中国政府が「調和社会」の形成をいっそう強く求めている。
社会保障の確立や都市と農村の格差縮小をめざすのはもちんろ結構だが,その場合,問題になるのは「収入の再分配」によって割りを食う「先富」の人々の動きだろうか。
市場の活用を継続しながら,それが市場原理主義・金もうけ第一主義につながるのでない,目指すべき社会についての「理念」の一致が必要となる。
政治的民主主義の充実も不可避で,自由な言論の上に立つ国民の総意がますます重要になっていく。
「6中全会:社会調和と民生重視、胡政権カラー鮮明に」(中国情報局ニュース,10月12日)
「8日から開かれていた中国共産党第16期中央委員会第6次全体会議(6中全会)が11日に閉幕した。会議は「調和ある社会」の実現に努力することを強調。分野別では社会主義農村建設、就業政策、教育の発展、医療衛生サービスに注力するなど、民生重視の方針が打ち出された」。
■「調和ある社会」が主要テーマ
「6中全会には中央委員195人及び候補中央委員152人、中央規律検査委員会常務委員等が出席。採択された文書の題目も「中国共産党中央の社会主義及び調和ある社会建設に関する若干の重大な問題に対する決定」となるなど、「調和ある社会」の実現が主要なテーマとなった」。
「会議は「社会の調和は中国の特色を持つ社会主義の本質的属性であり、国家の富強、民族の信仰、人民の幸福を保証する」ことで一致。また、「中国社会は総体的に調和が取れているが、社会の調和に悪影響を及ぼす矛盾と問題が少なからず存在する」ことを認めた」。
「そのため2020年までの主要な目的と任務として、社会主義民主法制の完備、都市と農村の格差を縮小していくこと、秩序ある収入再分配システムの基礎を形成すること、社会保障体系の基礎を確立すること、資源の利用効率を大幅に高め、生態環境を好転させることなどを挙げた」。
■就業、教育、医療など民生を重視
「また、注力していく分野として社会主義新農村の建設、地域の発展のための総合的戦略の実行、就業政策の積極的実施、教育重視の維持、医療衛生サービスの充実、文化事業と文化産業の発展の加速化、環境保護への注力などを挙げた」。
「更に会議は、汚職事件が多発している現状を受け、腐敗の体質を健全に防止することを強調した。そのために、党規と法律の学習活動を強化して、党員と幹部の思想と道徳を向上させると同時に、指導的立場にある組織と指導者への監督を強化するとした」。
■状況変化への対応で新政権カラー鮮明に
「今回の6中全会で、既に共産党及び中国政府が折に触れて示していた民生重視の方向性が一層鮮明になった。中国は1970年代に最終的に実権を獲得したトウ小平が、80年代から「富める条件のある者から富んでいけばよい」という方針を確立。政権を引き継いだ江沢民・前主席も「国全体として総和」としての経済成長を最優先した」。
「しかし、2000年ごろからは環境破壊、資源の浪費、極端な貧富の格差など、不均一な急成長に伴う弊害が深刻になっている。胡錦涛政権は変化した状況への対応策を前面に押し出すことにより、自らのカラーを鮮明にしつつある」。
「なお会議閉幕に伴い発表された公報には「(社会の)公平と正義」という文言が6カ所盛り込まれている。「収入の再分配」という表現も見られることから、今後は「富める者」からの税の徴収がこれまで以上に強化されていく可能性がある。(編集担当:如月隼人)」
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