井戸知事が、震災復興と財政危機を直結させて語っている。
国の「三位一体」改革があり、深刻な震災被害があったのは事実。
だが、今日の財政危機には、大企業優遇の補助金制度、もはや塩漬けとなった無数の土地買収、必要性のまるでわからない大型開発などが大きな役割を果たしている。
そのすべてを震災に解消するは、実に無責任な行為である。
震災13年 兵庫県知事、神戸市長に聞く(神戸新聞、1月16日)
阪神・淡路大震災から十七日で十三年を迎えるのを前に、井戸敏三知事と神戸市の矢田立郎市長が神戸新聞社のインタビューに応じた。井戸知事は、復旧復興は一区切りとなり、今後は持続可能な行財政構造への転換が急務であるという認識を示す一方、実践的な災害弱者対策などに力を入れていく姿勢を示した。矢田市長は、被災都市として住宅をはじめとする耐震化を一層促進するとともに、震災の体験・記憶の伝承のため、小中学校での防災教育に力を入れる意向を明らかにした。(聞き手・小森準平、藤原学)
■災害弱者対策に力入れる 井戸敏三・県知事
-「復興宣言」を出す考えは。
「重要なのは我々の歩みや教訓をいかに他の災害に生かしてもらうか-ということ。復興を終えたと宣言することではない。住宅再建共済制度の加入率が伸びないなど、被災地でも意識が薄れてきていると感じる。だからこそ、一月十七日を『ひょうご安全の日』と定め、追体験をし、地域の安全安心を考える機会にしている。風化を防ぎ、教訓を発信するためにも、復興宣言はすべきでない」
-震災復興が大きな要因でもある財政危機で厳しい行革を迫られている。
「復旧復興では、短期間で集中投資が必要だった。例えば皆さんが家を買うとき、貯金を下ろして頭金にして、ローンを組まれると思う。震災復興も同じで、県は基金を崩して県債を発行した。やはり負担の解消には二十年、三十年はかかる。復旧復興に一区切りがついた今後、持続可能な県政にするため財政構造を見直さなくてはならない」
-行革と防災の両立は。
「公共施設の耐震化だけを取っても、防災には非常にお金がかかる。優先順位は高いが、財政枠組みの中でバランスを考えて推進せざるを得ない。大切なのは選択と集中で、メリハリをどう付けるか。若干のあつれきは生じるだろうが、説明責任を果たしながら理解を求めていく」
-力を入れる施策は。
「地域ごとの災害弱者対策を推進する。誰が、どこに、どのように避難させるのか-などの計画をつくった上で避難訓練をすることが大切。また、長周期の地震が来たときに超高層ビルの生活空間がどうなるのかという実験を三木市の実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)と一体で行い、その成果を交互に問うような取り組みも必要だと考えている」
■耐震化の必要性アピール 矢田立郎・神戸市長
-耐震化に向けた施策を次々と出している。
「昨年から学校や病院など大勢の人が利用する特定建築物の耐震診断費用の一部を補助する制度を創設した。また、現在84%の住宅の耐震化率を二〇一五年度までに95%に、防災拠点となる主な公共建築物は100%にする目標を立てた。命を守る観点からも耐震化の必要性を強くアピールし、市民と意識を共有して推進したい」
-耐震診断をしても工事に進む人は少ない。
「一般的な家で耐震補修工事に約百五十万円かかるといわれるが、何か技術的な方法を開発して経費を抑える方策を一日も早く考えたい」
-齢者の見守りについて。
「地域というものは継続して強いコミュニティーをつくっていくのが重要。民生委員やボランティアなどに細かく回ってもらっており、隣近所の高齢者を気遣う輪が広がっている。今後も地域の住民が中心となってまちづくりや見守りを進めてもらい、行政はその下支えをやっていく」
-今後、力を入れていきたい施策は。
「特に小中学校の児童・生徒に対して防災教育を行うことが重要だ。近いうちに到来するといわれている南海・東南海地震への対応をしなければならないことを市民は痛感している。次世代の防災の担い手である子どもたちに、初動と備えを踏まえた減災や耐震化について伝えていかなければならない」
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