「社説 格差の実態に目を向けよ 労働経済白書」(西日本新聞)。
これは事実に即した,非常にまっとうな社説だと思う。
「格差問題に一石を投じる分析結果を、厚生労働省が労働経済白書としてまとめた。副題は『就業形態の多様化と勤労者生活』である」。
「1990年に全体の2割だった非正規従業員の比率は2003年に3割を超え、その後も増え続けている」「注目すべきは、若年層で非正規雇用の比率が急上昇していることだ。92年からの10年間でこの比率は、20代前半の年齢層で約3倍、20代後半で約2倍にそれぞれ膨れ上がった」。
「この間、20代の収入をみると、年収が150万円に満たない低所得者層の比率は92年が15・3%だったのに対し、02年は21・8%に増加した。この層と対極をなす年収500万円以上の比率も、わずかながら増えている」。
すでに国民総世帯の平均所得は下がりつづけている。格差は全体としての貧困化の中で拡大しており,それが若い世代には顕著な形で現れているのが現実である。
「こうした数字から浮かび上がってくるのは、企業が採用を抑制した90年代後半から2000年代初頭の『就職氷河期』に、若年層で非正規雇用の塊が生まれ、収入格差が拡大している実態だ」。
つまり,これは誰にも回避できない自然現象ではなく,「新時代の『日本的経営』」(95年)に象徴される財界の意図的な雇用政策の結果である。
「格差をめぐる白書の記述は総じて慎重である」「だが、この問題はもっと重大に受け止めるべきではないか」。
「30代前半の男性の場合、正社員として働く人の6割が既婚者だったのに対し、非正規雇用で結婚している人は3割にとどまっていた。白書も、こうした『若年不安定就業者』の増加が『結果的に少子化をも促進させている』と認めた。低賃金や不安定な身分に委縮して、結婚したくてもできない若年層の悲鳴が聞こえてきそうだ」。
「非正規雇用者の公的年金への加入率が低いことも深刻な問題だ。未加入者は老齢年金も障害年金も受け取れない。非正規雇用がこのまま拡大の一途をたどり、固定化してしまえば、世代間で支え合う年金制度は根幹から揺らいでしまう」。
『経済財政白書』もこれを,とりかえしのつかない将来格差の可能性として指摘している。
解決策は誰にも明瞭。
「非正規雇用から正規雇用へどうスムーズに移行させるか。政府、企業、労組、そして国民に突きつけられた重い命題である」。
まずは財界・政府自身の雇用政策の転換と,その「被害者」への緊急的な救済が必要である。
「厚生労働省は24日、人口減少に伴う労働力の落ち込みに対応し、若者や女性の就業機会の拡充に向けて、雇用対策法の整備を検討するよう、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に求めた」。
若者・女性を安く使い捨てるという政策のきっぱりとした転換は,「正規雇用」の拡大促進,男女平等の推進にあるはずだが。はたしてそのような知恵が出てくるものかどうか。
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