井関正久『ドイツを変えた68年運動』(白水社,2005年)を読み終える。
ドイツ市民がナチス時代の犯罪への認識を深める,重要なきっかけとなったのは68年の学生運動。
ドイツの加害の記憶を残す資料館のスタッフが,ビデオの中でそう語るのを聞いて,読んでみた。
とはいえ,これはナチスの歴史とのかかわりに焦点をしぼった本ではない。
68年運動がその後の(西)ドイツにあたえた社会的影響の全体が,広く視野におさめられる。
だが,運動の出発点には,次のようなナチとの関わりがはっきりあった。
「1960年代はじめの西ドイツでは,若者たちによって,ナチ台頭を許した親の世代への批判と,その世代が継承する権威主義的な体質への拒絶反応が高まり,ナチの過去の追求が社会現象となった」(13ページ)。
先日紹介した『ドイツの歴史教育』とあわせて読めば,この問題にかかわる68年運動のインパクトと,それに限定されない「歴史教育」深化の独自の流れの両方が見えてくる。
今日のいわゆる「68年世代」の活躍については,むしろ68年運動からの「決別」がそれを可能としたとの評価もある。
その「決別」の過程にあっても「ドイツの歴史教育」には模索と前進の記録は刻まれつづけた。
フランクフルト学派と当時の学生運動の関わりや,学生運動内部における女性への抑圧の「再生産」の告発(102ページ)といった話題も登場する。
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