会議」には、①「美しい国」礼賛の立場からの戦後教育の総否定、②競争を原動力とした学力再生の二面がある。
前者だけでなく、後者の側面についても、政府・自民党内部に不協和音が響いている。
この会議に明るい前途が待たないことは明らかである。
混迷 教育再生会議 担当補佐官は再任だが… 文科相「バウチャー、なじまぬ」(しんぶん赤旗、10月1日)
安倍晋三前首相の突然の辞任で、存続が危ぶまれた“安倍氏肝いり”の教育再生会議。福田康夫新内閣では、山谷えり子教育担当補佐官が再任されたものの、閣内から「軽視発言」が続くなど混迷が続いています。
町村信孝官房長官は二十六日の記者会見で、年内に提出する予定だった第三次報告について、「努力目標は十二月らしいですが、充実した報告書をまとめるにあたって、いつでなければならないという会議ではない」と述べ、とりまとめを急がない考えを示しました。
この発言について、教育再生会議事務方は「まだ今後のスケジュールは決めていない。官房長官の個人的な考えとして、年内には間に合わないという一般論を述べたのではないか」と困惑気味です。
二十七日のNHK番組では、渡海紀三朗文部科学相が、同会議が今後議論する重要なテーマに挙げている教育バウチャー(利用券)制度について、「これで学校を選択するといっても地域差がある。義務教育という憲法二六条で保障されている権利が国民に担保されるのか。差ができる心配がある。教育には競争原理になじまない部分もある」と慎重姿勢を見せました。
同番組では、増田寛也総務相も「地方、とくに中山間地域では(バウチャー制度は)まったく考えられない。地域の実情をみてもっと議論する必要がある。地方部では、あそこ(再生会議)でなされている議論でどうかなというのはある」と不信感を示しました。教育バウチャー制度は、生徒数に応じて学校に予算を配分するもので、入学者が少ない学校を予算で差別することにつながり、国民からの批判も多く出ています。
また、自民党参院議員に転じた義家弘介氏が務めていた再生会議担当室長のポストはいまだに空白。「調整はしているが決まってはいない」(事務方)状況です。伊吹文明前文科相が「再生会議が引き継がれなくても困ることはないのではないか」(十二日)と述べるなど、一年前の“熱気”は感じられません。
しかし、再生会議の提言は、教員への統制を強化する教員免許更新制度などがすでに導入されました。提言に盛り込まれた授業時間数一割増や道徳の教科化などを具体化するため、中央教育審議会で議論が進んでいます。教育バウチャー制度、学校選択制の全国的導入などは財界が一貫して求めてきた課題です。
山谷補佐官は二十六日、「福田首相も『社会総がかりの教育再生』を掲げている。方向性はそれほど変わらない」と強調しています。教育再生会議への警戒はひきつづき必要です。
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